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終焉
不遜な態度
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「ラビス様・・・おぉ、なんと・・・」
もしかしたらそうではないか?
目の前にいた女に対し、そんな予感があったハルトだったが、実際に本人がそう名乗ったことで確信に変わり、ハルトは即座に跪いた。
狂言であるとは思わなかった。何故ならラビスが語ったその言葉には、言いようのない信頼感と威厳を感じたからだ。
(間違いない。彼女は本物のラビス様だ!)
直感でハルトはそう判断した。
「おぉ、アンタが神様か。お初にお目にかかる」
カイはペッと口の中にあった血を床に吐き捨てて言う。ハルトとは反対に、カイは態度を改めることはなかった。
不遜な態度にハルトの顔は強張り、ラビスは無表情なれどどこか不快感であると感じるオーラを放っている。
「神の御加護とやらが無かったせいで、俺は今このような暴挙に出る羽目になってます。本当、恨んでますよ」
そして剣を向ける。
神に対して最大限の冒涜といえる行為だ。元といえ聖騎士として到底許されないことだった。
「やめろカイ!」
ハルトはラビスとカイとの間に立ちはだかりたいと思うが、カイにやられた傷は満足に動けるほどの治療されていないのでそれは叶わない。
動けないままに吠えているハルトを無視して、カイはラビスに近づいていく。
「それにしても影像として神都中に出てくるときは随分と大きく映されていましたが、実際は随分ちんちくりんなんですね。だからですか?祈っても加護がないのは」
ラビスの姿は人間と変わらない。それをカイは貶しながらも、ゆっくりと近づく。
相手を煽って動揺や怒りを誘うやり方は「神様相手」でも変わらない。
「愚かな」
明確な殺意を持って近づいてくるカイを前に、ラビスは心底呆れたとばかりに溜め息をついてからスッと目の前に右手をかざした。
「ッ!!」
瞬間、カイが素早く踏み込み剣を振るう。
ラビスが何か攻撃を仕掛けてくると直感したからだ。
「あっ!!」
ハルトが声を上げる。
カイが剣を振るうと、ラビスがかざした右手が呆気なく斬り落とされたからだ。
絶対なる存在であるはずのラビスが、ただの人間の太刀により体の一部を喪失したのだ。驚かないわけがなかった。
ラビスは呆然と失った右手を見つめていたが、やがて憎々し気にカイを睨みながら、声を震わせて言った。
「どこまでも不愉快なやつよ・・・下賤な人間が・・・!」
カイはラビスの視線を受けながらも、鼻で笑う。
「なんだ。やっぱり案外大したことないんじゃねぇか。だから加護がなかったんだな~」
カイは更にラビスを煽った。
だがそう言うカイも緊張していた。飄々としているように見えるカイも、「神殺し」を犯すことになるプレッシャーを感じていたのだ。
もしかしたらそうではないか?
目の前にいた女に対し、そんな予感があったハルトだったが、実際に本人がそう名乗ったことで確信に変わり、ハルトは即座に跪いた。
狂言であるとは思わなかった。何故ならラビスが語ったその言葉には、言いようのない信頼感と威厳を感じたからだ。
(間違いない。彼女は本物のラビス様だ!)
直感でハルトはそう判断した。
「おぉ、アンタが神様か。お初にお目にかかる」
カイはペッと口の中にあった血を床に吐き捨てて言う。ハルトとは反対に、カイは態度を改めることはなかった。
不遜な態度にハルトの顔は強張り、ラビスは無表情なれどどこか不快感であると感じるオーラを放っている。
「神の御加護とやらが無かったせいで、俺は今このような暴挙に出る羽目になってます。本当、恨んでますよ」
そして剣を向ける。
神に対して最大限の冒涜といえる行為だ。元といえ聖騎士として到底許されないことだった。
「やめろカイ!」
ハルトはラビスとカイとの間に立ちはだかりたいと思うが、カイにやられた傷は満足に動けるほどの治療されていないのでそれは叶わない。
動けないままに吠えているハルトを無視して、カイはラビスに近づいていく。
「それにしても影像として神都中に出てくるときは随分と大きく映されていましたが、実際は随分ちんちくりんなんですね。だからですか?祈っても加護がないのは」
ラビスの姿は人間と変わらない。それをカイは貶しながらも、ゆっくりと近づく。
相手を煽って動揺や怒りを誘うやり方は「神様相手」でも変わらない。
「愚かな」
明確な殺意を持って近づいてくるカイを前に、ラビスは心底呆れたとばかりに溜め息をついてからスッと目の前に右手をかざした。
「ッ!!」
瞬間、カイが素早く踏み込み剣を振るう。
ラビスが何か攻撃を仕掛けてくると直感したからだ。
「あっ!!」
ハルトが声を上げる。
カイが剣を振るうと、ラビスがかざした右手が呆気なく斬り落とされたからだ。
絶対なる存在であるはずのラビスが、ただの人間の太刀により体の一部を喪失したのだ。驚かないわけがなかった。
ラビスは呆然と失った右手を見つめていたが、やがて憎々し気にカイを睨みながら、声を震わせて言った。
「どこまでも不愉快なやつよ・・・下賤な人間が・・・!」
カイはラビスの視線を受けながらも、鼻で笑う。
「なんだ。やっぱり案外大したことないんじゃねぇか。だから加護がなかったんだな~」
カイは更にラビスを煽った。
だがそう言うカイも緊張していた。飄々としているように見えるカイも、「神殺し」を犯すことになるプレッシャーを感じていたのだ。
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