聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

文字の大きさ
上 下
185 / 203
終焉

偽りの神

しおりを挟む
カイの指摘の通り、女神ラビスは神ではなくただの堕天使。長きに渡り、人間に対して自分は神だと偽って信仰を集めてきた。

心の力というのは馬鹿に出来たものではない。
ラビスは堕天使であって神ではないが、人々が神だと信じ、想いが彼女に集まると、やがてはそれは強大な力となる。ラビスは堕天使でありながら、長い時間をかけて信奉を得ることで次第に力をつけていった。

並の堕天使以上の力を得たラビスは、やがて神の力のそれとは違うが、それなりに人を騙せる程度の奇跡紛いの力を見せつけることくらいは出来るようになった。
力を見せつけることで信心を集めるようにしたところ、ラビスの名は爆発的に広まることになり、一気に信徒が増えた。
特にそのようなことをした事実などないのに、人々は勝手にラビスの偉業はあれこれ色を付けられて広まっていく。

そうしていると、やがて長い時間をかけてラビスを崇める者達で国家が作られるようになった。
これが神国サンクレアの誕生である。
力を持ったラビスにかかれば、神都サンクレアには悪天候が起きないなどとの加護らしいものを与えることが出来た。こうして人々はサンクレアに集まり、信奉することによってラビスは更なる力を得ることになる。


やがてラビスは考えた。
自分はあくまで堕天使であるが、このまま力をつければゆくゆくは本物の神に等しき存在になれるのではないか、と。
人間個人の力は大したことはないが、彼らが群れとなって一つの対象に対し信仰を捧げたのなら、それによって得られる力は無限大の可能性を秘めていることに気付いたのだ。
つまり、人の信仰さえ得られ続けていれば何でも出来るようになる・・・。
ラビスはそう確信した。


そして自分を信奉する人間に命じたのは、自分が忌み嫌う魔族の殲滅だ。
神々は人間と魔族の両方を地上に住まわせていた。だが、ラビスは魔族は地上に必要ないと思っていた。
理由はただ単に魔族が醜いから嫌い・・・それだけだ。

だがラビスに命じられた人間は、その真意もわからず聖戦と言って魔族との戦争を開始した。
長きに渡り多大な犠牲が出た無益な戦いだったが、それでも人間は神だと信じていたラビスのために命を賭けて魔族を殺し続ける。

そしてついに人間は魔族を殲滅するという取返しのつかない愚行を成し遂げてしまった。
全てはラビスの自己満足のためなどと知ることもなく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

処理中です...