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反逆
聖剣対ラグナロク
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「カイ。こんなことになって本当に残念だよ」
ハルトはゆっくりと剣を抜く。
カイはその刀身を目にして、表情を強張らせた。
「それは・・・もしかしてラグナロクか・・・?」
カイが持つ聖剣は、聖女イリスが死を直感して最後と思い自身の生命力と聖力を込めたために今も形を成している。
だが、ハルトの聖剣は既にパートナーである聖女が死んだことで形を形成していなかった。なのでサンクレアの心臓を守るからには、代わりにそこそこの業物を用意くらいはするだろうとカイは考えていたが、ハルトの持っていた得物はその予想を超えるものだった。
門外不出にして、国の本当の危機にしか・・・否、危機が迫っても解放されることはないと言われている伝説の剣ラグナロク。
それをハルトが持っていることにカイは驚き、笑みを浮かべていた表情を少しだけ引き締めた。
「とんだサプライズだな。まさかそんなものを用意するなんてな」
カイは聖剣を構えたまま、慎重な足運びで様子を伺う。
ハルトの持っているラグナロクは、以前に彼が持っていた聖剣とは違っていた。
速さ重視ではなく、通常タイプの長剣だ。だが、ラグナロクはサンクレアの秘蔵中の秘蔵の剣・・・その切れ味も頑丈さも、カイの持つ聖剣と勝るとも劣らない。
「さぁ、この剣ならば僕だってカイと正面から打ち合えるぞ」
ハルトは口角を上げ、カイを挑発するようにそう言った。
以前のハルトの剣ならば、カイの聖剣を正面から受ければ負けた。同じ聖剣といえど、刀身ごと斬り裂かれてしまうほどに破壊力に差があった。
だが、今持っているラグナロクならばそんなことはない。
以前封魔殿で相対したときは正面からの打ち合いを避けねばならなかったが、今なら堂々と打ち合える。
「打ち合う・・・か。ハルト、お前に出来るか?俺と正面から打ち合うことが」
カイが挑発するように言った。
「出来るさ。このラグナロクならね」
ハルトはカイの言葉などものともせず、じりじりと間合いを詰める。
カイが言ったことは、打ち合いの避けることを誘導しての発言だとハルトは判断していた。
カイが打ち合いを避けているのならば、こちらから仕掛ける・・・!
ハルトは慎重に、それはもう慎重に、タイミングを計って間合いを詰めていた。
だが・・・
「来れるなら来てみろ。お前の恋人と同じところへ送ってやろう。同じ剣でな」
カイが言ったその言葉に、ハルトは思わず飛び出してしまった。
それが間違いだった。
ハルトはゆっくりと剣を抜く。
カイはその刀身を目にして、表情を強張らせた。
「それは・・・もしかしてラグナロクか・・・?」
カイが持つ聖剣は、聖女イリスが死を直感して最後と思い自身の生命力と聖力を込めたために今も形を成している。
だが、ハルトの聖剣は既にパートナーである聖女が死んだことで形を形成していなかった。なのでサンクレアの心臓を守るからには、代わりにそこそこの業物を用意くらいはするだろうとカイは考えていたが、ハルトの持っていた得物はその予想を超えるものだった。
門外不出にして、国の本当の危機にしか・・・否、危機が迫っても解放されることはないと言われている伝説の剣ラグナロク。
それをハルトが持っていることにカイは驚き、笑みを浮かべていた表情を少しだけ引き締めた。
「とんだサプライズだな。まさかそんなものを用意するなんてな」
カイは聖剣を構えたまま、慎重な足運びで様子を伺う。
ハルトの持っているラグナロクは、以前に彼が持っていた聖剣とは違っていた。
速さ重視ではなく、通常タイプの長剣だ。だが、ラグナロクはサンクレアの秘蔵中の秘蔵の剣・・・その切れ味も頑丈さも、カイの持つ聖剣と勝るとも劣らない。
「さぁ、この剣ならば僕だってカイと正面から打ち合えるぞ」
ハルトは口角を上げ、カイを挑発するようにそう言った。
以前のハルトの剣ならば、カイの聖剣を正面から受ければ負けた。同じ聖剣といえど、刀身ごと斬り裂かれてしまうほどに破壊力に差があった。
だが、今持っているラグナロクならばそんなことはない。
以前封魔殿で相対したときは正面からの打ち合いを避けねばならなかったが、今なら堂々と打ち合える。
「打ち合う・・・か。ハルト、お前に出来るか?俺と正面から打ち合うことが」
カイが挑発するように言った。
「出来るさ。このラグナロクならね」
ハルトはカイの言葉などものともせず、じりじりと間合いを詰める。
カイが言ったことは、打ち合いの避けることを誘導しての発言だとハルトは判断していた。
カイが打ち合いを避けているのならば、こちらから仕掛ける・・・!
ハルトは慎重に、それはもう慎重に、タイミングを計って間合いを詰めていた。
だが・・・
「来れるなら来てみろ。お前の恋人と同じところへ送ってやろう。同じ剣でな」
カイが言ったその言葉に、ハルトは思わず飛び出してしまった。
それが間違いだった。
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