国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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愛情から軽蔑

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エリナは昔から自分と似た容姿と性格を持ち、依存してくれるリュートを溺愛していた。
どんなときだってリュートを優先し、最愛の子のためになることなら何だってやってきた。
目に入れても痛くない、本当に心から愛している自慢の息子だった。


だが、先日ルーデル家に届いた手紙を読んだとき・・・エリナの心は奈落の底に落ちたようだった。
婚約者への暴行と王太子への傷害を理由としたショウの国外追放。
裁判も何もなく、あまりに異常に早い刑の実行。
そして入れ替わりにリュートが辺境伯に内定・・・からの異常に早い王家の承認。

誰がどう見ても既定路線の茶番である。

エリナ自身意外であったが、まずショウの国外追放がエリナの心を震わせた。
ショウへの愛情は薄いと思っていたが、それでもショウも自分の息子には違いなく、実際に追放されてしまったと聞いたときはショックで何も考えが浮かばなかった。

何がどうしてだ?手紙に書いてあるような婚約者への暴行などと、ショウがするはずがないというのはエリナもわかっていた。少々鼻っ柱は強いし、自信家なところはあるが、女性を力で従わせようなどと卑怯なことをする人間ではないと確信している。
誰かしらの何らかの意思でショウは罠にかけられたのだとすぐに察した。というか誰が見てもそうとしか思えない、杜撰な台本だと呆れ返ってしまうレベルだ。

ではその杜撰な台本は誰が書いたのか、それはわからないが、少なくとも製作者サイドとしてリュートが関わっていることは容易に想像がついた。ショウのことの次にショックだったのがこれだった。

まさか自分の愛するリュートが、自分の身のためとはいえ弟を謀略にかけてしまうような卑怯者だとは考えたくなかった。

心が弱いのは仕方がない。体が弱いのも仕方がない。だが、卑怯者であることだけは許せなかった。
それはルーデル家として、貴族として恥ずべきことだと思っていた。
リュートへの偏愛よりもその思いが勝り、エリナはリュートのことが途端に汚物のように感じるようにすらなった。

自分がリュートを過保護にし過ぎた自覚はある。だが、卑怯者になるような教育だけはしていないと断言できた。
そういうことは恥ずべきことだと。常に堂々とあるべきだと教えてきた。
・・・不貞を働いてしまったことは、まぁ置いておこう。
だが、自分のために肉親を犠牲にするような卑怯は、断じて許すことができない。泣いたところで許して良い話ではない。

リュートがルーデル邸に帰ってきたとき、どのようにして接したものか、どうすれば自らの過ちを悔いてくれるか、そればかりを考え、そして今にいたる。

久しぶりにあったリュートは、ショウについてのエリナの問いに対し、見苦しくなおも杜撰な台本を踏襲した言い訳を繰り出した。
その瞬間、エリナの中で首の皮一枚で残っていたリュートへの愛情が消え去り、気が付けばリュートの顔を平手打ちしていた。


「あなたをルーデル家の一員として・・・いえ、人間として軽蔑します」
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