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壊れるー。
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キアラ・ルーベルトはラルス王太子にエスコートされ、王城で開かれたとあるパーティーへ参加した。
ランドール国の第二王子ファルスの誕生記念のパーティーである。
「おぉ、ラルス殿下とルーベルト嬢だ」
「やはり噂は本当だったのね」
キアラとラルスが二人して入場するのを見た一部の貴族達は、どこからか伝わってきた「傷心のキアラを慰めたラルス王太子が彼女と距離を縮ませている」という噂は真実だったのかと騒いだ。
「そのうち婚約となるだろうな」
「ラルス殿下と世界一の魔法使いのルーベルト嬢が婚姻を結ぶとなれば、この国は安泰であろうな」
ラルスは王位継承権一位である。第二位のファルスは本日で15になるばかりで、このまま行けば既に成人し、学業も剣術も優秀な彼が次期王になるのは確実であるとされた。その彼が世界一とされる魔法使いのキアラと結婚することは、各国に威厳を見せつけることができ、他国からの侵略も躊躇させ抑制することも期待できよう。彼らはそう考えていた。
「それにしても、今年は参加者が実に多いな」
ある貴族が会場を見回して言った。
「そうだな。例年は代理を立てる貴族も多かったが、今年は本人が来ているな」
王子といえど第二王子で、かつ王位継承権二位のファルスの誕生記念パーティーは、例年では王族の誕生日でもラルスのそれとは比較にならないほど盛り上がりに欠けるものだった。義理だけの参加として、当主だけで家族は連れてこない、あるいは代理を立てて参加するという貴族が多かったのだ。
だが、今年はどういうことかラルスの誕生記念パーティーと変わらぬほどの盛況を見せている。例年顔を出している貴族達はこの不思議な現象に首を傾げていた。
「なんだ、知らないのかね?」
そんな貴族達に、ある貴族が言った。
「ファルス殿下が王位に就く可能性が、最近になって出てきたのだよ。・・・まだここだけの話だがね」
「「な・・・なんだってーー!?」」
-----
「はぁ・・・」
キアラは人気のないバルコニーで外の空気を吸っていた。
ラルスとファーストダンスを踊り終えたまではいいが、そこで気分が優れなくなって抜け出てきたのだ。
王太子がキアラの家に通い詰めるようになってから概ね一か月。
次のステップとばかりに、今日は王城で開かれるラルスの弟君、ファルスの誕生記念パーティーに一緒に出席することになったが、ここ最近心があまり穏やかではない日が続くキアラにとって、これはまさに苦痛の時間以外の何物でもなかった。ラルスとのダンスも吐き気がするほどの強烈なストレスに見舞われた。それでも形くらいはダンスを済ませて、他の参加者にキアラとラルスが距離を縮めているような様を見せねばならない。
どうにかこうにかダンスを終え、抜け出ることに成功したキアラはバルコニーでようやく一息つけたのだ。
ダンスだけであれだけのストレスになるとは、果たして自分は本当にラルスの妻となることができるのだろうかとキアラの頭に疑念がわいてくる。しかも世間的には恋愛結婚に見せかけねばならぬという条件付き。どれだけストレスが発生しようとも、どれだけ鳥肌が立とうとも、仲睦まじい夫婦を国内外に演出して見せなくてはならないのだ。
これは無理ではないか?当初はできるはずと思い込んではいたが、今となってはその前に自分が壊れてしまうような気がしてならない。
父に話せばわかってくれるだろうか?いや、ダメだろうか・・・ などとあれこれ考えているとき、バルコニーにキアラ以外に誰かがやってきたのにキアラは気づいた。
「・・・アーヴィガ?」
キアラは思わず驚きで目を開く。
やってきたのは、久々に顔を見ることになった幼馴染アーヴィガ・ハルトマンと、その後ろにいるのは二か月前に決別したばかりのソーア・マルセイユだった。
ランドール国の第二王子ファルスの誕生記念のパーティーである。
「おぉ、ラルス殿下とルーベルト嬢だ」
「やはり噂は本当だったのね」
キアラとラルスが二人して入場するのを見た一部の貴族達は、どこからか伝わってきた「傷心のキアラを慰めたラルス王太子が彼女と距離を縮ませている」という噂は真実だったのかと騒いだ。
「そのうち婚約となるだろうな」
「ラルス殿下と世界一の魔法使いのルーベルト嬢が婚姻を結ぶとなれば、この国は安泰であろうな」
ラルスは王位継承権一位である。第二位のファルスは本日で15になるばかりで、このまま行けば既に成人し、学業も剣術も優秀な彼が次期王になるのは確実であるとされた。その彼が世界一とされる魔法使いのキアラと結婚することは、各国に威厳を見せつけることができ、他国からの侵略も躊躇させ抑制することも期待できよう。彼らはそう考えていた。
「それにしても、今年は参加者が実に多いな」
ある貴族が会場を見回して言った。
「そうだな。例年は代理を立てる貴族も多かったが、今年は本人が来ているな」
王子といえど第二王子で、かつ王位継承権二位のファルスの誕生記念パーティーは、例年では王族の誕生日でもラルスのそれとは比較にならないほど盛り上がりに欠けるものだった。義理だけの参加として、当主だけで家族は連れてこない、あるいは代理を立てて参加するという貴族が多かったのだ。
だが、今年はどういうことかラルスの誕生記念パーティーと変わらぬほどの盛況を見せている。例年顔を出している貴族達はこの不思議な現象に首を傾げていた。
「なんだ、知らないのかね?」
そんな貴族達に、ある貴族が言った。
「ファルス殿下が王位に就く可能性が、最近になって出てきたのだよ。・・・まだここだけの話だがね」
「「な・・・なんだってーー!?」」
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「はぁ・・・」
キアラは人気のないバルコニーで外の空気を吸っていた。
ラルスとファーストダンスを踊り終えたまではいいが、そこで気分が優れなくなって抜け出てきたのだ。
王太子がキアラの家に通い詰めるようになってから概ね一か月。
次のステップとばかりに、今日は王城で開かれるラルスの弟君、ファルスの誕生記念パーティーに一緒に出席することになったが、ここ最近心があまり穏やかではない日が続くキアラにとって、これはまさに苦痛の時間以外の何物でもなかった。ラルスとのダンスも吐き気がするほどの強烈なストレスに見舞われた。それでも形くらいはダンスを済ませて、他の参加者にキアラとラルスが距離を縮めているような様を見せねばならない。
どうにかこうにかダンスを終え、抜け出ることに成功したキアラはバルコニーでようやく一息つけたのだ。
ダンスだけであれだけのストレスになるとは、果たして自分は本当にラルスの妻となることができるのだろうかとキアラの頭に疑念がわいてくる。しかも世間的には恋愛結婚に見せかけねばならぬという条件付き。どれだけストレスが発生しようとも、どれだけ鳥肌が立とうとも、仲睦まじい夫婦を国内外に演出して見せなくてはならないのだ。
これは無理ではないか?当初はできるはずと思い込んではいたが、今となってはその前に自分が壊れてしまうような気がしてならない。
父に話せばわかってくれるだろうか?いや、ダメだろうか・・・ などとあれこれ考えているとき、バルコニーにキアラ以外に誰かがやってきたのにキアラは気づいた。
「・・・アーヴィガ?」
キアラは思わず驚きで目を開く。
やってきたのは、久々に顔を見ることになった幼馴染アーヴィガ・ハルトマンと、その後ろにいるのは二か月前に決別したばかりのソーア・マルセイユだった。
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