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終焉
カイと法王城の別れ
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法王ランスがいなくなったという報は、法王城全体を駆け巡って大混乱を巻き起こした。
何しろ国の象徴であり、神の次に尊い存在がいなくなったのである。
これまでにサンクレアでは聖女を含め様々な要人が暗殺される事態が起きているだけに、法王も侵入者の手にかかったのではないかという憶測が生まれ、そして法王城を阿鼻叫喚の地獄絵図に変えていた。
「ここにいたら我々も殺される!」
「待て、外に出ても殺されるぞ!敵国に囲まれているのを忘れたか!?」
「外でも中でも同じことだ!もうこの国は終わりだ!いや、この世はもう・・・」
城にいても侵入者に殺される、外に出ても敵国の軍隊に殺される。
いや、外界を捨て、法王城で結界を張って閉じこもっていたのだ。もしかしたら、怒りを買った群衆に殺されてしまう可能性だってあった。
法王城にいた者達にあるのは、ただただ深い絶望。
一体どうしたら良いのか、導く者すらおらず、思いつく案も無く、右往左往して嘆いている。
そんな法王城内を悠然とカイは歩いていた。
ローブを纏っているだけの簡単な偽装だが、混乱の極致に達しているサンクレアの騎士達は気付かない。
混乱の原因であるカイが目の前にいるのに、騎士達は易々と城を出ていくカイを見逃してしまっていた。
一人くらいは気付きそうなものなのに、結局ついに誰もカイのことに気付くことはなく、カイは苦笑いを浮かべていた。
世界で最も安全な場所・・・かつてサンクレアの法王城はそう言われ世界中からその敷地内に居住したいと金持ちや貴族が詰めかけたことがあったが、実際はこうして曲者一人見つけることも出来ないのだから、いかにこの法王城に幻想を抱いていたのかとカイは可笑しくなった。
「じゃあな、世話になったなサンクレア」
かつて自分が仕えていた神国サンクレアを去ることに、ほんの少しだけ感慨深いものを感じて呟くカイ。
とはいえ、この場所はかつて彼が仕えていた頃の面影など残っていなかった。
厳かな雰囲気も、鉄壁の忠誠心と精神を持つ騎士達も、神の名の元に示される正義も最早ここには残っていない。
カイは法王城を出ると、もう振り返って城を見上げた。
これが彼が見た最後の神国サンクレアの法王城の姿であった。
何しろ国の象徴であり、神の次に尊い存在がいなくなったのである。
これまでにサンクレアでは聖女を含め様々な要人が暗殺される事態が起きているだけに、法王も侵入者の手にかかったのではないかという憶測が生まれ、そして法王城を阿鼻叫喚の地獄絵図に変えていた。
「ここにいたら我々も殺される!」
「待て、外に出ても殺されるぞ!敵国に囲まれているのを忘れたか!?」
「外でも中でも同じことだ!もうこの国は終わりだ!いや、この世はもう・・・」
城にいても侵入者に殺される、外に出ても敵国の軍隊に殺される。
いや、外界を捨て、法王城で結界を張って閉じこもっていたのだ。もしかしたら、怒りを買った群衆に殺されてしまう可能性だってあった。
法王城にいた者達にあるのは、ただただ深い絶望。
一体どうしたら良いのか、導く者すらおらず、思いつく案も無く、右往左往して嘆いている。
そんな法王城内を悠然とカイは歩いていた。
ローブを纏っているだけの簡単な偽装だが、混乱の極致に達しているサンクレアの騎士達は気付かない。
混乱の原因であるカイが目の前にいるのに、騎士達は易々と城を出ていくカイを見逃してしまっていた。
一人くらいは気付きそうなものなのに、結局ついに誰もカイのことに気付くことはなく、カイは苦笑いを浮かべていた。
世界で最も安全な場所・・・かつてサンクレアの法王城はそう言われ世界中からその敷地内に居住したいと金持ちや貴族が詰めかけたことがあったが、実際はこうして曲者一人見つけることも出来ないのだから、いかにこの法王城に幻想を抱いていたのかとカイは可笑しくなった。
「じゃあな、世話になったなサンクレア」
かつて自分が仕えていた神国サンクレアを去ることに、ほんの少しだけ感慨深いものを感じて呟くカイ。
とはいえ、この場所はかつて彼が仕えていた頃の面影など残っていなかった。
厳かな雰囲気も、鉄壁の忠誠心と精神を持つ騎士達も、神の名の元に示される正義も最早ここには残っていない。
カイは法王城を出ると、もう振り返って城を見上げた。
これが彼が見た最後の神国サンクレアの法王城の姿であった。
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