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ランドールの火薬庫
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数日前、ルーデル家に手紙が届き、それからこの家は上を下への大騒ぎとなった。
手紙の内容は次期当主であったショウが王都で婚約者に働いた乱暴、そして止めに入った王太子殿下への傷害事件を起こした罪により、即刻国外追放が決定、施行されたこと。
当然それに伴いキアラ・ルーベルト嬢との婚約は破棄となったこと。
また、国防上極めて重要な存在であるルーデル家の混乱を防ぐために、自動的に廃嫡となるショウに代わり、長兄リュートを特別措置として即座にルーデル家の後継者とすること。
そして、特赦による囚人奴隷の解放が決定したので、騎士団は決して自棄を起こさないこと。
それらがショウの字で記されていたのであった。
これにルーデル家ではオミトはもちろん、使用人一同、そして事情を知った騎士団の面々が憤慨した。
誰一人としてショウがキアラに暴行したなどとは、信じていなかったのである。
「そんなことができる人だったらとっくに若は童貞じゃなくなってるよ!」
「そうだ!若が何年童貞を続けてきたと思ってやがる!」
「冤罪だろ!おかしいじゃねぇか!!」
「ルーベルトの屑どもが!ぶち殺してやる!!」
あわや暴発寸前とまでいったが、それでもショウの意向を汲み、ギリギリで・・・本当にギリギリのところでオミトがそれをどうにか押しとどめた。
誰がどう見ても滅茶苦茶な冤罪っぷり、そして後釜をすぐに据える極めて不自然なまでの手際の良さ、ルーデルの血族であるリュートを当主にすれば、どうにか騎士団を抑えられることだろうという思惑の透け具合・・・全てが彼らの神経を逆なでした。
ここまで露骨な茶番の見せつけられておきながら騎士団が反乱を起こさなかったのは、これはもうまさに奇跡としか言いようのないものであった。
だが、それも今はまだ反乱を起こしていない、に過ぎない。
今のルーデル家は、黒の騎士団は、その全てがまるまる一つの巨大な火薬庫といった状態であった。
どこかで火がつけば立ちどころに全ての火薬に引火し、それは全てを包むほどの巨大な爆炎となってランドールに降りかかる・・・それが今のルーデルなのだ。
オミトを含め、(比較的)穏健派は暴発が起きないよう、騎士達一人一人を宥めるのに必死だった。
だがそこにおめおめとやってきたリュート。彼こそまさに火種そのものだ。
彼が何をしても火薬に火をつけかねない、そんな状況にオミトはリュートをいっそ座敷牢に放り込んでしまいたい気持ちにすらなっていた。だからオミトがリュートを邪険に扱っていたのは当然である。
そしてそんな状況の中、ルーデル邸において唯一冷静に推移を見守っていた人物がいた。
当主代行にしてショウとリュートの母であるエリナである。
彼女は発端の手紙によって、自分が代行を務めていたルーデルの当主の座がリュートに渡ったことを知った。
「そう・・・」
エリナは手紙を読んだとき、それだけ呟いて手紙をそっと置いた。
その場にいたオミトにも彼女の心の内がわからないでいた。オミトもエリナとの付き合いは長い方だが、これまで見たこともないような空気を醸し出している彼女を見て、何も声をかけることができなかった。
手紙の内容は次期当主であったショウが王都で婚約者に働いた乱暴、そして止めに入った王太子殿下への傷害事件を起こした罪により、即刻国外追放が決定、施行されたこと。
当然それに伴いキアラ・ルーベルト嬢との婚約は破棄となったこと。
また、国防上極めて重要な存在であるルーデル家の混乱を防ぐために、自動的に廃嫡となるショウに代わり、長兄リュートを特別措置として即座にルーデル家の後継者とすること。
そして、特赦による囚人奴隷の解放が決定したので、騎士団は決して自棄を起こさないこと。
それらがショウの字で記されていたのであった。
これにルーデル家ではオミトはもちろん、使用人一同、そして事情を知った騎士団の面々が憤慨した。
誰一人としてショウがキアラに暴行したなどとは、信じていなかったのである。
「そんなことができる人だったらとっくに若は童貞じゃなくなってるよ!」
「そうだ!若が何年童貞を続けてきたと思ってやがる!」
「冤罪だろ!おかしいじゃねぇか!!」
「ルーベルトの屑どもが!ぶち殺してやる!!」
あわや暴発寸前とまでいったが、それでもショウの意向を汲み、ギリギリで・・・本当にギリギリのところでオミトがそれをどうにか押しとどめた。
誰がどう見ても滅茶苦茶な冤罪っぷり、そして後釜をすぐに据える極めて不自然なまでの手際の良さ、ルーデルの血族であるリュートを当主にすれば、どうにか騎士団を抑えられることだろうという思惑の透け具合・・・全てが彼らの神経を逆なでした。
ここまで露骨な茶番の見せつけられておきながら騎士団が反乱を起こさなかったのは、これはもうまさに奇跡としか言いようのないものであった。
だが、それも今はまだ反乱を起こしていない、に過ぎない。
今のルーデル家は、黒の騎士団は、その全てがまるまる一つの巨大な火薬庫といった状態であった。
どこかで火がつけば立ちどころに全ての火薬に引火し、それは全てを包むほどの巨大な爆炎となってランドールに降りかかる・・・それが今のルーデルなのだ。
オミトを含め、(比較的)穏健派は暴発が起きないよう、騎士達一人一人を宥めるのに必死だった。
だがそこにおめおめとやってきたリュート。彼こそまさに火種そのものだ。
彼が何をしても火薬に火をつけかねない、そんな状況にオミトはリュートをいっそ座敷牢に放り込んでしまいたい気持ちにすらなっていた。だからオミトがリュートを邪険に扱っていたのは当然である。
そしてそんな状況の中、ルーデル邸において唯一冷静に推移を見守っていた人物がいた。
当主代行にしてショウとリュートの母であるエリナである。
彼女は発端の手紙によって、自分が代行を務めていたルーデルの当主の座がリュートに渡ったことを知った。
「そう・・・」
エリナは手紙を読んだとき、それだけ呟いて手紙をそっと置いた。
その場にいたオミトにも彼女の心の内がわからないでいた。オミトもエリナとの付き合いは長い方だが、これまで見たこともないような空気を醸し出している彼女を見て、何も声をかけることができなかった。
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