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終焉
傲慢、故の敗北
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「っ!!」
カイは異形となったハルトと相対して気付いたことがあった。
ラビスから力を分けてもらったことで、身体能力が向上している。踏み込みは早くなり、剣(腕?)速も以前とは比較にならぬほど早い。
実際カイも受けきれず、何度かハルトの腕の切っ先が肌を掠めることがあった。
「どうしてカイ!?僕に絶望を味わわせるんじゃなかったのか?僕に後悔させるんじゃなかったのか?見せつけてやるんじゃなかったのか?全部逆になっているじゃないか!こんな喜劇があるかいっ!?」
以前のハルトなら考えられないほど、ハルトは戦闘中だというのに饒舌で気が上がっていた。
元々身体能力が高く、剣の才能に溢れていたハルトは異形となった体にもどんどんと馴染みを見せている。
「ちっ!」
何度か打ち合うたびに、ハルトの攻撃を捌き切れずに攻撃が掠めたり強引に距離を取らなくてはいけなくなることが増え、カイは舌打ちをする。
カイは相手を揺さぶり、場の主導権を取って戦うやり方が得意だ。だが、今の場はハルトが主導権を握りつつある。
時間がもう少し経過し、ハルトが完全に体に慣れれば、それはより明確になるだろう。
すぐにでも、勝負をつけねばならなかった。
「ふっ!」
カイは懐からある物を取り出し、ハルトに向けて投げつけた。
「む!?」
ハルトはそれを剣となった左手で弾く。
見るとそれは先ほどカイとの戦いで折られたラグナロクの破片であった。万が一の考えてカイが忍ばせておいたのだ。
小さな破片だが、元は強力な剣のラグナロクである。頭部に命中すれば危険な状態になりかねなかった。
目前とまで迫ったそれに反応出来たのは、ハルトの身体能力が向上しているからだ。
この事実がハルトを更に愉悦させる。
「はぁぁぁっ!!」
破片に気を取られた僅かな間に、カイが目前とまで迫り剣を振るった。
強力な振り落とし。
それをまともに受けたハルトの左腕は、あっさりとカイの聖剣に負け斬り裂かれてしまう。
しかし、咄嗟に出した右腕がハルトの体に入り込もうとしていたカイの剣をギリギリで止めていた。
「くっ!」
カイが顔を歪ませ、ハルトは口角を上げる。
「左手を斬れたまでは良かったが、残念だったね。カイ」
ハルトの斬られた左腕は、すぐに再生された。
ザシュッ
危険を察知し、すぐに後ろに下がるカイだが、彼の左足を切っ先が掠める。
「ぐっ!」
そこそこの出血があり、床を血で染める。
左足を完全に斬り落とされるまでは無かったが、カイの動きがかなり制限されるようになってしまっていた。
ハルトは絶対的有利になったこの状況で、完全にカイを見下し、勝利を確信する。
そこに油断があった。
自分に身に仕掛けられた罠に気が付かなかった。
「っ!?」
カイがニヤリと笑った次の瞬間、ハルトの体は炎に包まれていた。
これまで何度となく神都で使ってきた、爆炎の符によるものだった。
カイの手を何度も見ておきながら、ハルトは最後の最後でそれを使用してくる可能性を見逃し、その罠にかかることになった。ハルトに似つかわしくない傲慢が招いた敗北である。
カイは異形となったハルトと相対して気付いたことがあった。
ラビスから力を分けてもらったことで、身体能力が向上している。踏み込みは早くなり、剣(腕?)速も以前とは比較にならぬほど早い。
実際カイも受けきれず、何度かハルトの腕の切っ先が肌を掠めることがあった。
「どうしてカイ!?僕に絶望を味わわせるんじゃなかったのか?僕に後悔させるんじゃなかったのか?見せつけてやるんじゃなかったのか?全部逆になっているじゃないか!こんな喜劇があるかいっ!?」
以前のハルトなら考えられないほど、ハルトは戦闘中だというのに饒舌で気が上がっていた。
元々身体能力が高く、剣の才能に溢れていたハルトは異形となった体にもどんどんと馴染みを見せている。
「ちっ!」
何度か打ち合うたびに、ハルトの攻撃を捌き切れずに攻撃が掠めたり強引に距離を取らなくてはいけなくなることが増え、カイは舌打ちをする。
カイは相手を揺さぶり、場の主導権を取って戦うやり方が得意だ。だが、今の場はハルトが主導権を握りつつある。
時間がもう少し経過し、ハルトが完全に体に慣れれば、それはより明確になるだろう。
すぐにでも、勝負をつけねばならなかった。
「ふっ!」
カイは懐からある物を取り出し、ハルトに向けて投げつけた。
「む!?」
ハルトはそれを剣となった左手で弾く。
見るとそれは先ほどカイとの戦いで折られたラグナロクの破片であった。万が一の考えてカイが忍ばせておいたのだ。
小さな破片だが、元は強力な剣のラグナロクである。頭部に命中すれば危険な状態になりかねなかった。
目前とまで迫ったそれに反応出来たのは、ハルトの身体能力が向上しているからだ。
この事実がハルトを更に愉悦させる。
「はぁぁぁっ!!」
破片に気を取られた僅かな間に、カイが目前とまで迫り剣を振るった。
強力な振り落とし。
それをまともに受けたハルトの左腕は、あっさりとカイの聖剣に負け斬り裂かれてしまう。
しかし、咄嗟に出した右腕がハルトの体に入り込もうとしていたカイの剣をギリギリで止めていた。
「くっ!」
カイが顔を歪ませ、ハルトは口角を上げる。
「左手を斬れたまでは良かったが、残念だったね。カイ」
ハルトの斬られた左腕は、すぐに再生された。
ザシュッ
危険を察知し、すぐに後ろに下がるカイだが、彼の左足を切っ先が掠める。
「ぐっ!」
そこそこの出血があり、床を血で染める。
左足を完全に斬り落とされるまでは無かったが、カイの動きがかなり制限されるようになってしまっていた。
ハルトは絶対的有利になったこの状況で、完全にカイを見下し、勝利を確信する。
そこに油断があった。
自分に身に仕掛けられた罠に気が付かなかった。
「っ!?」
カイがニヤリと笑った次の瞬間、ハルトの体は炎に包まれていた。
これまで何度となく神都で使ってきた、爆炎の符によるものだった。
カイの手を何度も見ておきながら、ハルトは最後の最後でそれを使用してくる可能性を見逃し、その罠にかかることになった。ハルトに似つかわしくない傲慢が招いた敗北である。
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