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王のまた上からの脅威

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ラルスの目論んだショウの暗殺はあろうことか失敗に終わってしまった。
それも派遣した近衛兵10人中9人が殺されるという形でだ。残る一人もメッセンジャーとしてあえて残されていたに過ぎず、実際は全滅状態であった。この事実は近衛兵たちに衝撃をもたらした。

だが、このことは単に暗殺に失敗したという事実のみに留まらない。
国外追放という刑でショウを罰したという形になっているのに、その後にラルスが暗殺しようとしたなどと知れては、糾弾されて彼が王太子でいられない可能性が高い。
よって、せっかく残った一人の近衛兵も無様を晒したことを苦にしての自殺、という形にして始末することになった。いかに近衛兵が口が堅いとしても、口封じは徹底的にするべきだと考えてのことだ。

そんなわけで結局のところラルスの勝手により貴重な近衛兵を10人も失うことになったが、構成員のほとんどが貴族だったため、遺族に対する対応が相当に苦労した。
まさかショウを暗殺しようとして返り討ちに遭ったとは言えず、「特別任務中に命を落とした」と苦しい言い訳を突き通すことになってしまった。もちろんそれで納得する遺族ではない。
だがなんとしても内々に収めるために、結局相場の数倍の恩給を遺族に支給するという形で決着させたものの、その辺の強引な予算のやりくりなど知られれば致命傷となるような事案がいくつも折り重なっている現状には溜め息が出る。


「その上これか・・・」


バレスは机の上に広げた手紙を見てまた溜め息をついた。
手紙の差出人はリュート・ルーデル。
ショウの冤罪仕掛け人の共犯にして、ラルスの運命共同体。リュートが弱みを持つと同時に、ラルスも冤罪の件で彼に弱みを握られている。ラルス自体もリュートに「領主として大成できるよう、協力は惜しまない」と約束してしまっていた。
その約束に甘えたリュートがよこした手紙には「騎士団に中央から人材を回してほしい」といった内容が書かれていた。

どうやらリュートは現状の騎士団のコントロールに苦労しているらしく、まずは自分に従順な騎士を配置することことで内側から少しずつ騎士団を変革していくという考えらしい。
つまり一時的な騎士の派遣ではなく、正式に中央からルーデル騎士団に転属させなければならないということ。

この辞令を素直に従う騎士を見つけるのも骨が折れそうだ。どうにか辞令を断れないような脛に傷のあるような者をピックアップさせるよう騎士団長に頼んだが、これもまた外から突かれる要因になりかねないことだ。
しかしそれでももしリュートが騎士団のコントロールに失敗するようなことがあれば、そのときは内乱になる可能性もあるため、リュートの要請も無下にできないところが辛いところだ。


「ぐっ・・・いかん、胃薬・・・胃薬を・・・」


バレスがそう言うと、宮女がすぐさま胃薬を持ってくる。

聡明だと思っていたラルスの思わぬ暴走により、バレスは胃の痛む日々を送っていた。こんなことならラルスの我儘を許すべきではなかったと思うが、もう遅い。やってしまったからには事後処理に集中するしかないのだ。
しかしこうも懸念材料や事案が増えてくると「これは本当に処理しきれるのか」という不安がやってくる。
元の平穏なる生活に戻ることができるのはいつなのか。
バレスがまたまた溜め息をついていると・・・


「陛下!失礼します!!」


突然、宰相が政務室に入ってきた。この慌てよう、どうやら緊急事態のようである。
やれやれまたか・・・ ここまで来たらもう何が来ても驚かないぞとバレスは覚悟を決める。


「どうした?なんでも報告するがいい」


バレスはやや投げやりでそう言った。
宰相は青白い顔をしながら、喉を詰まらせながら報告する。


「先ほど先触れが来まして、上王陛下がご帰国なされるそうです・・・」


その言葉を聞いて、バレスは硬直した。


「いま・・・なんと申した?父上は・・・まだ一年は外遊する予定のはずだろう?」


震える声でバレスは問う。どうか聞き間違いであってくれ、そう彼は願っていた。


「外遊は急遽取りやめるとのことです・・・」


宰相の絞り出した声が遠く感じた。



パタッ



バレスは口から泡を吹いて倒れた。


「へ、陛下ーーっ!?」


今のこの状況を父上に・・・上王陛下に見られたらどうなるか。
バレスは心労のあまり意識を失った。
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