聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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終焉

醜き本性

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大雑把に死体を見て、ハルトはこれは戦によるものだと判断した。
ユーライ国軍からの防衛で命を落とした者達を運んできたのかもしれないと。だが、どうしてここに?
そう考えていたハルトはふと気が付いた。


「これは・・・」


窓から外を見ると、これまでに神都では見たこともなかった大雨が降り注いでいる。
いや、大雨というレベルではない。まるで嵐だ。まるで空が怒り狂っているかのような大雨と風、そして稲妻が神都そのものを殴りつけているかのようであった。


「なっ・・・」


そして、よくみると見ると法王城内にも浸水が始まっている。
法王城は神の加護が最も強い場所・・・
いかなる自然災害も、この城には縁が無いはずだった。事実これまで城が建設されてから数百年も何も起きていないという。少なくともハルトはそう教わっていた。


「あぁ、そうか・・・」


神・・・と思われていたラビスが死んだことにより、城を守る力が無くなったからかとハルトはすぐに理由に思い当たった。加護を失ったこの城は、いや、この国の人間は、これから先これまで縁がなかったあらゆる害に直面することになるだろう。
果たしてどれだけの人が耐えられるだろう?どれだけの人が正常なままでいられるだろう?

この異常事態の中で、ハルトは驚くほど冷静にそんなことを考えていた。


(外がこの有様なので、急いで一旦城の中へ遺体を運び入れたということか・・・)



ラビス教では戦死者は手厚く葬られることになっている。荒天の外に放置することは許されないと、従来なら清潔にするべき法王城に止む無く運び入れたということかとハルトは死体が散乱していることに納得した。
普通に考えれば無理筋な考えだが、この時のハルトは冷静なようでいて正気を失っているので、そんなことにも気づかない。



「ここがこうなっていると、なると・・・」


上の階の喧騒は、下層が水浸しになっていることの混乱だろうとハルトは思いつく。
これからどうするのか対策を取ろうとしているのだろう・・・どうせ考え付いた対策いくらかは無駄になるだろうが、元より人間はこうした理不尽な自然災害と戦い続けてきた。これまで加護の元でそれをする必要が無かっただけなのだ。

最初は混乱するだろうが、いずれはこれを乗り越えて・・・


どこか達観してそう考えていたハルトだったが、上層へ上がったハルトの目に飛び込んできたのは、彼が予想もしていなかった光景だった。
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