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冤罪の始まり
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俺は息を飲むほどに美しく感じるキアラに魅入ってしまい、茫然としてしまった。
俺もどこか今日はそうしなければならないと感じ、少しだけいつもより身なりに気を遣ったつもりだが、俺とは比較にならないほどキアラが気合を入れてドレスアップしているのがわかる。
これは・・・エーペレスさんとかの話を真に受けるなら・・・
「キアラ。今日はいつもより更に綺麗だな」
今更だが、平静を装ってキアラに接する。
「ありがとう」
そう言うキアラは微かに笑みを浮かべているように見える。
その表情すらも美しいと俺は感じていた。
激しい動悸の納まらぬ鼓動を感じながら、俺はキアラをエスコートした。
「・・・・・・」
今日はキアラと食事をする予定で、今は予約しているレストランへ馬車は向かっている。
どこか口を開きづらい空気があり、俺は何も話せずにいた。と、いうか心が平静ではなく。何か話そうにも頭が回らない。
いや、ルーデルの当主となる俺がこんなことで心を乱してはいけないな。
「それにしても、今日はアーヴィガもソーアもタイミングが合わなくて残念だったな。明日になれば来るとは思うけど」
俺は今日会うはずだった二人のことをきっかけに話を切り出した。ひとまずは流れを変えて頭を切り替えよう。
キアラは少しの間無言だったが、やがて口を開いた。
「アーヴィガは本当に偶然だけど・・・」
「えっ?」
「ソーアは、私がお願いして遅れてきてもらうようにしてもらった」
俺はキアラの言葉の内容が一瞬理解できなかった。
「どうしてだ?」
当然の疑問を口にする。どうしてそんなことをしたのか、本当にわからなかったから。
キアラはこれまた一瞬だけ黙ったが
「今日はショウと二人になりたかったから」
はっきりと俺の目を見ながらそう言った。
「そ、そう・・・」
俺は思わずそう答えることしかできなかったが、自分でも顔が真っ赤になるくらい熱くなっているのがわかった。
どういうわけか、ここ最近の・・・特に今日のキアラはぐいぐい来る。
前に一緒に観た演劇が、そこまで彼女に影響を与えたのか?
まぁ、それは考えても仕方がない。
きっかけは何であれ、俺がキアラにアプローチをかけられているのは確かであって、俺がそれに対してどうするかというのが大切だ。
考えるまでもない。俺はキアラのことを大切に思っているし、彼女もそう思ってくれていると思う。
きっかけはなんでも彼女が俺との関係に僅かでも不安を感じていて、それを払拭することを望んでいるのなら、俺は俺にできることをやろうじゃないか。
-----
レストランで食事を終えると、俺達は王城へ向かった。
俺は元より宿泊する予定であったが、キアラも明日の御前会議に出席することになっているらしく前泊するらしい。それは初めてのことで俺も驚いたが、キアラも大魔法使いとして各地を文字通り飛び回り、魔物退治をしているのだから、国防に関わる御前会議に参加する権利はあるし、それを求める声も多いだろう。
王城からルーベルト邸は決してそこまで遠くはないが、それでも御前会議の参加者は安全性などの面から王城での前泊が推奨されている。なので今日キアラは前泊することにしたという。
だが実際そのキアラに充てられたスペースは、今日俺と二人になるために用意したのだと彼女は暗に言っていた。
既に宿泊に必要なものは使用人が運び入れているし、人払いもお願いしているらしい。
んー、そういうこと・・・そういうことだよな。
ここまでされて俺とてしらばっくれるつもりはないし、逃げるつもりもない。
ここまでぐいぐい来るなんて予想外も予想外だが、そこまでさせた以上は俺だって応えてやらねばならないと思っている。
では王城でそういうことをいたしてしまっていいのか?となると、もちろん良いわけがない。
だが、それはあくまでも表向きのこと。
実際は御前会議に参加する辺境伯も現地妻のような愛人が王都にいて、王都に来たときだけしか会えないため女がいるが御前会議の準備などで時間がない・・・からと、王城に連れてきてしまうことがあるようだ。そしてそれを王城もセキリュティーを万全にすることで対応し、黙認している。
もちろん貴族が愛人を王城に連れ込んでやることやれば「王城は不貞の片棒を担いだ」などと正妻に突かれることもある。
だが、王城が客人に与えるスペースには、客人の機密保持のために人払いや私兵の配備など、そこそこ高めの独立性と自由を認めている。だから逆に客人が何をしていてもわからない、責任も取れない、と王城を言い張ったことがあるようだ。
まぁ、つまり・・・予想だにしなかったことに王城が俺とキアラが結ばれる場になるということだ。
王城でそんなことできねーとか、時間がねーとか言っておきながらこのザマだよ。オミトもエーペレスさんも今の俺を見たら鼻で笑うでしょう。
王城に到着すると、客人用のスペースへ通される。
広大な王城ゆえに、客人用スペースといっても複数の部屋から廊下までかなりの広さだ。
その一角、ルーベルト家用のスペースにある、キアラに充てられた部屋へと俺は来た。道中本当に人払いされており、ルーベルト家スペースに入ると誰ともすれ違うことはなかった。
キアラの部屋・・・ではないが、キアラが使う客室というだけでちょっとだけドキドキしてしまう。
キアラと向き合うと、キアラも俺の目を真っすぐに見つめていた。
何やら気恥ずかしくなったが、ここで恥ずかしがって何もしないつもりはない。
「キアラ・・・いいんだな?」
キアラと俺の距離が近くなる。
これまでここまで近づいたことなんて今まで無かったかもしれない。
キアラが同意するように頷くと、俺は想いを抑えることが出来ずに彼女の唇を奪っていた。
俺は幸せだと思った。
やっとこれで本当にキアラと通じ合うことが出来たのだと。
俺は思い上がっていた。
全てが順調だと。欲しいものを手に入れたと。
自身の婚約者を信じすぎるあまり、俺は迂闊にも兄リュートを笑えない失態を犯すことになる。
プロローグに繋がる、「冤罪」の始まりであった。
俺もどこか今日はそうしなければならないと感じ、少しだけいつもより身なりに気を遣ったつもりだが、俺とは比較にならないほどキアラが気合を入れてドレスアップしているのがわかる。
これは・・・エーペレスさんとかの話を真に受けるなら・・・
「キアラ。今日はいつもより更に綺麗だな」
今更だが、平静を装ってキアラに接する。
「ありがとう」
そう言うキアラは微かに笑みを浮かべているように見える。
その表情すらも美しいと俺は感じていた。
激しい動悸の納まらぬ鼓動を感じながら、俺はキアラをエスコートした。
「・・・・・・」
今日はキアラと食事をする予定で、今は予約しているレストランへ馬車は向かっている。
どこか口を開きづらい空気があり、俺は何も話せずにいた。と、いうか心が平静ではなく。何か話そうにも頭が回らない。
いや、ルーデルの当主となる俺がこんなことで心を乱してはいけないな。
「それにしても、今日はアーヴィガもソーアもタイミングが合わなくて残念だったな。明日になれば来るとは思うけど」
俺は今日会うはずだった二人のことをきっかけに話を切り出した。ひとまずは流れを変えて頭を切り替えよう。
キアラは少しの間無言だったが、やがて口を開いた。
「アーヴィガは本当に偶然だけど・・・」
「えっ?」
「ソーアは、私がお願いして遅れてきてもらうようにしてもらった」
俺はキアラの言葉の内容が一瞬理解できなかった。
「どうしてだ?」
当然の疑問を口にする。どうしてそんなことをしたのか、本当にわからなかったから。
キアラはこれまた一瞬だけ黙ったが
「今日はショウと二人になりたかったから」
はっきりと俺の目を見ながらそう言った。
「そ、そう・・・」
俺は思わずそう答えることしかできなかったが、自分でも顔が真っ赤になるくらい熱くなっているのがわかった。
どういうわけか、ここ最近の・・・特に今日のキアラはぐいぐい来る。
前に一緒に観た演劇が、そこまで彼女に影響を与えたのか?
まぁ、それは考えても仕方がない。
きっかけは何であれ、俺がキアラにアプローチをかけられているのは確かであって、俺がそれに対してどうするかというのが大切だ。
考えるまでもない。俺はキアラのことを大切に思っているし、彼女もそう思ってくれていると思う。
きっかけはなんでも彼女が俺との関係に僅かでも不安を感じていて、それを払拭することを望んでいるのなら、俺は俺にできることをやろうじゃないか。
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レストランで食事を終えると、俺達は王城へ向かった。
俺は元より宿泊する予定であったが、キアラも明日の御前会議に出席することになっているらしく前泊するらしい。それは初めてのことで俺も驚いたが、キアラも大魔法使いとして各地を文字通り飛び回り、魔物退治をしているのだから、国防に関わる御前会議に参加する権利はあるし、それを求める声も多いだろう。
王城からルーベルト邸は決してそこまで遠くはないが、それでも御前会議の参加者は安全性などの面から王城での前泊が推奨されている。なので今日キアラは前泊することにしたという。
だが実際そのキアラに充てられたスペースは、今日俺と二人になるために用意したのだと彼女は暗に言っていた。
既に宿泊に必要なものは使用人が運び入れているし、人払いもお願いしているらしい。
んー、そういうこと・・・そういうことだよな。
ここまでされて俺とてしらばっくれるつもりはないし、逃げるつもりもない。
ここまでぐいぐい来るなんて予想外も予想外だが、そこまでさせた以上は俺だって応えてやらねばならないと思っている。
では王城でそういうことをいたしてしまっていいのか?となると、もちろん良いわけがない。
だが、それはあくまでも表向きのこと。
実際は御前会議に参加する辺境伯も現地妻のような愛人が王都にいて、王都に来たときだけしか会えないため女がいるが御前会議の準備などで時間がない・・・からと、王城に連れてきてしまうことがあるようだ。そしてそれを王城もセキリュティーを万全にすることで対応し、黙認している。
もちろん貴族が愛人を王城に連れ込んでやることやれば「王城は不貞の片棒を担いだ」などと正妻に突かれることもある。
だが、王城が客人に与えるスペースには、客人の機密保持のために人払いや私兵の配備など、そこそこ高めの独立性と自由を認めている。だから逆に客人が何をしていてもわからない、責任も取れない、と王城を言い張ったことがあるようだ。
まぁ、つまり・・・予想だにしなかったことに王城が俺とキアラが結ばれる場になるということだ。
王城でそんなことできねーとか、時間がねーとか言っておきながらこのザマだよ。オミトもエーペレスさんも今の俺を見たら鼻で笑うでしょう。
王城に到着すると、客人用のスペースへ通される。
広大な王城ゆえに、客人用スペースといっても複数の部屋から廊下までかなりの広さだ。
その一角、ルーベルト家用のスペースにある、キアラに充てられた部屋へと俺は来た。道中本当に人払いされており、ルーベルト家スペースに入ると誰ともすれ違うことはなかった。
キアラの部屋・・・ではないが、キアラが使う客室というだけでちょっとだけドキドキしてしまう。
キアラと向き合うと、キアラも俺の目を真っすぐに見つめていた。
何やら気恥ずかしくなったが、ここで恥ずかしがって何もしないつもりはない。
「キアラ・・・いいんだな?」
キアラと俺の距離が近くなる。
これまでここまで近づいたことなんて今まで無かったかもしれない。
キアラが同意するように頷くと、俺は想いを抑えることが出来ずに彼女の唇を奪っていた。
俺は幸せだと思った。
やっとこれで本当にキアラと通じ合うことが出来たのだと。
俺は思い上がっていた。
全てが順調だと。欲しいものを手に入れたと。
自身の婚約者を信じすぎるあまり、俺は迂闊にも兄リュートを笑えない失態を犯すことになる。
プロローグに繋がる、「冤罪」の始まりであった。
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