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出ていけぇ!
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全力で踏み込み、雄叫び、渾身の力でドウダヌキを振り下ろす・・・!
誰の目にも俺がそうしたように見えただろう。だが、そうしなかった。
「あ・・・」
俺の太刀は、王太子の頭上スレスレで止まっていた。
王太子は目を見開き、腰を抜かしたようでペタリと座り込む。リュートは完全に棒立ちになっており、近衛をその場にいた全員の動きが止まった。
キアラの詠唱も途絶えていた。
揃いも揃って実戦経験が無いのか、この程度のことで固まっちゃって大丈夫かね?
キアラも今まで圧倒的な魔力を使ってのワンサイドゲームしか経験していなかったから、こうした修羅場を知らないようで驚きのためか詠唱を止めてしまっている。これが実戦ならキアラもお陀仏になってるよ?
などと説教してやりてぇが、もうどうでもいいや。
俺がここで一旦刀を引くが、それでもまだ飛び掛かってくる様子がなかった。斬り伏せられるのが怖いのか?
「ありゃ・・・」
あるものを見つけてしまう。それは王太子が漏らしてしまっているところだった。
「流石高貴なる殿下ともなると、育ちが良いからまだおしめが取れていらっしゃらないようで」
嫌味を一つかけてやるが、反応らしい反応は返ってこない。茫然としている。うーん、ちょっとインパクト与え過ぎたかな。
怒りに任せて誰か一人でも斬ってやろうかと思ったがやめた。王太子もリュートもキアラも、主犯格の一人でも手にかけてしまえば残すことになるルーデル家は危機に陥ることになる。だが近衛を数人斬ったくらいでは溜飲が下がらない。
だから殿下に寸止めの一つでもお見舞いして、心を砕いてやるのが一番面白いかなと思ってやってみたのだが、どうにも想像以上に効果があったみたいで、少し胸がスッとした。
俺に結構なコンプレックスを抱いていたみたいだから、今回の一件もさぞかし心に深く刻まれたに違いない。
「・・・大人しくしますか。賢明なことです」
膠着した空気を打ち破り、最初に口を開いてきたのはラプスだった。今更毅然としている態度を取ったって台無しだっての。冷や汗が浮かんでいるのがわかるし、ここまでやって「大人しい」だとは笑わせる。
今のところ誰も傷を負ってはいない、という意味では大人しいのかもしれないし、そうならなかったのは俺の気まぐれって理解はしているようだが。
「俺がこのまま大人しく縄についたとして、騎士団が大人しくしていると思うか?」
俺はドウダヌキを鞘に納める。
これから俺がどうなろうと、それが騎士団の連中の逆鱗に触れるようなことであれば、暴発する可能性がある。俺はその可能性について述べ、少し揺さぶりをかけてみた。
「言っておくが、リュートじゃ到底騎士団を宥めることはできねぇぞ」
「・・・なっ!」
ここでようやく我に返ったリュートが苛立たし気に声を上げようとする。
「そこは承知していますよ」
だがラプスはリュートを無視し、あくまで平静に語る。
「あなたを監獄に入れるつもりはありません。黒の騎士団の暴走を誘発しかねませんからね。処刑など以ての他です」
「・・・あぁ?」
どういうことだ?それなら俺はどうするんだ?
「僭越ながら私が台本の続きを述べさせていただきます。本来なら殿下がこのお役目を果たすところだったのですが・・・」
そう言ってラプスはちらりと王太子を見る。王太子はまだ腰を抜かして茫然としていた。心、ここにあらずとった有様だ。
あれでキアラを救ったヒーローを名乗るつもりだったとは、ミスキャストにもほどがあるんじゃないか。
「ショウ・ルーデル様。貴方にはキアラ・ルーベルト公爵令嬢への暴行未遂、それを止めに入ったラルス王太子への傷害、おまけに不敬罪への罰として・・・国外追放とさせていただきます」
誰の目にも俺がそうしたように見えただろう。だが、そうしなかった。
「あ・・・」
俺の太刀は、王太子の頭上スレスレで止まっていた。
王太子は目を見開き、腰を抜かしたようでペタリと座り込む。リュートは完全に棒立ちになっており、近衛をその場にいた全員の動きが止まった。
キアラの詠唱も途絶えていた。
揃いも揃って実戦経験が無いのか、この程度のことで固まっちゃって大丈夫かね?
キアラも今まで圧倒的な魔力を使ってのワンサイドゲームしか経験していなかったから、こうした修羅場を知らないようで驚きのためか詠唱を止めてしまっている。これが実戦ならキアラもお陀仏になってるよ?
などと説教してやりてぇが、もうどうでもいいや。
俺がここで一旦刀を引くが、それでもまだ飛び掛かってくる様子がなかった。斬り伏せられるのが怖いのか?
「ありゃ・・・」
あるものを見つけてしまう。それは王太子が漏らしてしまっているところだった。
「流石高貴なる殿下ともなると、育ちが良いからまだおしめが取れていらっしゃらないようで」
嫌味を一つかけてやるが、反応らしい反応は返ってこない。茫然としている。うーん、ちょっとインパクト与え過ぎたかな。
怒りに任せて誰か一人でも斬ってやろうかと思ったがやめた。王太子もリュートもキアラも、主犯格の一人でも手にかけてしまえば残すことになるルーデル家は危機に陥ることになる。だが近衛を数人斬ったくらいでは溜飲が下がらない。
だから殿下に寸止めの一つでもお見舞いして、心を砕いてやるのが一番面白いかなと思ってやってみたのだが、どうにも想像以上に効果があったみたいで、少し胸がスッとした。
俺に結構なコンプレックスを抱いていたみたいだから、今回の一件もさぞかし心に深く刻まれたに違いない。
「・・・大人しくしますか。賢明なことです」
膠着した空気を打ち破り、最初に口を開いてきたのはラプスだった。今更毅然としている態度を取ったって台無しだっての。冷や汗が浮かんでいるのがわかるし、ここまでやって「大人しい」だとは笑わせる。
今のところ誰も傷を負ってはいない、という意味では大人しいのかもしれないし、そうならなかったのは俺の気まぐれって理解はしているようだが。
「俺がこのまま大人しく縄についたとして、騎士団が大人しくしていると思うか?」
俺はドウダヌキを鞘に納める。
これから俺がどうなろうと、それが騎士団の連中の逆鱗に触れるようなことであれば、暴発する可能性がある。俺はその可能性について述べ、少し揺さぶりをかけてみた。
「言っておくが、リュートじゃ到底騎士団を宥めることはできねぇぞ」
「・・・なっ!」
ここでようやく我に返ったリュートが苛立たし気に声を上げようとする。
「そこは承知していますよ」
だがラプスはリュートを無視し、あくまで平静に語る。
「あなたを監獄に入れるつもりはありません。黒の騎士団の暴走を誘発しかねませんからね。処刑など以ての他です」
「・・・あぁ?」
どういうことだ?それなら俺はどうするんだ?
「僭越ながら私が台本の続きを述べさせていただきます。本来なら殿下がこのお役目を果たすところだったのですが・・・」
そう言ってラプスはちらりと王太子を見る。王太子はまだ腰を抜かして茫然としていた。心、ここにあらずとった有様だ。
あれでキアラを救ったヒーローを名乗るつもりだったとは、ミスキャストにもほどがあるんじゃないか。
「ショウ・ルーデル様。貴方にはキアラ・ルーベルト公爵令嬢への暴行未遂、それを止めに入ったラルス王太子への傷害、おまけに不敬罪への罰として・・・国外追放とさせていただきます」
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