67 / 471
愛情から軽蔑
しおりを挟む
エリナは昔から自分と似た容姿と性格を持ち、依存してくれるリュートを溺愛していた。
どんなときだってリュートを優先し、最愛の子のためになることなら何だってやってきた。
目に入れても痛くない、本当に心から愛している自慢の息子だった。
だが、先日ルーデル家に届いた手紙を読んだとき・・・エリナの心は奈落の底に落ちたようだった。
婚約者への暴行と王太子への傷害を理由としたショウの国外追放。
裁判も何もなく、あまりに異常に早い刑の実行。
そして入れ替わりにリュートが辺境伯に内定・・・からの異常に早い王家の承認。
誰がどう見ても既定路線の茶番である。
エリナ自身意外であったが、まずショウの国外追放がエリナの心を震わせた。
ショウへの愛情は薄いと思っていたが、それでもショウも自分の息子には違いなく、実際に追放されてしまったと聞いたときはショックで何も考えが浮かばなかった。
何がどうしてだ?手紙に書いてあるような婚約者への暴行などと、ショウがするはずがないというのはエリナもわかっていた。少々鼻っ柱は強いし、自信家なところはあるが、女性を力で従わせようなどと卑怯なことをする人間ではないと確信している。
誰かしらの何らかの意思でショウは罠にかけられたのだとすぐに察した。というか誰が見てもそうとしか思えない、杜撰な台本だと呆れ返ってしまうレベルだ。
ではその杜撰な台本は誰が書いたのか、それはわからないが、少なくとも製作者サイドとしてリュートが関わっていることは容易に想像がついた。ショウのことの次にショックだったのがこれだった。
まさか自分の愛するリュートが、自分の身のためとはいえ弟を謀略にかけてしまうような卑怯者だとは考えたくなかった。
心が弱いのは仕方がない。体が弱いのも仕方がない。だが、卑怯者であることだけは許せなかった。
それはルーデル家として、貴族として恥ずべきことだと思っていた。
リュートへの偏愛よりもその思いが勝り、エリナはリュートのことが途端に汚物のように感じるようにすらなった。
自分がリュートを過保護にし過ぎた自覚はある。だが、卑怯者になるような教育だけはしていないと断言できた。
そういうことは恥ずべきことだと。常に堂々とあるべきだと教えてきた。
・・・不貞を働いてしまったことは、まぁ置いておこう。
だが、自分のために肉親を犠牲にするような卑怯は、断じて許すことができない。泣いたところで許して良い話ではない。
リュートがルーデル邸に帰ってきたとき、どのようにして接したものか、どうすれば自らの過ちを悔いてくれるか、そればかりを考え、そして今にいたる。
久しぶりにあったリュートは、ショウについてのエリナの問いに対し、見苦しくなおも杜撰な台本を踏襲した言い訳を繰り出した。
その瞬間、エリナの中で首の皮一枚で残っていたリュートへの愛情が消え去り、気が付けばリュートの顔を平手打ちしていた。
「あなたをルーデル家の一員として・・・いえ、人間として軽蔑します」
どんなときだってリュートを優先し、最愛の子のためになることなら何だってやってきた。
目に入れても痛くない、本当に心から愛している自慢の息子だった。
だが、先日ルーデル家に届いた手紙を読んだとき・・・エリナの心は奈落の底に落ちたようだった。
婚約者への暴行と王太子への傷害を理由としたショウの国外追放。
裁判も何もなく、あまりに異常に早い刑の実行。
そして入れ替わりにリュートが辺境伯に内定・・・からの異常に早い王家の承認。
誰がどう見ても既定路線の茶番である。
エリナ自身意外であったが、まずショウの国外追放がエリナの心を震わせた。
ショウへの愛情は薄いと思っていたが、それでもショウも自分の息子には違いなく、実際に追放されてしまったと聞いたときはショックで何も考えが浮かばなかった。
何がどうしてだ?手紙に書いてあるような婚約者への暴行などと、ショウがするはずがないというのはエリナもわかっていた。少々鼻っ柱は強いし、自信家なところはあるが、女性を力で従わせようなどと卑怯なことをする人間ではないと確信している。
誰かしらの何らかの意思でショウは罠にかけられたのだとすぐに察した。というか誰が見てもそうとしか思えない、杜撰な台本だと呆れ返ってしまうレベルだ。
ではその杜撰な台本は誰が書いたのか、それはわからないが、少なくとも製作者サイドとしてリュートが関わっていることは容易に想像がついた。ショウのことの次にショックだったのがこれだった。
まさか自分の愛するリュートが、自分の身のためとはいえ弟を謀略にかけてしまうような卑怯者だとは考えたくなかった。
心が弱いのは仕方がない。体が弱いのも仕方がない。だが、卑怯者であることだけは許せなかった。
それはルーデル家として、貴族として恥ずべきことだと思っていた。
リュートへの偏愛よりもその思いが勝り、エリナはリュートのことが途端に汚物のように感じるようにすらなった。
自分がリュートを過保護にし過ぎた自覚はある。だが、卑怯者になるような教育だけはしていないと断言できた。
そういうことは恥ずべきことだと。常に堂々とあるべきだと教えてきた。
・・・不貞を働いてしまったことは、まぁ置いておこう。
だが、自分のために肉親を犠牲にするような卑怯は、断じて許すことができない。泣いたところで許して良い話ではない。
リュートがルーデル邸に帰ってきたとき、どのようにして接したものか、どうすれば自らの過ちを悔いてくれるか、そればかりを考え、そして今にいたる。
久しぶりにあったリュートは、ショウについてのエリナの問いに対し、見苦しくなおも杜撰な台本を踏襲した言い訳を繰り出した。
その瞬間、エリナの中で首の皮一枚で残っていたリュートへの愛情が消え去り、気が付けばリュートの顔を平手打ちしていた。
「あなたをルーデル家の一員として・・・いえ、人間として軽蔑します」
1
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる