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王太子、壊れる
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「ラルス殿下にお目通り願おう」
キアラの父、ダグラス・ルーベルト公爵は王城に馬車で乗り付けていた。
再三に渡る先触れを出しているにも関わらず、いまだ面会の許可の下りない状況が一か月続き、ついにダグラスは怒りに身を任せ、無謀にも約束の無いまま王城にやってきた。
約束の無い状態で流石に王族に会えるはずもなく、当然門番には通せないと入城を拒否されるが、ダグラスは粘った。
「例の件についてどうなっているのか、それを伺いたくて来た。そう伝えてくれ」
膠着状態に痺れを切らしたのかダグラスがラルス宛てにそう言伝を頼むと、やや間があってようやくダグラスはラルスへのお目通しを許可された。
「失礼ですが、ご命令ですので」
入城する際、まず所持品について念入りに検査が始まった。
身に着けている金属類は指輪まで全て外すように言われ、霹靂とするダグラスだったが、ようやく待ち望んでいたラルスへの謁見が叶うと思うとどうにか我慢できた。
次に本人確認。本当にダグラス・ルーベルトであるか、それを検査魔法によって検査される。
ダグラスは王族に謁見することはこれが初めてではない。何度も経験したことだったが、このような過剰なまでの身体検査をされたことは初めてであった。
怒りの勢いでここまで乗り込んできたが、呆気にとられすっかり気勢をそがれてしまった感がある。
「どうぞ」
入城を許可されてから小一時間ほどかけ、ようやく謁見となる。
何やら近衛騎士が不必要なまでに多く配置されていることに気付き、ダグラスはポカンと口を半開きにした。
一体なんだというのだ?戦争でも始まるのか?
そしてようやく王太子の部屋に通された。
部屋の扉は閉めはしたが、それでも部屋の中には近衛騎士が数名ラルスの前に立ちはだかるように立っている。
ダグラスは内密な話をラルスとするつもりであったが、とてもそれが出来るような雰囲気ではなかった。
それにしても・・・
「・・・・・・」
ラルスの様子を見てダグラスは驚いた。眉目秀麗と名高いラルス王太子が、今は髪がボサボサで、目元には大きなクマがあり、目も充血している。頬は少し痩せこけ、顔色も悪く、以前は堂々として様子だったのに今は近衛騎士の背中に隠れるように立っている。まるで病人のようだ。
「これまで何度も連絡を受けておきながら、時間を作ることが出来なくてすまなかったな。いろいろあって、こちらも動けない状態だったのだ。・・・いや、それは今でも変わらないのだが」
まずラルスは最初にダグラスに詫びた。
ダグラスもこれにはたまらずペコペコしながら「いえ、問題ありません」とここまで乗り込んできた気勢などどこかへ飛んだように平身低頭である。
「申し訳ないが、こちらの問題が片付くまでキアラ嬢との縁談を進めるのを少し遅らせて欲しいのだ」
だが、この言葉にはピクリと頬を引きつらせた。
「問題・・・ですか?それはいつ頃解決するのですか?縁談はいつまで先延ばしになるのですか?」
ショウを冤罪により追い詰め、キアラと婚約破棄させた後は、ラルスがキアラと婚約をする計画であった。
傷心のキアラをラルスが訪問を繰り返すことで癒し、二人の距離は縮まり、そして晴れて婚約を結ぶ・・・そういう臭い台本になっている。
だが、ショウを冤罪により追放し、親戚一同にも反発されることなく堂々とショウとの婚約破棄をすることができたというのに、ラルスは計画実行から一月経過しても一向にキアラに会いに来ない。手紙で催促しても来ない。
リスクを背負ってショウを追放させることに加担したというのに、もしやキアラを娶る気がないのか?と、ダグラスは思っていたのである。
それがダグラスが屋敷でも不機嫌であった理由だった。
手紙では埒が明かないので直接乗り込んでみたが、不安的中でラルスの態度から彼にはキアラを娶る気が本当にないのかと思い、ついダグラスはラルスに詰め寄った。
「いつ頃解決・・・か、わ、わからん・・・いつどこからやってきて、いつ私を殺すのか・・・」
ダグラスの質問に、ラルスは体を抱き込むように縮まって震えあがった。
「・・・は?」
憤っていたダグラスは、またも呆気にとられた。
キアラの父、ダグラス・ルーベルト公爵は王城に馬車で乗り付けていた。
再三に渡る先触れを出しているにも関わらず、いまだ面会の許可の下りない状況が一か月続き、ついにダグラスは怒りに身を任せ、無謀にも約束の無いまま王城にやってきた。
約束の無い状態で流石に王族に会えるはずもなく、当然門番には通せないと入城を拒否されるが、ダグラスは粘った。
「例の件についてどうなっているのか、それを伺いたくて来た。そう伝えてくれ」
膠着状態に痺れを切らしたのかダグラスがラルス宛てにそう言伝を頼むと、やや間があってようやくダグラスはラルスへのお目通しを許可された。
「失礼ですが、ご命令ですので」
入城する際、まず所持品について念入りに検査が始まった。
身に着けている金属類は指輪まで全て外すように言われ、霹靂とするダグラスだったが、ようやく待ち望んでいたラルスへの謁見が叶うと思うとどうにか我慢できた。
次に本人確認。本当にダグラス・ルーベルトであるか、それを検査魔法によって検査される。
ダグラスは王族に謁見することはこれが初めてではない。何度も経験したことだったが、このような過剰なまでの身体検査をされたことは初めてであった。
怒りの勢いでここまで乗り込んできたが、呆気にとられすっかり気勢をそがれてしまった感がある。
「どうぞ」
入城を許可されてから小一時間ほどかけ、ようやく謁見となる。
何やら近衛騎士が不必要なまでに多く配置されていることに気付き、ダグラスはポカンと口を半開きにした。
一体なんだというのだ?戦争でも始まるのか?
そしてようやく王太子の部屋に通された。
部屋の扉は閉めはしたが、それでも部屋の中には近衛騎士が数名ラルスの前に立ちはだかるように立っている。
ダグラスは内密な話をラルスとするつもりであったが、とてもそれが出来るような雰囲気ではなかった。
それにしても・・・
「・・・・・・」
ラルスの様子を見てダグラスは驚いた。眉目秀麗と名高いラルス王太子が、今は髪がボサボサで、目元には大きなクマがあり、目も充血している。頬は少し痩せこけ、顔色も悪く、以前は堂々として様子だったのに今は近衛騎士の背中に隠れるように立っている。まるで病人のようだ。
「これまで何度も連絡を受けておきながら、時間を作ることが出来なくてすまなかったな。いろいろあって、こちらも動けない状態だったのだ。・・・いや、それは今でも変わらないのだが」
まずラルスは最初にダグラスに詫びた。
ダグラスもこれにはたまらずペコペコしながら「いえ、問題ありません」とここまで乗り込んできた気勢などどこかへ飛んだように平身低頭である。
「申し訳ないが、こちらの問題が片付くまでキアラ嬢との縁談を進めるのを少し遅らせて欲しいのだ」
だが、この言葉にはピクリと頬を引きつらせた。
「問題・・・ですか?それはいつ頃解決するのですか?縁談はいつまで先延ばしになるのですか?」
ショウを冤罪により追い詰め、キアラと婚約破棄させた後は、ラルスがキアラと婚約をする計画であった。
傷心のキアラをラルスが訪問を繰り返すことで癒し、二人の距離は縮まり、そして晴れて婚約を結ぶ・・・そういう臭い台本になっている。
だが、ショウを冤罪により追放し、親戚一同にも反発されることなく堂々とショウとの婚約破棄をすることができたというのに、ラルスは計画実行から一月経過しても一向にキアラに会いに来ない。手紙で催促しても来ない。
リスクを背負ってショウを追放させることに加担したというのに、もしやキアラを娶る気がないのか?と、ダグラスは思っていたのである。
それがダグラスが屋敷でも不機嫌であった理由だった。
手紙では埒が明かないので直接乗り込んでみたが、不安的中でラルスの態度から彼にはキアラを娶る気が本当にないのかと思い、ついダグラスはラルスに詰め寄った。
「いつ頃解決・・・か、わ、わからん・・・いつどこからやってきて、いつ私を殺すのか・・・」
ダグラスの質問に、ラルスは体を抱き込むように縮まって震えあがった。
「・・・は?」
憤っていたダグラスは、またも呆気にとられた。
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