上 下
40 / 471

女優の決断

しおりを挟む
キアラの心中を知るはずもないソーアはなおも説得を試みていた。


「キアラがこれからやるべきことは、ショウの冤罪を晴らしてを救うことだ」


ソーアの言葉に、キアラは小ばかにしたようにフッと笑う。


「救うって、一体どうやって救うの?王家が絡んでいるのに、どうすれば状況が変わると思うの?」


「それは・・・」


ソーアは一旦言葉に詰まる。


「洗いざらい、キアラが真相を暴露するとか・・・」


「どこに?どこに暴露すればショウを救えると思うの?」


「ルーデルの騎士団とか・・・」


「それをする頃には、ショウは既に国外でしょうね」


「ぐっ・・・」


ソーアはまたも言葉に詰まる。今はもう全てにおいて手遅れの状態なのは彼女もわかっていた。


「私とキアラで・・・二人で強襲すればショウを助けることくらいはできるだろう!」


キアラは呆れ返り、はぁ~とわざとらしくため息をつく。


「それで?ショウともども仲良く私たちは反逆者かしら」


「キアラは真相さえ話せば、世論を味方につけることはできるかもしれないだろう!」


「それを信じてもらえるとでも?私がショウに情に訴えられて根負けして味方したとかいうことにされるわ。それに万が一世論を味方につけたところで、その後に待っているのは国の内乱よ。国が崩壊するわ。それでもいいのね?」


ショウが結局は徹底抗戦をしなかった理由・・・それはここにあるのだろうとキアラは考えていた。
自分の名誉と意地よりも、最後は国の平穏を望むのではないか、内乱を望まないのではないか、そう考える人だとキアラは思っていた。
だがソーアはそのようには考えなかった。


「それが間違いを見過ごす理由になるか!ショウを不当な手段で排除しておきながらそれがまかり通った国が、その後にまともな統治をされて平和を保つと思うのか?」


「それは・・・」


今度はキアラが口をつぐんだ。
正直に言えば、王家が、やがて国王となるだろう王太子が統治する国に未来があるかは不鮮明だとキアラは思っている。王太子が兼ねてより自分と婚約を結びたがっていたことは知っていた。祖父の遺言による力でそれは叶わなかったが、ついに狂気ともいえる強硬手段でキアラをもぎ取った。この執着は異常である。
ルーデルの時期当主を追い落とすことで、ランドール国は国防に大きな穴を空けることになるが、それでもラルス王太子はそれを実行した。リュートでは到底代わりが務まらないことを知りながらやっているのか、それとも知らないのかそれはわからないが、いずれにせよ先の先を見通して国の平和を守るべき王たる器ではないし、国をまともに導けるはずもない。それを咎めるどころか手を貸す臣下とて同じだ。


「・・・あ」


だがそこでふとキアラは気づく。

何を考えていたのだろう。
そんなのではないか、と。
婚約者として、幼馴染として自分を信頼してくれたショウを裏切り、親の言いつけだから、貴族の義務だからとそれを隠れ蓑にして正当化をした。
国の混乱を防ぐためだと不正を見過ごし、目を瞑ろうとしている。自分だって自己都合のためにやがて来る災悪を知りながらそれを知らんぷりをしている。



「キアラ、決心しろ!ここでやらなければショウだけじゃなく、この国も取り返しのつかないことになるぞ。親がどうだとか、貴族の義務がどうだとかそんなことは関係ない。お前の意思をみせろキアラ」


ソーアはそう言ってキアラの前に手を差し出した。ソーアと一緒にショウの救出をするというのなら手を取れという意味なのだろう。

キアラは一瞬悩んだが、すぐに結論を出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。 伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。 深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。 しかし。 お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。 伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。 その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。 一方で。 愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。 死へのタイムリミットまでは、あと72時間。 マモル追放をなげいても、もう遅かった。 マモルは、手にした最強の『力』を使い。 人助けや、死神助けをしながら。 10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。 これは、過去の復讐に燃える男が。 死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。 結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

呪われ少年魔法師、呪いを解除して無双する〜パーティを追放されたら、貴族の令嬢や王女と仲良くなりました〜

桜 偉村
ファンタジー
 瀬川空也(せがわ くうや)は魔力量が極端に少ない魔法師だった。  それでも一級品である【索敵(さくてき)】スキルで敵の攻撃を予測したり、ルート決めや作戦立案をするなど、冒険者パーティ【流星(メテオロ)】の裏方を担っていたが、あるとき「雑用しかできない雑魚はいらない」と追放されてしまう、  これが、空也の人生の分岐点となった。  ソロ冒険者となった空也は魔物に襲われていた少女を助けるが、その少女は有数の名家である九条家(くじょうけ)の一人娘だった。  娘を助けた見返りとして九条家に保護された空也は、衝撃の事実を知る。空也は魔力量が少ないわけではなく、禁術とされていた呪いをかけられ、魔力を常に吸い取られていたのだ。  呪いを解除すると大量の魔力が戻ってきて、冒険者の頂点であるSランク冒険者も驚愕するほどの力を手に入れた空也は最強魔法師へと変貌を遂げるが、そんな彼の周囲では「禁術の横行」「元パーティメンバーの異変」「生態系の変化」「魔物の凶暴化」など、次々に不可解な現象が起きる。それらはやがて一つの波を作っていって——  これは、最強少年魔法師とその仲間が世界を巻き込む巨大な陰謀に立ち向かう話。

処理中です...