196 / 203
終焉
放心したハルト
しおりを挟む
サンクレアが阿鼻叫喚の地獄になっているその頃、カイに深手を負わされ、満足に動けなくなっていたはずのハルトがよろよろと弱弱しい足取りで法王城を歩いていた。
並の人間なら致命傷でとうに死んでいただろうが、皮肉にも偽女神ラビスによって力を与えられたハルトは死ぬことなく生きていることが出来た。
「ははっ・・・」
自分の体の異変に気付いたハルトは、自傷気味に笑った。
どうあっても助からない深手。止まらない出血。
聖騎士として戦場を駆け巡り、様々な死を見て来たハルトは「これは助からない」と自身の死を確信していた。
無念といえば無念だが、結局自分の信じた偽物の正義がカイの未来を望む強い執念に負けた・・・それだけのことだと諦めの境地に達していた。
・・・はずだった。
だが、ハルトの心臓は止まることはなく、むしろ傷口が再生していくのを感じた。
失われたはずの血が体内で作られているのがわかる。ありえない。こんなのは人間じゃない。
自分の体はここまでおかしくなったのかと思うと、乾いた笑いが止まらなかった。
敬虔なラビス教信者として、教えを守るための戦う騎士として命を捧げて戦ってきた自分が、神敵として滅した魔物と同等か、それ以上に悍ましい体になってしまったのだ。
そしてその体故に命が救われた。こんな皮肉な話はないと、もう笑うしかなかった。
「どうしたものかな・・・ははっ・・・」
死は免れるようだが、生きていて一体何になるのか。
最愛の恋人は失われ、体は化け物と化している。
信じるべき神は偽物で、既に滅んでしまっている。
もう生きている意味すらハルトにはなかった。
そんなハルトは当ても無くフラフラとただ歩いている。そういうしていると、いつの間にかハルトはサンクレアの心臓へと続く隠し通路を抜け、がらんどうとしていて人一人いない法王城内をどこへともなく歩いていた。
そうしていると、やがて上の階が騒がしいことに気が付いた。
「・・・え?」
放心していたハルトの意識がそこで呼び戻されることになった。
自分の今いる階に人の気配がない・・・これが異様なことであることに、このときになって気が付く。
そしてそこで初めて視界に入るのは、何人、何十もの騎士や神官など、法王城に仕える人間達の死体だった。
並の人間なら致命傷でとうに死んでいただろうが、皮肉にも偽女神ラビスによって力を与えられたハルトは死ぬことなく生きていることが出来た。
「ははっ・・・」
自分の体の異変に気付いたハルトは、自傷気味に笑った。
どうあっても助からない深手。止まらない出血。
聖騎士として戦場を駆け巡り、様々な死を見て来たハルトは「これは助からない」と自身の死を確信していた。
無念といえば無念だが、結局自分の信じた偽物の正義がカイの未来を望む強い執念に負けた・・・それだけのことだと諦めの境地に達していた。
・・・はずだった。
だが、ハルトの心臓は止まることはなく、むしろ傷口が再生していくのを感じた。
失われたはずの血が体内で作られているのがわかる。ありえない。こんなのは人間じゃない。
自分の体はここまでおかしくなったのかと思うと、乾いた笑いが止まらなかった。
敬虔なラビス教信者として、教えを守るための戦う騎士として命を捧げて戦ってきた自分が、神敵として滅した魔物と同等か、それ以上に悍ましい体になってしまったのだ。
そしてその体故に命が救われた。こんな皮肉な話はないと、もう笑うしかなかった。
「どうしたものかな・・・ははっ・・・」
死は免れるようだが、生きていて一体何になるのか。
最愛の恋人は失われ、体は化け物と化している。
信じるべき神は偽物で、既に滅んでしまっている。
もう生きている意味すらハルトにはなかった。
そんなハルトは当ても無くフラフラとただ歩いている。そういうしていると、いつの間にかハルトはサンクレアの心臓へと続く隠し通路を抜け、がらんどうとしていて人一人いない法王城内をどこへともなく歩いていた。
そうしていると、やがて上の階が騒がしいことに気が付いた。
「・・・え?」
放心していたハルトの意識がそこで呼び戻されることになった。
自分の今いる階に人の気配がない・・・これが異様なことであることに、このときになって気が付く。
そしてそこで初めて視界に入るのは、何人、何十もの騎士や神官など、法王城に仕える人間達の死体だった。
1
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
因果応報以上の罰を
下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。
どこを取っても救いのない話。
ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる