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フラグその2 ルーデル家の家庭の事情と陰謀
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ルーデル辺境伯家はランドール王国の東方ルード地方を治めている。
この地は隣国からの侵略や、領地内にある魔物で溢れる未開の大森林『黒の森』から出没する魔物の撃退など、何代にも続く戦乱が続いているが、常に危険に身を置き、領地のため、国のために戦い治を維持するこの辺境伯家率いる通称『黒の騎士団』は、間違いなくランドール王国最強の武力を持つと言われていた。
その最強と言われる辺境伯家の長男としてリュートは産まれた。
父はルードを守護する武で名を轟かせた辺境伯トウシ・ルーデル。母は王都の名門公爵家の娘で、その並外れた美貌は国外にまで知られているエリナ・フェンドート。
リュートは母エリナと同じ美しい金髪と綺麗な青い瞳を受け継いだ。
母エリナはまさに自分の生き写しであると痛くリュートを溺愛し、乳母には任せず自ら子育てに励んだ。
その結果リュートは見た目だけではなく、性格までトウシではなくエリナに似るようになる。
幼少から武には関心を示さず、書物を読んだりすることのほうが多く、騎士団のこともどこか恐れて近寄ることさえなかった。その様にトウシは後継ぎとして問題があると肩を落としたが、エリナは無理に辺境伯家を継ぐことはないと考えていた。
リュートが生まれて3年後に次男であるショウが誕生する。
ショウは父トウシと同じ、黒髪に黒の瞳を持って産まれた。
母エリナは自分とはかけ離れた容姿を持つショウに対しリュートと同じだけの愛情を注ぐことはできず、育児も乳母に任せっきりであった。そのせいなのか素質なのか、ショウはリュートとは真逆に育った。
幼少から極めて活発で外によく出て遊び、生傷を付けて帰ってくる。騎士団のところにも物怖じせずに遊びに行き、同い年の友人はおろか母エリナや兄リュートよりも騎士と接している時間のほうが多いくらいであった。
騎士団といっても辺境で戦に明け暮れる騎士で、出自も必ずしも貴族ではない、そんな彼らと一緒にいることによって、言葉遣いも荒く育った。
そんなショウのことをエリナはどこか疎むようになり、代わりにその分の愛情はリュートに注がれることになった。
ショウが10歳になる頃には、彼はこっそり騎士団に交じって戦場にも出るようになっていた。何度見つけて連れ帰り、叱責してもやめなかった。
そして11歳になる頃にはついに(こっそり参加の)初陣で隣国の侵略軍の大将首を取る。生まれ持っての武人だと騎士団はショウを称えた。
類稀なる武の才能と気質。将来黒の騎士団を統べるに相応しいと誰もが言った。
これを受け、トウシは将来家督をショウに譲ることを決めた。
リュートは長男だが、彼自身が爵位を継ぐことを望んでいないし、何より素質がない。それに彼には彼でやってもらいたいことがある。王都には各辺境伯家から人質として親族を誰かしら別邸に住まわせなければならない習わしがある。今やトウシの両親・・・リュート達の祖父母が暮らしているが、将来リュートにはその王都の別邸を仕切ってもらおうと考えた。
リュートは社交界でも問題なく立ち回れるし、見た目や物腰のせいか令嬢を中心に人気もある。ただ人質として王都に住まわせるだけではなくて、リュートに働いてもらいルーデル家と中央とのパイプ作りに励んでもらえるだろうと期待していた。
リュートは辺境伯を継いで騎士団の統率などしたくはないし、エリナも都会暮らしが恋しくてリュートとともに王都に移住することを望んでいたので、まさに誰もが望む形の完璧といえる采配となった。
領地でも王都でもそれぞれに有望な息子がいるので将来は安泰だ。
そう思いながら父トウシは早々に病でこの世を去った。
----------
「ーーという話だったのサ」
そこまで言い終えて、俺は手元にあった紅茶を飲み干した。
ここは王都にある知り合いの屋敷の庭園。そこで二人きりで開かれた茶会で、俺は昔話と愚痴をこぼしていた。
皿の上に広げられた焼き菓子に手を伸ばそうとしていると「失礼します」と早くも近くにいたメイドがおかわりをついでくれる。
これは王城で起きる「冤罪」の2か月前。
「それなりにwinwinな形で納まるはずだったんだけどなぁ。ぜーんぶパァだよ」
そう言って大袈裟に肩を竦めてみせた。
「なるほど。大変だね」
対面に座る男は苦笑いしながら同情の言葉を口にする。
彼は今いるこの屋敷の主であり、俺の幼馴染でもあるアーヴィガ・ハルトマン辺境伯。北方にあるグラーデ地方を治めている。俺より一つ年上で、既に成人しているために今年爵位を継いだばかりだ。
今は立場は俺より上だが、なじみということで今まで通りに接してくれと言われている。来年俺が辺境伯になるまで相応に接するのも疲れるなぁと思っていたから正直助かった。
そんなわけでアーヴィガはすっかり多忙になり、会えるのは年に数回。久々に会って最近の鬱憤が溜まっていたのか、俺は今まであまり話したこともないような家庭環境のことも含めて愚痴を放ってしまった。
だが、そんな俺の話もアーヴィガは黙って聞いてくれる。いい奴だ。
「不貞による婚約破棄。それから社交界からの孤立か。意外というか、前までのリュートさんのイメージからは想像もつかなかったな」
アーヴィガが言うには社交界において俺の兄リュートの立場は決して悪くなかったらしい。交友も広く、父上が。待していた通り、順調に王都でのパイプ作りは進められていただろうとのこと。
しかし不貞の件により、リュートの評判は一気に地に落ちたようだ。
愛人を囲うくらいなら貴族だってままあることだ。第二夫人なんてのを持っている高貴族だってそこそこいる。
だが婚約中に別の女に手を出し、結果元婚約者がいる公爵家を敵に回したとなると人は離れてしまうだろう。誰だって公爵家に睨まれたくはないからな。
「・・・で、今日はここに来る前に行って来たんだよね?ルフト公爵家に。どうだったんだい?」
「ん~、それなんだがな・・・」
俺はハルトマン家別邸に来る前、母上とルフト公爵家に出向き公爵に謝罪をしてきた。
賠償金を即座に納めたこともあったせいか、俺達にもそれほど怒りはぶつけてこずに、リュートに対しての家からの処罰の内容を聞いてきた以外には特に向こうからは言われることもなかった。
びっくりするほどあっさりと謝罪が受け入れられた。てっきりこちらの立場が弱いことを盾にぐちぐちと嫌味でも言われるかと思ったのだが、何もなさ過ぎて拍子抜けしたくらいだ。
元から彼方はリュートにはあまりいい印象が無かったのか、それとも今回のことですっかり嫌悪してしまい、ルーデル家そのものと関わりたくないのか、それはわからない。
「公爵家を訪ねてから出てくるまで30分もかからなかったぜ。まさかまさかだよ」
そのまま母上はルーデル家別邸に行き、俺は元々約束していたので予定よりかなり早めだが、ここハルトマン家別邸に来た。
「ふむ、気になるね・・・」
アーヴィガは考え込む仕草をする。俺は2杯目の紅茶を飲み干した。すぐにまたおかわりをメイドが煎れてくれる。
「まぁ、やはりこれは仕組まれたんじゃないかなと僕は思う」
あっけらかんとアーヴィガは言った。
「おいおい滅多なこと言うなよ」
俺はそう言うが、それも可能性の一つとして考えてはいた。
誰が何を目的として?それはわからないが、それにしても愚兄がただ行きずりの女と不貞をしただけの話だとは思えなかったのだ。
「けどね、リュートさんが不貞した当日に、彼と一緒に目撃されていた町娘の素性がわかった。まぁ、正確には『その可能性がかなり高い』程度だけど」
「!なんだって!?誰なんだ!」
思わずテーブルに身を乗り出して聞いてしまう。そのときの拍子に紅茶がこぼれてしまった。
すかさずメイドが新しい器で紅茶を煎れてくれた。すみません。
「こっちで君に頼まれて調べてみた結果、リュートさんの相手をしたのは、ルフト公爵家の派閥に与しているホルム子爵の娘のダリアさんではないかとされている」
「・・・は?」
アーヴィガの言葉に、俺は言葉を失った。
確かに俺はリュートのお相手の情報が欲しくて、アーヴィガにも協力を仰いだ。
もし不貞相手がリュートの子を孕んでいた場合、それが後々に新たな問題になる可能性があるからだ。だから身元ははっきりしておきたいと探し出したのがきっかけだった。
しかし、まさか貴族が相手でありながらルーデル家の捜査に引っかからずにいたなんて信じられなかった。
「一応言っておくけど、ルーデル家の方々が無能というわけではないよ。こっちはちょっと強引に話を聞きだしたに過ぎない」
「強引に・・・?」
「うちの影に聞き取りをさせたら、リュートさん達が利用したという連れ込み宿の受付の態度が少しおかしかったというのでね・・・少し手荒に話を聞きだしたらしいんだ。そうしたらホルム嬢の名前が出てきた」
「無茶しやがって」
「そうして少しばかり捜査方法を強引にしていったら、あの当時あの場にいたとされる人間の全員に、徹底した箝口令が敷かれていたことがわかった」
そう語るアーヴィガの表情は穏やかなままだ。虫も殺さないような顔をして、裏では目的のために平気で強引な手段に出る。それがこのアーヴィガという男だった。
どのようにして聞き出したかは聞かないでおこう。
「なんだそりゃ。それじゃあリュートが不貞を働いた現場そのものが、大がかりな仕掛けだったってことか?」
「そうだね。ちなみにホルム嬢はどんな女性かというと、見た目や体形、声質なんかもばっちりリュートさん好みの人だったらしいよ」
「おいおい・・・」
それが本当だとしたら、本当に大がかりな罠じゃないか。
リュートをそこまでして罠にかける必要は?いや、今はそれはいいか。
「そのホルム嬢に話は聞けねぇのか?」
そこまでわかっているなら、とりあえず本人に話を聞くのがてっとり早い。
「残念ながら無理だね。不貞が発覚してリュートさんが認めたその翌日に、郊外で焼死体で発見されてる」
この地は隣国からの侵略や、領地内にある魔物で溢れる未開の大森林『黒の森』から出没する魔物の撃退など、何代にも続く戦乱が続いているが、常に危険に身を置き、領地のため、国のために戦い治を維持するこの辺境伯家率いる通称『黒の騎士団』は、間違いなくランドール王国最強の武力を持つと言われていた。
その最強と言われる辺境伯家の長男としてリュートは産まれた。
父はルードを守護する武で名を轟かせた辺境伯トウシ・ルーデル。母は王都の名門公爵家の娘で、その並外れた美貌は国外にまで知られているエリナ・フェンドート。
リュートは母エリナと同じ美しい金髪と綺麗な青い瞳を受け継いだ。
母エリナはまさに自分の生き写しであると痛くリュートを溺愛し、乳母には任せず自ら子育てに励んだ。
その結果リュートは見た目だけではなく、性格までトウシではなくエリナに似るようになる。
幼少から武には関心を示さず、書物を読んだりすることのほうが多く、騎士団のこともどこか恐れて近寄ることさえなかった。その様にトウシは後継ぎとして問題があると肩を落としたが、エリナは無理に辺境伯家を継ぐことはないと考えていた。
リュートが生まれて3年後に次男であるショウが誕生する。
ショウは父トウシと同じ、黒髪に黒の瞳を持って産まれた。
母エリナは自分とはかけ離れた容姿を持つショウに対しリュートと同じだけの愛情を注ぐことはできず、育児も乳母に任せっきりであった。そのせいなのか素質なのか、ショウはリュートとは真逆に育った。
幼少から極めて活発で外によく出て遊び、生傷を付けて帰ってくる。騎士団のところにも物怖じせずに遊びに行き、同い年の友人はおろか母エリナや兄リュートよりも騎士と接している時間のほうが多いくらいであった。
騎士団といっても辺境で戦に明け暮れる騎士で、出自も必ずしも貴族ではない、そんな彼らと一緒にいることによって、言葉遣いも荒く育った。
そんなショウのことをエリナはどこか疎むようになり、代わりにその分の愛情はリュートに注がれることになった。
ショウが10歳になる頃には、彼はこっそり騎士団に交じって戦場にも出るようになっていた。何度見つけて連れ帰り、叱責してもやめなかった。
そして11歳になる頃にはついに(こっそり参加の)初陣で隣国の侵略軍の大将首を取る。生まれ持っての武人だと騎士団はショウを称えた。
類稀なる武の才能と気質。将来黒の騎士団を統べるに相応しいと誰もが言った。
これを受け、トウシは将来家督をショウに譲ることを決めた。
リュートは長男だが、彼自身が爵位を継ぐことを望んでいないし、何より素質がない。それに彼には彼でやってもらいたいことがある。王都には各辺境伯家から人質として親族を誰かしら別邸に住まわせなければならない習わしがある。今やトウシの両親・・・リュート達の祖父母が暮らしているが、将来リュートにはその王都の別邸を仕切ってもらおうと考えた。
リュートは社交界でも問題なく立ち回れるし、見た目や物腰のせいか令嬢を中心に人気もある。ただ人質として王都に住まわせるだけではなくて、リュートに働いてもらいルーデル家と中央とのパイプ作りに励んでもらえるだろうと期待していた。
リュートは辺境伯を継いで騎士団の統率などしたくはないし、エリナも都会暮らしが恋しくてリュートとともに王都に移住することを望んでいたので、まさに誰もが望む形の完璧といえる采配となった。
領地でも王都でもそれぞれに有望な息子がいるので将来は安泰だ。
そう思いながら父トウシは早々に病でこの世を去った。
----------
「ーーという話だったのサ」
そこまで言い終えて、俺は手元にあった紅茶を飲み干した。
ここは王都にある知り合いの屋敷の庭園。そこで二人きりで開かれた茶会で、俺は昔話と愚痴をこぼしていた。
皿の上に広げられた焼き菓子に手を伸ばそうとしていると「失礼します」と早くも近くにいたメイドがおかわりをついでくれる。
これは王城で起きる「冤罪」の2か月前。
「それなりにwinwinな形で納まるはずだったんだけどなぁ。ぜーんぶパァだよ」
そう言って大袈裟に肩を竦めてみせた。
「なるほど。大変だね」
対面に座る男は苦笑いしながら同情の言葉を口にする。
彼は今いるこの屋敷の主であり、俺の幼馴染でもあるアーヴィガ・ハルトマン辺境伯。北方にあるグラーデ地方を治めている。俺より一つ年上で、既に成人しているために今年爵位を継いだばかりだ。
今は立場は俺より上だが、なじみということで今まで通りに接してくれと言われている。来年俺が辺境伯になるまで相応に接するのも疲れるなぁと思っていたから正直助かった。
そんなわけでアーヴィガはすっかり多忙になり、会えるのは年に数回。久々に会って最近の鬱憤が溜まっていたのか、俺は今まであまり話したこともないような家庭環境のことも含めて愚痴を放ってしまった。
だが、そんな俺の話もアーヴィガは黙って聞いてくれる。いい奴だ。
「不貞による婚約破棄。それから社交界からの孤立か。意外というか、前までのリュートさんのイメージからは想像もつかなかったな」
アーヴィガが言うには社交界において俺の兄リュートの立場は決して悪くなかったらしい。交友も広く、父上が。待していた通り、順調に王都でのパイプ作りは進められていただろうとのこと。
しかし不貞の件により、リュートの評判は一気に地に落ちたようだ。
愛人を囲うくらいなら貴族だってままあることだ。第二夫人なんてのを持っている高貴族だってそこそこいる。
だが婚約中に別の女に手を出し、結果元婚約者がいる公爵家を敵に回したとなると人は離れてしまうだろう。誰だって公爵家に睨まれたくはないからな。
「・・・で、今日はここに来る前に行って来たんだよね?ルフト公爵家に。どうだったんだい?」
「ん~、それなんだがな・・・」
俺はハルトマン家別邸に来る前、母上とルフト公爵家に出向き公爵に謝罪をしてきた。
賠償金を即座に納めたこともあったせいか、俺達にもそれほど怒りはぶつけてこずに、リュートに対しての家からの処罰の内容を聞いてきた以外には特に向こうからは言われることもなかった。
びっくりするほどあっさりと謝罪が受け入れられた。てっきりこちらの立場が弱いことを盾にぐちぐちと嫌味でも言われるかと思ったのだが、何もなさ過ぎて拍子抜けしたくらいだ。
元から彼方はリュートにはあまりいい印象が無かったのか、それとも今回のことですっかり嫌悪してしまい、ルーデル家そのものと関わりたくないのか、それはわからない。
「公爵家を訪ねてから出てくるまで30分もかからなかったぜ。まさかまさかだよ」
そのまま母上はルーデル家別邸に行き、俺は元々約束していたので予定よりかなり早めだが、ここハルトマン家別邸に来た。
「ふむ、気になるね・・・」
アーヴィガは考え込む仕草をする。俺は2杯目の紅茶を飲み干した。すぐにまたおかわりをメイドが煎れてくれる。
「まぁ、やはりこれは仕組まれたんじゃないかなと僕は思う」
あっけらかんとアーヴィガは言った。
「おいおい滅多なこと言うなよ」
俺はそう言うが、それも可能性の一つとして考えてはいた。
誰が何を目的として?それはわからないが、それにしても愚兄がただ行きずりの女と不貞をしただけの話だとは思えなかったのだ。
「けどね、リュートさんが不貞した当日に、彼と一緒に目撃されていた町娘の素性がわかった。まぁ、正確には『その可能性がかなり高い』程度だけど」
「!なんだって!?誰なんだ!」
思わずテーブルに身を乗り出して聞いてしまう。そのときの拍子に紅茶がこぼれてしまった。
すかさずメイドが新しい器で紅茶を煎れてくれた。すみません。
「こっちで君に頼まれて調べてみた結果、リュートさんの相手をしたのは、ルフト公爵家の派閥に与しているホルム子爵の娘のダリアさんではないかとされている」
「・・・は?」
アーヴィガの言葉に、俺は言葉を失った。
確かに俺はリュートのお相手の情報が欲しくて、アーヴィガにも協力を仰いだ。
もし不貞相手がリュートの子を孕んでいた場合、それが後々に新たな問題になる可能性があるからだ。だから身元ははっきりしておきたいと探し出したのがきっかけだった。
しかし、まさか貴族が相手でありながらルーデル家の捜査に引っかからずにいたなんて信じられなかった。
「一応言っておくけど、ルーデル家の方々が無能というわけではないよ。こっちはちょっと強引に話を聞きだしたに過ぎない」
「強引に・・・?」
「うちの影に聞き取りをさせたら、リュートさん達が利用したという連れ込み宿の受付の態度が少しおかしかったというのでね・・・少し手荒に話を聞きだしたらしいんだ。そうしたらホルム嬢の名前が出てきた」
「無茶しやがって」
「そうして少しばかり捜査方法を強引にしていったら、あの当時あの場にいたとされる人間の全員に、徹底した箝口令が敷かれていたことがわかった」
そう語るアーヴィガの表情は穏やかなままだ。虫も殺さないような顔をして、裏では目的のために平気で強引な手段に出る。それがこのアーヴィガという男だった。
どのようにして聞き出したかは聞かないでおこう。
「なんだそりゃ。それじゃあリュートが不貞を働いた現場そのものが、大がかりな仕掛けだったってことか?」
「そうだね。ちなみにホルム嬢はどんな女性かというと、見た目や体形、声質なんかもばっちりリュートさん好みの人だったらしいよ」
「おいおい・・・」
それが本当だとしたら、本当に大がかりな罠じゃないか。
リュートをそこまでして罠にかける必要は?いや、今はそれはいいか。
「そのホルム嬢に話は聞けねぇのか?」
そこまでわかっているなら、とりあえず本人に話を聞くのがてっとり早い。
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