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閑話 思い出とドウダヌキ
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常にショウの片腕として働き、次期当主を支えるオミト。
白髪交じりの髪で細い体の中老だが、左目の眼帯、そして落ち着き払ってはいるがどこか覇気のある雰囲気のためか、初見の人は怯むことが大半だ。
ルーデル家の家令であり、先代辺境伯トウシの代から仕える古株である。
元は黒の騎士団の騎士だったが、戦えなくなったために屋敷の仕事を任されるようになった。
今となっては彼がいなければルーデル家は回りきらないとさえ言え、リュートもショウも、果てはエリナでさえ彼には意外と頭が上がらない。
だが彼は元々ランドールの人間ではない。
ランドールの東方ルード地方の更に東の未開の大森林「黒の森」・・・それを抜けた更に東、『極東』と呼ばれる地にある国から流れてきた人間だった。
あるときランドールで問題を起こし、ルーデル領地にある国で最も厳しいと噂の「ラーシュビーツ刑務所」に収監されることになったが、オミトはそこで運命的な出会いをすることになる。
-----
オミトが23歳のときだ。
「よう、アンタか。『極東』から来た囚人ってのは」
「・・・?」
ある日、オミトは面会だと言われ牢から出され、面会室でもない休憩室でもない、個室に通された。
そこで一人の見たこともない男に出会う。
トウシ・ルーデル。面会に来た男はそう名乗った。
歳はオミトと同じくらいだった。
「なるほど、確かに極東から来たっぽいな。黒髪に黒い目」
トウシはオミトのことをジロジロみながら言った。
「あなたもそうではないか」
オミトのことをそう言うトウシも同じく黒髪に黒い目をしているので、オミトはそう言った。
「あぁ、俺のご先祖様も『極東』から来たって話なんでな。それが本当ならまぁ、アンタとあんま変わらないってことだ」
「それで?同じ極東から来たという私に会いたかっただけだと?」
「それもあるけど、アンタに興味を持ったのはそれだけじゃない・・・おい、席を外してくれ」
そう言ってトウシは部屋の入り口にいた看守達に目配せをした。看守達は退室し、部屋には二人きりになった。
トウシは部屋にある棚からコップを二つ取り、オミトの目の前にひとつ置く。
「酒は飲めるかい?」
オミトは唖然とした。身よりもない外国人の囚人である自分に突然面会を申し込んできたかと思ったら、何故か酒を進めてくる目の前の男が理解できなかった。
「・・・たしなみ程度なら」
しかし、酒が飲めるなら相手の真意がどうであれ、乗っておこうと思ったオミトはそう答える。
トウシは笑いながらワインをついでくれた。手錠を繋がれた状態のまま、オミトはワインを飲み干した。
しばし飲み交わしながら、トウシは次々とオミトに質問をかけていく。
「極東から来たっていうが、どうやって来たんだ?」
「徒歩で。それしかあるまい」
「じゃあ、黒の森を越えてきたってことか?」
「そうだ」
「では相当に腕が立つってことだな」
「運が良かっただけだ」
運が良かった・・・それは謙遜ではなく本心から言った言葉だった。
オミトは黒の森を抜けてはきたが、何度も死の淵から生還してのギリギリの連続であった。
黒の森は魔族の領域。その実態は今だ人類は解明できていない。
森の強い再生力と魔物の脅威によって開拓もできず、何か国分かあるとされる広大さのために一度深部に入りこんだら生きて帰ってくることは不可能と言われている。
ときたま極東から一人や二人、奇跡的に黒の森を抜けてやってくる者がいるが、逆にこちらから行って帰ってきた者の話は誰も聞いたことがない。大昔に往復に成功したことがあるという者の伝記や、森を極東から抜けて来た者の話を聞くくらいしかあちらを知る方法はないのだ。
「こっちから見て、黒の森の向こうはどうなっているんだ?」
「海がある。そこを渡った島国から私は来た」
「随分大変な思いをしてきた感じだな。どうしてわざわざここに来た?」
「・・・来たくて来たのではない。逃げているうちに流れ着いたのだ」
酒を飲んでいるせいか、それとも目の前のトウシという男がなんとなく話安いのか、オミトは自分でも信じられないくらい饒舌になっていた。
「逃げた、とはなんだい」
トウシの質問にオミトは一瞬口を噤んだが、それでも一度途中まで話した以上は止める気もなかったのか、それとも実は誰かに聞いてほしかったのか、そのまま喋ることにした。
「祖国で私の仕えていた人間が、不名誉の死を遂げることになった。私は46人の仲間とその死の原因を作った仇を打つことになった」
「ほぉ君主のためにか。随分と忠義心の厚いことだな」
「少々機微の察せない人ではあったが、私には良い主だった。だから仇のことがどうしても許せなくて仲間と決起したのだ・・・だが首尾よく仇を打った後、お上からの処罰を甘んじて受けるつもりだったのだが、急に怖くなって私はその場から仲間を置いて逃げてしまったのだ」
「別にいいんじゃねぇか?目的を達することができたのなら」
「だが他の仲間は逃げることなく処罰を受け入れた。心の弱さから逃げた私一人がのうのうと生き延びているという事実が辛かった。惨めで仕方が無かったのだ。そして全てから逃げるように私は祖国を離れ、気が付いたらここにいた」
黒の森のことはオミトも知ってはいた。だからあえて危険な黒の森に入り込んだ。楽になりたかったから。
だが、どういうわけか生き延びてしまった。
オミトは無心なまま、森を抜けた先にあったランドールをふらついていた。
「アンタがここに収監された理由は聞いた。物陰で女性を連れ込んで乱暴をしようとした伯爵子息をたまたま見つけ、アソコをちょん切ったらしいな」
「そうだが。で、私は処刑されるのか?」
どうでも良さそうにオミトが聞いた。
見知らぬ外国でただただ浪人するのも退屈だ。どうせなら拾い物でもして死刑にでもなろうかと思って自暴自棄になり面倒事にあえて首を突っ込んだときのことだった。
「普通なら処刑だ。だが、アンタが救った女性もまた別の伯爵家の娘だった。そちらの嘆願もあり、アンタは釈放とはいかないが、懲役40年で済む」
「長いな・・・」
オミトはふぅっと溜め息をついた。罰だというのなら受けてもいいが、それにしても40年は長い。いっそ死刑にしてほしい。
「そこでだ。これが今日の本題なんだが、俺の下で働く気はないか?ちょっとばかり荒事ばかりの職場なんだが、今よりは自由にさせてやれるぞ」
「・・・なに?」
ここでトウシは自分がこの刑務所のある領地を任されている辺境伯であるということを明かす。
辺境伯には強い権限があり、刑務所の囚人でも死刑囚でさえなければ、中央の許可さえあれば囚人奴隷として収監させずとも外に出して働かせることができた。
あくまで辺境伯が監視できる位置で働かせること、領地からは一歩も出さないことが条件であるが。
「アンタのような腕の立つやつが欲しいのさ。何もする気がねぇんなら、どうだい?」
酔狂なやつだ、とオミトは思った。だが、どうせ危険に身を置き、どうにでもなりたくて黒の森に入ったことがある身なのだ。今更どんな荒事をやれと言われても、全く怯む気にもならない。
「別にやってもいいが、私はさっきも言った通り土壇場で逃げるかもしれん男だぞ?あなたに忠誠を誓うかもわからないのだぞ。いいのか?」
オミトの言葉にトウシは笑いながら
「いーよいーよ。あんたは逃げるにしても最低限の仕事をしてから逃げるような人だと俺は思っている。それさえやってくれれば忠誠なんかいいよ。そういう人でいいんだよ。忠誠を誓ったはずの育ちのいい騎士様なんか、戦場で何もしないで逃げることがあるんだから」
と、あっさり受け入れた。
こうして異邦人オミトは囚人奴隷としてルーデル家に騎士として仕えることになったのである。
そしてオミトは騎士団に入ってすぐに知った。この黒の騎士団とやらは構成員の中にそこそこの数の囚人奴隷がいることを。
トウシは自分が面会して問題ないと思った囚人を積極的に騎士団に入れるようにしていた。王都からは小言を言われたが、実際それで騎士団として仕事をしっかりこなしているのだから、トウシはこの方針をやめることはなかった。
やがてオミトは心からトウシに忠誠を誓うようになる。トウシの妹であるエーペレスや、子のショウにも忠誠を誓い、エーペレスの奇行の補佐をしたり、ショウに剣術を教えたりして固い絆を結んだ。
そうして現在に至る。
-----
これは「冤罪」の15日前。
「若。何か考え事をしておりますかな?」
「・・・えっ?」
「心、ここにあらずといったところです。太刀筋によく表れてますよ」
ショウは日課である刀の素振りをしていたが、剣術の師であるオミトから思わぬ指摘を受ける。
無心で素振りに集中していたつもりだったが、オミトはそれを見抜いた。
「あー、ちょっと集中できてなかったか。悪い」
そう言ってショウは自身の得物---『ドウダヌキ』を鞘に納めた。
これはルーデル家の宝物庫から幼い頃にショウが見つけた極東の武器である。
刀という、ランドールなど世界各国で最も普及している直剣と違い、反っているという形も使い方もトリッキーなこの武器だが、ショウは無性にこれを気に入り、使い方を知るオミトから今に至るまで指導を受けていた。
「何かお悩みですか?」
職務は多忙を極めているが、こうまで剣術の稽古に心あらずであるということは珍しいと思い、オミトは聞いた。
「悩み・・・悩みか。どうなのかな・・・」
歯切れが悪く、ぶつぶつと呟くようにして悩む姿を見て、これまた珍しい態度だとオミトは訝しんだ。
「一体どうしたというのです?」
「うん・・・」
オミトの問いにもどこか生返事なショウを見て、なんだかオミトはどんどんと心配になっていた。
だが、やがて独り言のように一言、ショウの呟きを聞き、オミトは腰を抜かしそうになった。
「キアラのことを抱くべきか、抱かざるべきか。それが問題だ」
「・・・はっ?」
白髪交じりの髪で細い体の中老だが、左目の眼帯、そして落ち着き払ってはいるがどこか覇気のある雰囲気のためか、初見の人は怯むことが大半だ。
ルーデル家の家令であり、先代辺境伯トウシの代から仕える古株である。
元は黒の騎士団の騎士だったが、戦えなくなったために屋敷の仕事を任されるようになった。
今となっては彼がいなければルーデル家は回りきらないとさえ言え、リュートもショウも、果てはエリナでさえ彼には意外と頭が上がらない。
だが彼は元々ランドールの人間ではない。
ランドールの東方ルード地方の更に東の未開の大森林「黒の森」・・・それを抜けた更に東、『極東』と呼ばれる地にある国から流れてきた人間だった。
あるときランドールで問題を起こし、ルーデル領地にある国で最も厳しいと噂の「ラーシュビーツ刑務所」に収監されることになったが、オミトはそこで運命的な出会いをすることになる。
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オミトが23歳のときだ。
「よう、アンタか。『極東』から来た囚人ってのは」
「・・・?」
ある日、オミトは面会だと言われ牢から出され、面会室でもない休憩室でもない、個室に通された。
そこで一人の見たこともない男に出会う。
トウシ・ルーデル。面会に来た男はそう名乗った。
歳はオミトと同じくらいだった。
「なるほど、確かに極東から来たっぽいな。黒髪に黒い目」
トウシはオミトのことをジロジロみながら言った。
「あなたもそうではないか」
オミトのことをそう言うトウシも同じく黒髪に黒い目をしているので、オミトはそう言った。
「あぁ、俺のご先祖様も『極東』から来たって話なんでな。それが本当ならまぁ、アンタとあんま変わらないってことだ」
「それで?同じ極東から来たという私に会いたかっただけだと?」
「それもあるけど、アンタに興味を持ったのはそれだけじゃない・・・おい、席を外してくれ」
そう言ってトウシは部屋の入り口にいた看守達に目配せをした。看守達は退室し、部屋には二人きりになった。
トウシは部屋にある棚からコップを二つ取り、オミトの目の前にひとつ置く。
「酒は飲めるかい?」
オミトは唖然とした。身よりもない外国人の囚人である自分に突然面会を申し込んできたかと思ったら、何故か酒を進めてくる目の前の男が理解できなかった。
「・・・たしなみ程度なら」
しかし、酒が飲めるなら相手の真意がどうであれ、乗っておこうと思ったオミトはそう答える。
トウシは笑いながらワインをついでくれた。手錠を繋がれた状態のまま、オミトはワインを飲み干した。
しばし飲み交わしながら、トウシは次々とオミトに質問をかけていく。
「極東から来たっていうが、どうやって来たんだ?」
「徒歩で。それしかあるまい」
「じゃあ、黒の森を越えてきたってことか?」
「そうだ」
「では相当に腕が立つってことだな」
「運が良かっただけだ」
運が良かった・・・それは謙遜ではなく本心から言った言葉だった。
オミトは黒の森を抜けてはきたが、何度も死の淵から生還してのギリギリの連続であった。
黒の森は魔族の領域。その実態は今だ人類は解明できていない。
森の強い再生力と魔物の脅威によって開拓もできず、何か国分かあるとされる広大さのために一度深部に入りこんだら生きて帰ってくることは不可能と言われている。
ときたま極東から一人や二人、奇跡的に黒の森を抜けてやってくる者がいるが、逆にこちらから行って帰ってきた者の話は誰も聞いたことがない。大昔に往復に成功したことがあるという者の伝記や、森を極東から抜けて来た者の話を聞くくらいしかあちらを知る方法はないのだ。
「こっちから見て、黒の森の向こうはどうなっているんだ?」
「海がある。そこを渡った島国から私は来た」
「随分大変な思いをしてきた感じだな。どうしてわざわざここに来た?」
「・・・来たくて来たのではない。逃げているうちに流れ着いたのだ」
酒を飲んでいるせいか、それとも目の前のトウシという男がなんとなく話安いのか、オミトは自分でも信じられないくらい饒舌になっていた。
「逃げた、とはなんだい」
トウシの質問にオミトは一瞬口を噤んだが、それでも一度途中まで話した以上は止める気もなかったのか、それとも実は誰かに聞いてほしかったのか、そのまま喋ることにした。
「祖国で私の仕えていた人間が、不名誉の死を遂げることになった。私は46人の仲間とその死の原因を作った仇を打つことになった」
「ほぉ君主のためにか。随分と忠義心の厚いことだな」
「少々機微の察せない人ではあったが、私には良い主だった。だから仇のことがどうしても許せなくて仲間と決起したのだ・・・だが首尾よく仇を打った後、お上からの処罰を甘んじて受けるつもりだったのだが、急に怖くなって私はその場から仲間を置いて逃げてしまったのだ」
「別にいいんじゃねぇか?目的を達することができたのなら」
「だが他の仲間は逃げることなく処罰を受け入れた。心の弱さから逃げた私一人がのうのうと生き延びているという事実が辛かった。惨めで仕方が無かったのだ。そして全てから逃げるように私は祖国を離れ、気が付いたらここにいた」
黒の森のことはオミトも知ってはいた。だからあえて危険な黒の森に入り込んだ。楽になりたかったから。
だが、どういうわけか生き延びてしまった。
オミトは無心なまま、森を抜けた先にあったランドールをふらついていた。
「アンタがここに収監された理由は聞いた。物陰で女性を連れ込んで乱暴をしようとした伯爵子息をたまたま見つけ、アソコをちょん切ったらしいな」
「そうだが。で、私は処刑されるのか?」
どうでも良さそうにオミトが聞いた。
見知らぬ外国でただただ浪人するのも退屈だ。どうせなら拾い物でもして死刑にでもなろうかと思って自暴自棄になり面倒事にあえて首を突っ込んだときのことだった。
「普通なら処刑だ。だが、アンタが救った女性もまた別の伯爵家の娘だった。そちらの嘆願もあり、アンタは釈放とはいかないが、懲役40年で済む」
「長いな・・・」
オミトはふぅっと溜め息をついた。罰だというのなら受けてもいいが、それにしても40年は長い。いっそ死刑にしてほしい。
「そこでだ。これが今日の本題なんだが、俺の下で働く気はないか?ちょっとばかり荒事ばかりの職場なんだが、今よりは自由にさせてやれるぞ」
「・・・なに?」
ここでトウシは自分がこの刑務所のある領地を任されている辺境伯であるということを明かす。
辺境伯には強い権限があり、刑務所の囚人でも死刑囚でさえなければ、中央の許可さえあれば囚人奴隷として収監させずとも外に出して働かせることができた。
あくまで辺境伯が監視できる位置で働かせること、領地からは一歩も出さないことが条件であるが。
「アンタのような腕の立つやつが欲しいのさ。何もする気がねぇんなら、どうだい?」
酔狂なやつだ、とオミトは思った。だが、どうせ危険に身を置き、どうにでもなりたくて黒の森に入ったことがある身なのだ。今更どんな荒事をやれと言われても、全く怯む気にもならない。
「別にやってもいいが、私はさっきも言った通り土壇場で逃げるかもしれん男だぞ?あなたに忠誠を誓うかもわからないのだぞ。いいのか?」
オミトの言葉にトウシは笑いながら
「いーよいーよ。あんたは逃げるにしても最低限の仕事をしてから逃げるような人だと俺は思っている。それさえやってくれれば忠誠なんかいいよ。そういう人でいいんだよ。忠誠を誓ったはずの育ちのいい騎士様なんか、戦場で何もしないで逃げることがあるんだから」
と、あっさり受け入れた。
こうして異邦人オミトは囚人奴隷としてルーデル家に騎士として仕えることになったのである。
そしてオミトは騎士団に入ってすぐに知った。この黒の騎士団とやらは構成員の中にそこそこの数の囚人奴隷がいることを。
トウシは自分が面会して問題ないと思った囚人を積極的に騎士団に入れるようにしていた。王都からは小言を言われたが、実際それで騎士団として仕事をしっかりこなしているのだから、トウシはこの方針をやめることはなかった。
やがてオミトは心からトウシに忠誠を誓うようになる。トウシの妹であるエーペレスや、子のショウにも忠誠を誓い、エーペレスの奇行の補佐をしたり、ショウに剣術を教えたりして固い絆を結んだ。
そうして現在に至る。
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これは「冤罪」の15日前。
「若。何か考え事をしておりますかな?」
「・・・えっ?」
「心、ここにあらずといったところです。太刀筋によく表れてますよ」
ショウは日課である刀の素振りをしていたが、剣術の師であるオミトから思わぬ指摘を受ける。
無心で素振りに集中していたつもりだったが、オミトはそれを見抜いた。
「あー、ちょっと集中できてなかったか。悪い」
そう言ってショウは自身の得物---『ドウダヌキ』を鞘に納めた。
これはルーデル家の宝物庫から幼い頃にショウが見つけた極東の武器である。
刀という、ランドールなど世界各国で最も普及している直剣と違い、反っているという形も使い方もトリッキーなこの武器だが、ショウは無性にこれを気に入り、使い方を知るオミトから今に至るまで指導を受けていた。
「何かお悩みですか?」
職務は多忙を極めているが、こうまで剣術の稽古に心あらずであるということは珍しいと思い、オミトは聞いた。
「悩み・・・悩みか。どうなのかな・・・」
歯切れが悪く、ぶつぶつと呟くようにして悩む姿を見て、これまた珍しい態度だとオミトは訝しんだ。
「一体どうしたというのです?」
「うん・・・」
オミトの問いにもどこか生返事なショウを見て、なんだかオミトはどんどんと心配になっていた。
だが、やがて独り言のように一言、ショウの呟きを聞き、オミトは腰を抜かしそうになった。
「キアラのことを抱くべきか、抱かざるべきか。それが問題だ」
「・・・はっ?」
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