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終焉
崩壊、始め
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神国サンクレアの象徴である法王城は揺れに揺れていた。
突如として法王城を囲っていた結界が消滅したからである。
聖騎士長ミカエルの死の次に降りかかった非常事態に、もはや誰もがヒステリックになっていた。
「一体どうしたんだ!」
「魔法陣に異常はありません!一体どうして結界が消滅したのか・・・」
「原因は後でもいい!早く起動し直せ!」
「それが、もう既にトライしているのですが、全く結界が発動する兆しがないのです」
「なんだと!?一体どうして・・・」
現場は多いに混乱していた。
結界があってこそ法王城は外敵から守られる。それが急に無くなり、丸裸になれば気が気ではないだろう。
だが、結界がもう起動することはない。
法王城を囲う強固な結界は、サンクレアの心臓にいたラビスの力を元にしたものだったからだ。
どれだけ結界発動の魔法陣を描いたところで、その魔力の素が無ければ起動することはない。
それを知らぬ魔術師達は突如訪れたアクシデントに右往左往した。
「くそっ・・・!どうしてこんなことに・・・!」
魔術師達の指揮を執っていた、聖女マーサの父である大司教は法王ランスの元へ急ぎ足で向かっていた。
未曾有の危機にどうあっても現場だけでは対処できず、法王の指揮を仰ぐ必要があったからだ。
これは大司教にとって屈辱的なことだった。
自身のラビス教での立場を確立するために、ハルトに法王城に厳重保管されているラグナロクを極秘で貸し出してまでこの城の混乱を自分の手で沈静化しようとしていたからだ。
だが現実はハルトが侵入者であるカイを仕留めたという話はまだ上がらず、それどころか法王城の結界すら消滅してしまった。
ここまでの自体となると大司教の手ではどうにもならない。というか、誰の手にも負えない。頼りになると思われたミカエルさえ殺されてしまったのだ。
せっかくの再起のチャンスを失ってしまったことに、大司教は憤怒しながらも背に腹は代えられないと法王の元へ向かう。
法王がこの異常事態を収めてくれるかは疑問だが、それでも報告だけ上げておかねばならない。
混乱の中にあってもかろうじて残っていた理性が大司教を動かしていた。
・・・だが・・・
「大司教様!私です!今よろしいでしょうか?」
そう言って慌ただしく部屋の扉をノックする大司教だが、法王からの返事はない。
「失礼します!」
いてもたってもいられず、大司教は部屋の扉を開いた。
「・・・え?」
だが、そこには法王はいなかった。
突如として法王城を囲っていた結界が消滅したからである。
聖騎士長ミカエルの死の次に降りかかった非常事態に、もはや誰もがヒステリックになっていた。
「一体どうしたんだ!」
「魔法陣に異常はありません!一体どうして結界が消滅したのか・・・」
「原因は後でもいい!早く起動し直せ!」
「それが、もう既にトライしているのですが、全く結界が発動する兆しがないのです」
「なんだと!?一体どうして・・・」
現場は多いに混乱していた。
結界があってこそ法王城は外敵から守られる。それが急に無くなり、丸裸になれば気が気ではないだろう。
だが、結界がもう起動することはない。
法王城を囲う強固な結界は、サンクレアの心臓にいたラビスの力を元にしたものだったからだ。
どれだけ結界発動の魔法陣を描いたところで、その魔力の素が無ければ起動することはない。
それを知らぬ魔術師達は突如訪れたアクシデントに右往左往した。
「くそっ・・・!どうしてこんなことに・・・!」
魔術師達の指揮を執っていた、聖女マーサの父である大司教は法王ランスの元へ急ぎ足で向かっていた。
未曾有の危機にどうあっても現場だけでは対処できず、法王の指揮を仰ぐ必要があったからだ。
これは大司教にとって屈辱的なことだった。
自身のラビス教での立場を確立するために、ハルトに法王城に厳重保管されているラグナロクを極秘で貸し出してまでこの城の混乱を自分の手で沈静化しようとしていたからだ。
だが現実はハルトが侵入者であるカイを仕留めたという話はまだ上がらず、それどころか法王城の結界すら消滅してしまった。
ここまでの自体となると大司教の手ではどうにもならない。というか、誰の手にも負えない。頼りになると思われたミカエルさえ殺されてしまったのだ。
せっかくの再起のチャンスを失ってしまったことに、大司教は憤怒しながらも背に腹は代えられないと法王の元へ向かう。
法王がこの異常事態を収めてくれるかは疑問だが、それでも報告だけ上げておかねばならない。
混乱の中にあってもかろうじて残っていた理性が大司教を動かしていた。
・・・だが・・・
「大司教様!私です!今よろしいでしょうか?」
そう言って慌ただしく部屋の扉をノックする大司教だが、法王からの返事はない。
「失礼します!」
いてもたってもいられず、大司教は部屋の扉を開いた。
「・・・え?」
だが、そこには法王はいなかった。
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