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復讐の炎は静かに燃える
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「どうしてだ!どうしてオミトさんは俺達に我慢しろだなんて言うんだ!!」
「特赦がそんなに惜しいかよ!」
ショウの一件で暴発寸前の黒の騎士団を必死に抑え込んできたオミトは、怒りに震える騎士団員から散々に罵られることが多々あった。
いくら囚人奴隷で特赦の恩恵を受けられる身といっても、先代当主トウシとショウの片腕として長年仕えておきながら、主人の敵を討たずに我慢しろと言うオミトに反発する騎士は少なくなかった。
だが、オミトはその悉くに頭を下げ、忍耐を乞うた。既に騎士団を退いた身ではあるが、かつてはトウシと共にいくつもの死線を潜り抜け、ルーデルに勝利をもたらしてきたオミトは、在籍年数のこともあり騎士団でもかなり強い影響力を持っていた。
そのオミトの頭を下げる姿にすっかり毒気を抜かれた騎士達は、思い思いの捨て台詞を吐いてその場は治めたが、今なお彼らの怒りは爆発寸前である。
実際、オミトが彼らを制止しなければ、騎士団は間違いなく反乱を起こしていただろう。
「はぁ・・・」
普段は他人に弱みなど見せないオミトが、珍しく目を閉じ溜め息をついた。
「嫌われ役というのも大変なものね」
誰もいないと思っていたところに声をかけられ、オミトはハッとなる。
そこにいたのはエーペレスであった。
「流石、エーペレス様にはお見通しでしたか」
「当たり前よ。貴方はこういうとき、本来なら誰よりも先に飛び出すような人だもの」
付き合いの長いエーペレスは、オミトの内心を理解していた。
「本当なら、今すぐにでも飛び出してやりたいところですよ」
オミトの顔がみるみる怒りで歪んでいく。
「・・・だが、今はまだだ。まだそのときではないのです」
オミトは今回の茶番劇の関係者全てを洗い出そうとしていた。
そして黒幕を見つけ次第、自分の手で始末できないかと考えていたのである。
反乱を起こしても万が一黒幕に辿り着かずに鎮圧されてしまえば、二度とショウの敵を取ることは出来なくなる。
復讐の確度を上げるため、あえてオミトは今は耐えるべきであると考えていた。
「私は主君の仇討ちはこれで二度目です。前は責任を取るのが怖くて土壇場で逃げてしまった。だが、今回は例え自分の身が果てようとも、成し遂げたいのですよ」
黒幕調査には時間がかかるかもしれない。黒幕が発覚しても仇討ちの準備にも時間がかかるかもしれない。
それらの準備にはオミトからすれば、特赦を受けて自由の身になっておくことはとても都合が良かった。
囚人奴隷のままではルーデル家・・・現状だとリュートとの許可なしに彼から離れられないのと、いかなる理由であれ領地以外の場所に移動することを禁止されているからである。
「駄目よ。オミトを死なせてなんてなるものですか」
エーペレスの言葉にオミトが彼女の方を見ると、怒った表情で睨んでいた。
常に飄々としていることの多いエーペレスの怒りの表情など、オミトも滅多に見たことはなかった。
「もちろん、そうならないように気を付けますとも」
エーペレスが怒ってくれていることに嬉しさを感じるオミトはそう言って宥めた。
「嘘つき。チャンスさえあれば、どれだけ危険でも突っ込みそうな顔してるわ」
「はは・・・」
図星を突かれて苦笑いするオミトに、エーペレスは笑いながら
「ちょっと待ってなさい。オミトの望む形かはわからないけど、今、反撃の流れが作られようとしているのよ」
とだけ言った。
「・・・む?」
一体どういうことだ?と気にはなったが、エーペレスは
「これからまたちょっとの間出かけてくるわね」
としか言ってくれなかった。
ちょっとの間・・・これはどれだけの時間になるのだろう。だが、彼女がこのように言ったからには何かしら朗報を期待してもいいのだろうか。
オミトはエーペレスの言葉を信じて今は待つことにした。
だが、暴発しかねない騎士団の監視と、彼らに迎合しそうになる自分の心との戦い、そして能天気な新辺境伯様のお世話と、オミトの前途は多難であった。
「特赦がそんなに惜しいかよ!」
ショウの一件で暴発寸前の黒の騎士団を必死に抑え込んできたオミトは、怒りに震える騎士団員から散々に罵られることが多々あった。
いくら囚人奴隷で特赦の恩恵を受けられる身といっても、先代当主トウシとショウの片腕として長年仕えておきながら、主人の敵を討たずに我慢しろと言うオミトに反発する騎士は少なくなかった。
だが、オミトはその悉くに頭を下げ、忍耐を乞うた。既に騎士団を退いた身ではあるが、かつてはトウシと共にいくつもの死線を潜り抜け、ルーデルに勝利をもたらしてきたオミトは、在籍年数のこともあり騎士団でもかなり強い影響力を持っていた。
そのオミトの頭を下げる姿にすっかり毒気を抜かれた騎士達は、思い思いの捨て台詞を吐いてその場は治めたが、今なお彼らの怒りは爆発寸前である。
実際、オミトが彼らを制止しなければ、騎士団は間違いなく反乱を起こしていただろう。
「はぁ・・・」
普段は他人に弱みなど見せないオミトが、珍しく目を閉じ溜め息をついた。
「嫌われ役というのも大変なものね」
誰もいないと思っていたところに声をかけられ、オミトはハッとなる。
そこにいたのはエーペレスであった。
「流石、エーペレス様にはお見通しでしたか」
「当たり前よ。貴方はこういうとき、本来なら誰よりも先に飛び出すような人だもの」
付き合いの長いエーペレスは、オミトの内心を理解していた。
「本当なら、今すぐにでも飛び出してやりたいところですよ」
オミトの顔がみるみる怒りで歪んでいく。
「・・・だが、今はまだだ。まだそのときではないのです」
オミトは今回の茶番劇の関係者全てを洗い出そうとしていた。
そして黒幕を見つけ次第、自分の手で始末できないかと考えていたのである。
反乱を起こしても万が一黒幕に辿り着かずに鎮圧されてしまえば、二度とショウの敵を取ることは出来なくなる。
復讐の確度を上げるため、あえてオミトは今は耐えるべきであると考えていた。
「私は主君の仇討ちはこれで二度目です。前は責任を取るのが怖くて土壇場で逃げてしまった。だが、今回は例え自分の身が果てようとも、成し遂げたいのですよ」
黒幕調査には時間がかかるかもしれない。黒幕が発覚しても仇討ちの準備にも時間がかかるかもしれない。
それらの準備にはオミトからすれば、特赦を受けて自由の身になっておくことはとても都合が良かった。
囚人奴隷のままではルーデル家・・・現状だとリュートとの許可なしに彼から離れられないのと、いかなる理由であれ領地以外の場所に移動することを禁止されているからである。
「駄目よ。オミトを死なせてなんてなるものですか」
エーペレスの言葉にオミトが彼女の方を見ると、怒った表情で睨んでいた。
常に飄々としていることの多いエーペレスの怒りの表情など、オミトも滅多に見たことはなかった。
「もちろん、そうならないように気を付けますとも」
エーペレスが怒ってくれていることに嬉しさを感じるオミトはそう言って宥めた。
「嘘つき。チャンスさえあれば、どれだけ危険でも突っ込みそうな顔してるわ」
「はは・・・」
図星を突かれて苦笑いするオミトに、エーペレスは笑いながら
「ちょっと待ってなさい。オミトの望む形かはわからないけど、今、反撃の流れが作られようとしているのよ」
とだけ言った。
「・・・む?」
一体どういうことだ?と気にはなったが、エーペレスは
「これからまたちょっとの間出かけてくるわね」
としか言ってくれなかった。
ちょっとの間・・・これはどれだけの時間になるのだろう。だが、彼女がこのように言ったからには何かしら朗報を期待してもいいのだろうか。
オミトはエーペレスの言葉を信じて今は待つことにした。
だが、暴発しかねない騎士団の監視と、彼らに迎合しそうになる自分の心との戦い、そして能天気な新辺境伯様のお世話と、オミトの前途は多難であった。
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