60 / 471
冒険者生活始まります
しおりを挟む
俺は新しい町へ来ていた。
人に訊ねたところ、冒険者など腕っぷしで食っていくなら、冒険者ギルトがある大きい町がいいと言われたからだ。
この町の名は『オールヨーク』。
ブレリアの中でも屈指の規模を誇る大都会で、国中のみならず大陸中から多くの人間が出入りする。ここには冒険者ギルドというものがあって、俺のような流れ者にも仕事を斡旋してくれるという有難いものが存在する。
冒険者ギルド自体はランドール国でも王都に存在していたが、そこで斡旋される仕事というのはあくまで探し物とか薬草の採取とか、貴族が私兵を募るときとか地味なものだけだったと記憶している。
本当に武力が必要なときは騎士団がそれを担う。それがランドール国のシステムだった。
だが、このブレリアでは国が保有する国軍というのは国全土を問題なくカバーできるほどの数は揃えていないという。国土が広いというのもあるが、それだけではない。町や村の治安は、基本的にそこの長の責任によって行うべきという考え方のせいであった。
ブレリアにも貴族は存在するにはするが、ランドール国のような力は持っておらず、ほとんど実権を持っていないという。
だから治安維持は基本的に町や村の自警団が担うようになっている。
国軍の駐在もいるにはいるが、基本的に町の治安維持に関して強権と責任があるのは自警団だ。だが自警団でもカバーし切れない事態になることもしばしば・・・かといって常時人員を必要以上に雇っておいては人件費がかさばってしまう。
そこで必要になってくるのが冒険者だ。必要なときに必要なだけ使えばいい冒険者は、町の自治に必要で便利な存在だ。アルバイト自警団といっても差し支えないだろう。
やがてそんな冒険者を管理しやすいようにと、冒険者ギルドというものが作られた。
冒険者ギルドはブレリアのシステムと相性がよく、今やブレリア内のいたるところに設立されるほど勢力を拡大したが、このオールヨークでは冒険者が食うには困らなくなるほど、特に仕事がひっきりなしにあるという。
俺は冒険者ギルドに登録してこのオークヨークを拠点として活動し、食っていこうと決めた。仕事は無いよりあったほうがいいもんな。それにこのオールヨークはかなりの都会だから、いろいろと情報の入りも早いだろうと俺は考えていた。
ここにいれば祖国に何があっても、きっとすぐに情報が入ってくるだろう。そう思っていたのだ。
ーーーーー
「はい、それではこれで登録完了です。ショウさん」
冒険者ギルドに足を運ぶと、拍子抜けするくらい呆気なく登録を終えることができた。移民国家ならではの懐の広さというか大雑把というか、なんにせよ今の俺にはありがたいことであった。
ルーデルを名乗らなくなっただけで、ここでも俺の名前はショウのままだ。これといって素性を隠したい理由があるわけではないし、こそこそするように生きていくのは御免だからだ。
俺は掲示板に張り出された依頼を眺めてみた。
薬草の採取から、人探しから、魔物の討伐、果ては傭兵の求人から様々なものがあった。見ているうちに次から次へと冒険者らしき者が依頼を請け負ったかと思えば、また新しい依頼が張り出される。決して依頼が無くなることはない。
やはりここでは食っていくには困らないようだな。退屈もしそうにない。
今日のところはまず宿に落ち着こうと、依頼を特に受けることなく踵を返した。
その時だった。
ドンッ
と、俺に誰かがぶつかってきた。そう、ぶつかってきた。相手の故意によるものであることはすぐにわかった。
「おぅ、どこ見てんだテメェ」
俺の倍はある体格を持つ悪人面の男が、俺を見下ろしていた。
人に訊ねたところ、冒険者など腕っぷしで食っていくなら、冒険者ギルトがある大きい町がいいと言われたからだ。
この町の名は『オールヨーク』。
ブレリアの中でも屈指の規模を誇る大都会で、国中のみならず大陸中から多くの人間が出入りする。ここには冒険者ギルドというものがあって、俺のような流れ者にも仕事を斡旋してくれるという有難いものが存在する。
冒険者ギルド自体はランドール国でも王都に存在していたが、そこで斡旋される仕事というのはあくまで探し物とか薬草の採取とか、貴族が私兵を募るときとか地味なものだけだったと記憶している。
本当に武力が必要なときは騎士団がそれを担う。それがランドール国のシステムだった。
だが、このブレリアでは国が保有する国軍というのは国全土を問題なくカバーできるほどの数は揃えていないという。国土が広いというのもあるが、それだけではない。町や村の治安は、基本的にそこの長の責任によって行うべきという考え方のせいであった。
ブレリアにも貴族は存在するにはするが、ランドール国のような力は持っておらず、ほとんど実権を持っていないという。
だから治安維持は基本的に町や村の自警団が担うようになっている。
国軍の駐在もいるにはいるが、基本的に町の治安維持に関して強権と責任があるのは自警団だ。だが自警団でもカバーし切れない事態になることもしばしば・・・かといって常時人員を必要以上に雇っておいては人件費がかさばってしまう。
そこで必要になってくるのが冒険者だ。必要なときに必要なだけ使えばいい冒険者は、町の自治に必要で便利な存在だ。アルバイト自警団といっても差し支えないだろう。
やがてそんな冒険者を管理しやすいようにと、冒険者ギルドというものが作られた。
冒険者ギルドはブレリアのシステムと相性がよく、今やブレリア内のいたるところに設立されるほど勢力を拡大したが、このオールヨークでは冒険者が食うには困らなくなるほど、特に仕事がひっきりなしにあるという。
俺は冒険者ギルドに登録してこのオークヨークを拠点として活動し、食っていこうと決めた。仕事は無いよりあったほうがいいもんな。それにこのオールヨークはかなりの都会だから、いろいろと情報の入りも早いだろうと俺は考えていた。
ここにいれば祖国に何があっても、きっとすぐに情報が入ってくるだろう。そう思っていたのだ。
ーーーーー
「はい、それではこれで登録完了です。ショウさん」
冒険者ギルドに足を運ぶと、拍子抜けするくらい呆気なく登録を終えることができた。移民国家ならではの懐の広さというか大雑把というか、なんにせよ今の俺にはありがたいことであった。
ルーデルを名乗らなくなっただけで、ここでも俺の名前はショウのままだ。これといって素性を隠したい理由があるわけではないし、こそこそするように生きていくのは御免だからだ。
俺は掲示板に張り出された依頼を眺めてみた。
薬草の採取から、人探しから、魔物の討伐、果ては傭兵の求人から様々なものがあった。見ているうちに次から次へと冒険者らしき者が依頼を請け負ったかと思えば、また新しい依頼が張り出される。決して依頼が無くなることはない。
やはりここでは食っていくには困らないようだな。退屈もしそうにない。
今日のところはまず宿に落ち着こうと、依頼を特に受けることなく踵を返した。
その時だった。
ドンッ
と、俺に誰かがぶつかってきた。そう、ぶつかってきた。相手の故意によるものであることはすぐにわかった。
「おぅ、どこ見てんだテメェ」
俺の倍はある体格を持つ悪人面の男が、俺を見下ろしていた。
1
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する
はにわ
ファンタジー
主人公ゴウキは幼馴染である女勇者クレアのパーティーに属する前衛の拳闘士である。
スラムで育ち喧嘩に明け暮れていたゴウキに声をかけ、特待生として学校に通わせてくれたクレアに恩を感じ、ゴウキは苛烈な戦闘塗れの勇者パーティーに加入して日々活躍していた。
だがクレアは人の良い両親に育てられた人間を疑うことを知らずに育った脳内お花畑の女の子。
そんな彼女のパーティーにはエリート神官で腹黒のリフト、クレアと同じくゴウキと幼馴染の聖女ミリアと、剣聖マリスというリーダーと気持ちを同じくするお人よしの聖人ばかりが揃う。
勇者パーティーの聖人達は普段の立ち振る舞いもさることながら、戦いにおいても「美しい」と言わしめるスマートな戦いぶりに周囲は彼らを国の誇りだと称える。
そんなパーティーでゴウキ一人だけ・・・人を疑い、荒っぽい言動、額にある大きな古傷、『拳鬼』と呼ばれるほどの荒々しく泥臭い戦闘スタイル・・・そんな異色な彼が浮いていた。
周囲からも『清』の中の『濁』だと彼のパーティー在籍を疑問視する声も多い。
素直過ぎる勇者パーティーの面々にゴウキは捻くれ者とカテゴライズされ、パーティーと意見を違えることが多く、衝突を繰り返すが常となっていた。
しかしゴウキはゴウキなりに救世の道を歩めることに誇りを持っており、パーティーを離れようとは思っていなかった。
そんなある日、ゴウキは勇者パーティーをいつの間にか追放処分とされていた。失意の底に沈むゴウキだったが、『濁』なる存在と認知されていると思っていたはずの彼には思いの外人望があることに気付く。
『濁』の存在である自分にも『濁』なりの救世の道があることに気付き、ゴウキは勇者パーティーと決別して己の道を歩み始めるが、流れに流れいつの間にか『マフィア』を率いるようになってしまい、立場の違いから勇者と争うように・・・
一方、人を疑うことのないクレア達は防波堤となっていたゴウキがいなくなったことで、悪意ある者達の食い物にされ弱体化しつつあった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる