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コレデオシマイ

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*キアラ目線
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「キアラ、わかっているな?」


お父様が私の目を見ながら念を押すように言った。
今日だけでなく、これまでに何度も言ってきた言葉。

私は決まってこう言う。


「はい、わかっています」


何度言ったかわからない。
だけどお父様は心配なのか、何度も何度も確認するように聞いてくる。

それだけ不安なのだろうか、私が心変わりをするかもしれないのを。
恐ろしいのだろうか、私がお父様に背くのを。

無理もない。実際に私がお父様の、いえ、の意向に背けばそれは重大な結果を招くことになる。
お父様が私を映すその瞳には、ありありと恐怖の色が滲んでいた。


・・・愚かな人だ。
そんなことあるはずがないのに。
そんなこと私がするはずがないのに。



使用人が数人がかりで私の身支度を始める。
いつもより丁寧に丁寧になされたそれは、いつもよりきめ細かく美しい髪、薄い化粧で私を整えた。
これは今日必要なことだ。
彼をにさせるために。
を成し遂げるために。


準備が終わると、私はを待った。
ソファに腰掛け、目を瞑って思考の海に潜る。

私の頭に浮かんでくるのは、これまで見てきた幾百もの演劇の数々。
演者の演技を私は一つ一つ記憶している。
今日の私が演じるべきものが近いのはどれだろう。私はどれを演じればいいのだろう。
記憶を辿り、答えを探る。

あぁ、演じるといえば私がを演じるのは今日で最後になるわけか。
自分で考え、自分で生み出した役。
今日で最後になると思えば、どこか心につかえるものがあった。

この気持ちはなんだ?罪悪感?寂しさ?
ーーーまさか。私にそのようなものがあるのだろうか。


「お嬢様。ルーデル様がお見えになりました」


使用人がやってきた。


「そう」


私はそう返事をして、ゆっくりと立つ。
そして歩き出した。


これでお終い。
ショウ・ルーデルの婚約者、幼馴染を演じるのは・・・今日が最後だ。
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