56 / 471
黒い感情に染まる白いカリスマ
しおりを挟む
時は少し遡り、「冤罪」の翌日の御前会議の日。
ショウの幼馴染アーヴィガ・ハルトマン辺境伯は道中の荒天が災いし、早朝に王都に到着予定のはずが、朝9時になってからの到着となった。遅れてきた彼を王城前で出迎えたのはハルトマン別邸で仕える使用人だったが、なんと王城に入ろうとする馬車に立ちふさがる勢いでの登場に、冷静なアーヴィガも流石に何が起こったのかと驚いた。
「大至急お耳に入れたいことが御座います」
使用人の報告を聞いてアーヴィガは凍り付いた。
ショウがキアラとラルス王太子に対して事件を起こし、早朝に国外追放になったこと。
そしてそれは冤罪であるということ。
王都に散らばるハルトマン家の「影」は、既に事件のことと、その真相について把握していた。
「引き返せ」
御前会議のために王城手前まで来ておきながら、アーヴィガは制止する衛兵に構うことなく、馬車を引き返させた。この局面で御前会議に出席しないこと、それはショウの追放に対し王家に対する明確な抗議の意を示すことになる。
「ショウの行先は?」
馬車のキャビンの中で、アーヴィガは使用人・・・「影」の一人と話し合う。
「ブレリアのようです」
「ブレリアか・・・どれだけ追いかけても夕方には国境を越えてしまうな・・・果たして搬送されているショウは大人しくしているだろうか」
「どうやら囚人奴隷について取引がなされているようです。なので大人しく従っているものと思われます」
アーヴィガは舌打ちした。取引がされているというのであれば、強引にショウを助けても彼にとって良い方向に行くとは限らない。彼が脱走することもあり得ないだろう。
昨日、ショウが冤罪をかけられたという現場に・・・いや、せめてショウがまだここにいるうちに自分がいたのなら何かできたかもしれない・・・アーヴィガはとにかくそれを悔いた。
「馬鹿な王太子と、嫉妬に狂った兄の暴走か?・・・て、まさかそれだけではないのだろうね」
いつもうっすら穏やかな笑みを浮かべているのが印象的な好青年・・・というのが世間でのアーヴィガの印象だ。正確には世間にそう見せている、だが。
しかし今のアーヴィガは能面のように無表情だ。「影」である使用人は、アーヴィガがこうなるときはどういうときかを知っている。背筋が凍りそうなほどの殺気がアーヴィガから溢れていた。
「覚えておけよ・・・関わった連中は皆タダでは済まさない」
アーヴィガの語る報復の対象・・・ドス黒い感情をぶつける相手には、もちろん、彼の中ではキアラも含まれている。幼馴染だろうと、裏切り者であるなら関係ないと考えていた。
いま水面下で激しい戦いが始まろうとしている。
ショウの幼馴染アーヴィガ・ハルトマン辺境伯は道中の荒天が災いし、早朝に王都に到着予定のはずが、朝9時になってからの到着となった。遅れてきた彼を王城前で出迎えたのはハルトマン別邸で仕える使用人だったが、なんと王城に入ろうとする馬車に立ちふさがる勢いでの登場に、冷静なアーヴィガも流石に何が起こったのかと驚いた。
「大至急お耳に入れたいことが御座います」
使用人の報告を聞いてアーヴィガは凍り付いた。
ショウがキアラとラルス王太子に対して事件を起こし、早朝に国外追放になったこと。
そしてそれは冤罪であるということ。
王都に散らばるハルトマン家の「影」は、既に事件のことと、その真相について把握していた。
「引き返せ」
御前会議のために王城手前まで来ておきながら、アーヴィガは制止する衛兵に構うことなく、馬車を引き返させた。この局面で御前会議に出席しないこと、それはショウの追放に対し王家に対する明確な抗議の意を示すことになる。
「ショウの行先は?」
馬車のキャビンの中で、アーヴィガは使用人・・・「影」の一人と話し合う。
「ブレリアのようです」
「ブレリアか・・・どれだけ追いかけても夕方には国境を越えてしまうな・・・果たして搬送されているショウは大人しくしているだろうか」
「どうやら囚人奴隷について取引がなされているようです。なので大人しく従っているものと思われます」
アーヴィガは舌打ちした。取引がされているというのであれば、強引にショウを助けても彼にとって良い方向に行くとは限らない。彼が脱走することもあり得ないだろう。
昨日、ショウが冤罪をかけられたという現場に・・・いや、せめてショウがまだここにいるうちに自分がいたのなら何かできたかもしれない・・・アーヴィガはとにかくそれを悔いた。
「馬鹿な王太子と、嫉妬に狂った兄の暴走か?・・・て、まさかそれだけではないのだろうね」
いつもうっすら穏やかな笑みを浮かべているのが印象的な好青年・・・というのが世間でのアーヴィガの印象だ。正確には世間にそう見せている、だが。
しかし今のアーヴィガは能面のように無表情だ。「影」である使用人は、アーヴィガがこうなるときはどういうときかを知っている。背筋が凍りそうなほどの殺気がアーヴィガから溢れていた。
「覚えておけよ・・・関わった連中は皆タダでは済まさない」
アーヴィガの語る報復の対象・・・ドス黒い感情をぶつける相手には、もちろん、彼の中ではキアラも含まれている。幼馴染だろうと、裏切り者であるなら関係ないと考えていた。
いま水面下で激しい戦いが始まろうとしている。
1
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる