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後払い

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「ところでショウ。後払いのほうなんだが」


すっかり身支度を終えたソーアが言った。
前払い分があるなら、後払い分もある。
確かにそれはあるんだろうが、しかし実際には後払いしに来ることもできないのが俺だ。まぁ、手紙はともかく金だけなら後で何かしらの方法で送ることくらいはできるかもしれないが未知数だ。
そんな俺にあえてソーアは後払いについて言及してくる。

俺が首を傾げていると、彼女は悪戯っぽく笑った。


「形はどうあれ私の純潔を貰ったからには、しっかりと娶ってもらうぞ」


それは本気なのか冗談なのか。
俺がもうこの国に戻って来られないことは知っているはずだ。国外追放者が再入国すれば、どんな事情があるにせよ即処刑である。娶ることはおろか再会すら困難な身の上なのだ。
もちろん、気持ちの上ではソーアの意向に添いたいところではあるのだが。


「娶ろうにも俺はそれが出来る身の上じゃないんだがなぁ」


俺がそう言うと、ソーアはここでふっと表情を引き締めた。


「何年かかるかわからない。だが、きっとショウが帰って来られる状態にしてみせるさ」


「だが・・・」


それはかなり困難な道のはずだ。


「最初は私の気持ちが伝えられて、あわよくば一度でも結ばれれば・・・くらいに考えていた。だが、私は欲深いのでな。やはり、これっきりというのは嫌なのだ」


口角は上がっているが目は真剣そのもので、ソーアが冗談ではなく本気で言っているのだということを察した。
ここまで言われれば冥利に尽きるというものだが、しかし反面、俺は追放を受け入れようとしていることに申し訳なさを感じてしまう。


「いつかやり遂げるから、待っててくれ。逃げれば取り立てに行くぞ」


そう言って俺の肩にポンと手をおくソーア。


「わかった。よろしく頼むぜ」


俺がそう返事をすると、どちらともなく近づいて口づけをする。


「では、


ソーアはすぐに離れると、再会の誓いをしてから踵を返し、部屋を出ていった。
あぁ、くそ。
ソーアが来るまでは現実逃避でブレリアの新生活に期待を膨らませていたのに、今じゃすっかり寂しいって感情が湧き出てやがる。


「後払いか・・・」


随分と強引に決められてしまったが、ソーアに後払いできる日が来るのだろうか。だが、俺が託したものは彼女にとっても重いものだ。俺にできることなら、気前よく払ってやらなきゃなるまい。


「あまり遠くには行かないでおくか」


漠然としたものだが、ブレリアでの新生活の方針が一つ決まった。
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