国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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新人生の構想

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冤罪によって貴族牢に入れられてから数時間が経過した。時間までわかるように時計まであるなんて、本当に町の宿屋なぞより快適な部屋だと思う。
俺は特にすることもないし、どうにも落ち着かないので湯あみをしたり、ベッドに寝転がったりあれこれしていたが、寝る気にもならずただただぼーっと紅茶を飲んでいた。

考えるのは今度のことーー
このランドールを出て、ブレリアでどうするかということだ。現状ではこれを考えるのが一番建設的かなと頭を切り替えた。

ブレリアは移民だろうと国外追放者だろうと受け入れてくれる懐の深い国である。それゆえに商人から身元のいかがわしい者まで様々な人間が入り浸り、統計は取っていないが世界で最も人口の多い国であると聞いている。
食から暮らしから様々な文化圏からやってきているので、ランドールのようには貴族の力も及ばないような自由国家だとのこと。

面白そうではないか。
口元が思わず緩んでいることに気付く。俺のような人間が新しい人生をスタートするにはうってつけのところだ。重ね重ね流刑地に送られなくて良かったと思う。

幸いにも金は持たせてくれるというし、当面は何とかなるだろう。出来れば自身の分身とも言えるドウダヌキは持っていきたいのだが、リュートの言う通り本来はあれはルーデル家のものなので、それは望みすぎと言うものだろう。


「はぁ…本当にこれから何もかも変わってしまうんだな」


思ってもいなかった唐突な新生活。いや、新人生と言えよう。次期辺境泊で領地や国のために命をかける義務と責務がなくなった。婚約者…将来添い遂げる相手がいたが、いなくなった。

うむ…完全に人生の構築し直しだ。
実感がまだないからか、俺が思ったよりタフなのか知らないが、とりあえず悲観するあまり絶望して何も手につかないなんてことにはなっていない。
まぁ後になってぶり返して泣くこともあるかもしれないが、とりあえずそれはブレリアで新生活の基盤を築いてからで良いか。

そのように楽観的に考えていると、突然部屋の扉がノックされた。なんだ?飯でも持ってきたのか?にしても貴族牢とはいえ囚人を訪ねるのにノックなどするとは聞いたことがないが…
今の俺に面会が認められるとは思えないし。


「どうぞ」


不審に思いながらも俺はノックした相手に対して入室を促した。
そして扉が開かれ、姿を見せたのは思ってもいない人物だった。
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