179 / 203
終焉
傲慢、故の敗北
しおりを挟む
「っ!!」
カイは異形となったハルトと相対して気付いたことがあった。
ラビスから力を分けてもらったことで、身体能力が向上している。踏み込みは早くなり、剣(腕?)速も以前とは比較にならぬほど早い。
実際カイも受けきれず、何度かハルトの腕の切っ先が肌を掠めることがあった。
「どうしてカイ!?僕に絶望を味わわせるんじゃなかったのか?僕に後悔させるんじゃなかったのか?見せつけてやるんじゃなかったのか?全部逆になっているじゃないか!こんな喜劇があるかいっ!?」
以前のハルトなら考えられないほど、ハルトは戦闘中だというのに饒舌で気が上がっていた。
元々身体能力が高く、剣の才能に溢れていたハルトは異形となった体にもどんどんと馴染みを見せている。
「ちっ!」
何度か打ち合うたびに、ハルトの攻撃を捌き切れずに攻撃が掠めたり強引に距離を取らなくてはいけなくなることが増え、カイは舌打ちをする。
カイは相手を揺さぶり、場の主導権を取って戦うやり方が得意だ。だが、今の場はハルトが主導権を握りつつある。
時間がもう少し経過し、ハルトが完全に体に慣れれば、それはより明確になるだろう。
すぐにでも、勝負をつけねばならなかった。
「ふっ!」
カイは懐からある物を取り出し、ハルトに向けて投げつけた。
「む!?」
ハルトはそれを剣となった左手で弾く。
見るとそれは先ほどカイとの戦いで折られたラグナロクの破片であった。万が一の考えてカイが忍ばせておいたのだ。
小さな破片だが、元は強力な剣のラグナロクである。頭部に命中すれば危険な状態になりかねなかった。
目前とまで迫ったそれに反応出来たのは、ハルトの身体能力が向上しているからだ。
この事実がハルトを更に愉悦させる。
「はぁぁぁっ!!」
破片に気を取られた僅かな間に、カイが目前とまで迫り剣を振るった。
強力な振り落とし。
それをまともに受けたハルトの左腕は、あっさりとカイの聖剣に負け斬り裂かれてしまう。
しかし、咄嗟に出した右腕がハルトの体に入り込もうとしていたカイの剣をギリギリで止めていた。
「くっ!」
カイが顔を歪ませ、ハルトは口角を上げる。
「左手を斬れたまでは良かったが、残念だったね。カイ」
ハルトの斬られた左腕は、すぐに再生された。
ザシュッ
危険を察知し、すぐに後ろに下がるカイだが、彼の左足を切っ先が掠める。
「ぐっ!」
そこそこの出血があり、床を血で染める。
左足を完全に斬り落とされるまでは無かったが、カイの動きがかなり制限されるようになってしまっていた。
ハルトは絶対的有利になったこの状況で、完全にカイを見下し、勝利を確信する。
そこに油断があった。
自分に身に仕掛けられた罠に気が付かなかった。
「っ!?」
カイがニヤリと笑った次の瞬間、ハルトの体は炎に包まれていた。
これまで何度となく神都で使ってきた、爆炎の符によるものだった。
カイの手を何度も見ておきながら、ハルトは最後の最後でそれを使用してくる可能性を見逃し、その罠にかかることになった。ハルトに似つかわしくない傲慢が招いた敗北である。
カイは異形となったハルトと相対して気付いたことがあった。
ラビスから力を分けてもらったことで、身体能力が向上している。踏み込みは早くなり、剣(腕?)速も以前とは比較にならぬほど早い。
実際カイも受けきれず、何度かハルトの腕の切っ先が肌を掠めることがあった。
「どうしてカイ!?僕に絶望を味わわせるんじゃなかったのか?僕に後悔させるんじゃなかったのか?見せつけてやるんじゃなかったのか?全部逆になっているじゃないか!こんな喜劇があるかいっ!?」
以前のハルトなら考えられないほど、ハルトは戦闘中だというのに饒舌で気が上がっていた。
元々身体能力が高く、剣の才能に溢れていたハルトは異形となった体にもどんどんと馴染みを見せている。
「ちっ!」
何度か打ち合うたびに、ハルトの攻撃を捌き切れずに攻撃が掠めたり強引に距離を取らなくてはいけなくなることが増え、カイは舌打ちをする。
カイは相手を揺さぶり、場の主導権を取って戦うやり方が得意だ。だが、今の場はハルトが主導権を握りつつある。
時間がもう少し経過し、ハルトが完全に体に慣れれば、それはより明確になるだろう。
すぐにでも、勝負をつけねばならなかった。
「ふっ!」
カイは懐からある物を取り出し、ハルトに向けて投げつけた。
「む!?」
ハルトはそれを剣となった左手で弾く。
見るとそれは先ほどカイとの戦いで折られたラグナロクの破片であった。万が一の考えてカイが忍ばせておいたのだ。
小さな破片だが、元は強力な剣のラグナロクである。頭部に命中すれば危険な状態になりかねなかった。
目前とまで迫ったそれに反応出来たのは、ハルトの身体能力が向上しているからだ。
この事実がハルトを更に愉悦させる。
「はぁぁぁっ!!」
破片に気を取られた僅かな間に、カイが目前とまで迫り剣を振るった。
強力な振り落とし。
それをまともに受けたハルトの左腕は、あっさりとカイの聖剣に負け斬り裂かれてしまう。
しかし、咄嗟に出した右腕がハルトの体に入り込もうとしていたカイの剣をギリギリで止めていた。
「くっ!」
カイが顔を歪ませ、ハルトは口角を上げる。
「左手を斬れたまでは良かったが、残念だったね。カイ」
ハルトの斬られた左腕は、すぐに再生された。
ザシュッ
危険を察知し、すぐに後ろに下がるカイだが、彼の左足を切っ先が掠める。
「ぐっ!」
そこそこの出血があり、床を血で染める。
左足を完全に斬り落とされるまでは無かったが、カイの動きがかなり制限されるようになってしまっていた。
ハルトは絶対的有利になったこの状況で、完全にカイを見下し、勝利を確信する。
そこに油断があった。
自分に身に仕掛けられた罠に気が付かなかった。
「っ!?」
カイがニヤリと笑った次の瞬間、ハルトの体は炎に包まれていた。
これまで何度となく神都で使ってきた、爆炎の符によるものだった。
カイの手を何度も見ておきながら、ハルトは最後の最後でそれを使用してくる可能性を見逃し、その罠にかかることになった。ハルトに似つかわしくない傲慢が招いた敗北である。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
因果応報以上の罰を
下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。
どこを取っても救いのない話。
ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる