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終焉
無意味な献身
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「・・・あぁ・・・っ!?」
ハルトは一瞬、自分の体に何が起こっているのか理解できなかった。
女神ラビスから絶対的な力を与えてもらったことで、カイに対して優位に立ち、今度こそ自分の恋人の仇を、この国の敵を、何よりラビスに仇なす者を討つことが出来ると確信していた。
だが、実際はハルトの体は、カイが攻撃するフリをして仕掛けていた魔法の符により発動した爆炎に巻き込まれ、片足と片腕を吹き飛ばし、体の表面を七割方焼いてしまっていた。
かつてカイとハルトの上司であるアドルも同じ手をくらっていた。その話を聞いていたはずなのに、同じことを仕掛けられる可能性について考えることが出来なかったハルトの迂闊さが招いた敗北だった。
「バカな・・・僕が・・・負けた・・・?」
そうハルトの敗北だった。
爆炎の符により、ハルトの体は到底戦闘など出来ないほどにダメージを受けていた。
そしてカイはハルトと同じような轍を踏まない。
「どうだ?頼りの騎士様はもう壊れちまったぜ」
カイはハルトが戦闘不能になったと見るや、ラビスの前に立ちはだかり、ハルトにこれ以上手出しが出来ないようにした。再び回復され、ラビスの騎士として復活されないようにするためだ。
「・・・」
ラビスは何も言葉を発しなかったが、ちろりと倒れ伏したハルトに視線を投げかける。
その目は冷え切ったもので、実につまらないものを見ているかのようなそれだった。
「ラ・・・ラビス様・・・」
不甲斐なさと申し訳なさで顔を歪ませるハルトは、どうにかして体を起こそうとするが、片手足を吹き飛ばされた上に出血の激しい今の体では、1ミリたりとて動かせる気がしなかった。
それどころかこのままなら遠からず死ぬだろう。
「所詮、人間でしかないか」
寒気がするほど感情がなく、見下したようにラビスが言った。
視線を向けられ、そう言葉をかけられたハルトは驚愕で目を開く。
「私自らが力を貸したというのに、何と言う無様。これならば私自身でやったほうが断然マシだったというもの」
失望したようにそう言うラビスに、ハルトは言葉も出なかった。
自分も頑張りも、今こうして死に伏せようとしてまで貫いた献身も、まるで意味のないように言われたのだから絶望で頭が真っ白になるのも仕方が無かった。
異形になっても神のためならば頑張れる。
死ぬことになっても神のためならば納得できる。
だがその信奉すべき神に、自身の行いが無意味なものであると言われたハルトの絶望は、深く深く彼の心を抉った。
しかし、ハルトの心はこれから更に深く抉られることになるのであった。
ハルトは一瞬、自分の体に何が起こっているのか理解できなかった。
女神ラビスから絶対的な力を与えてもらったことで、カイに対して優位に立ち、今度こそ自分の恋人の仇を、この国の敵を、何よりラビスに仇なす者を討つことが出来ると確信していた。
だが、実際はハルトの体は、カイが攻撃するフリをして仕掛けていた魔法の符により発動した爆炎に巻き込まれ、片足と片腕を吹き飛ばし、体の表面を七割方焼いてしまっていた。
かつてカイとハルトの上司であるアドルも同じ手をくらっていた。その話を聞いていたはずなのに、同じことを仕掛けられる可能性について考えることが出来なかったハルトの迂闊さが招いた敗北だった。
「バカな・・・僕が・・・負けた・・・?」
そうハルトの敗北だった。
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そしてカイはハルトと同じような轍を踏まない。
「どうだ?頼りの騎士様はもう壊れちまったぜ」
カイはハルトが戦闘不能になったと見るや、ラビスの前に立ちはだかり、ハルトにこれ以上手出しが出来ないようにした。再び回復され、ラビスの騎士として復活されないようにするためだ。
「・・・」
ラビスは何も言葉を発しなかったが、ちろりと倒れ伏したハルトに視線を投げかける。
その目は冷え切ったもので、実につまらないものを見ているかのようなそれだった。
「ラ・・・ラビス様・・・」
不甲斐なさと申し訳なさで顔を歪ませるハルトは、どうにかして体を起こそうとするが、片手足を吹き飛ばされた上に出血の激しい今の体では、1ミリたりとて動かせる気がしなかった。
それどころかこのままなら遠からず死ぬだろう。
「所詮、人間でしかないか」
寒気がするほど感情がなく、見下したようにラビスが言った。
視線を向けられ、そう言葉をかけられたハルトは驚愕で目を開く。
「私自らが力を貸したというのに、何と言う無様。これならば私自身でやったほうが断然マシだったというもの」
失望したようにそう言うラビスに、ハルトは言葉も出なかった。
自分も頑張りも、今こうして死に伏せようとしてまで貫いた献身も、まるで意味のないように言われたのだから絶望で頭が真っ白になるのも仕方が無かった。
異形になっても神のためならば頑張れる。
死ぬことになっても神のためならば納得できる。
だがその信奉すべき神に、自身の行いが無意味なものであると言われたハルトの絶望は、深く深く彼の心を抉った。
しかし、ハルトの心はこれから更に深く抉られることになるのであった。
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