聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

文字の大きさ
上 下
161 / 203
反逆

取り乱す神殿騎士達

しおりを挟む
騎士団長アドル、神殿騎士団長ミカエルの死は、法王城に立てこもった者達に激震が走った。


「反逆者カイの仕業だという証言がある!やはり奴はこの城に潜んでいるのだ!!」


「あれだけ探したというのに見つからなかったのだぞ!?我々に見つけることが出来るのか!!?」


「厳重な警備の中で、ミカエル様が屠られたのだぞ・・・私達がどうにか出来るはずがない・・・」


「結界の外にはユーライ国軍・・・中には反逆者カイ・・・我々に逃げ場がないということではないか・・・」


「いや、ユーライ国軍相手ならまだ逃げれば生き延びる可能性がある・・・だが、こうして結界の中にいる状況は、ただ殺されるのを待っているようなものだ」


「結界を解いた方が・・・!」


「正気か!?外には敵国軍が・・・」



法王城を守る神殿騎士達は混乱した。
結界とは外敵から身を守るためのもの。だがその結界内に外敵が入り込んだ場合、それは身を守る鎧ではなく、逃げ出せなくするための柵にしかならないのだ。
自分達には逃げ場がない。その状況で反逆者カイが実力者を二人も屠ってしまった。

神殿騎士達の間には絶望の空気が流れるとともに、結界をすぐにでも解いたほうが良いのではという意見までが出るようになる。
実質ユーライ国軍か反逆者カイか、どちらと戦うかの意見のぶつかり合いである。
これまで統率を取っていたミカエルがいなくなったことで、法王城は混乱の極みに達していた。


「くだらない・・・」


サンクレアの心臓を警備していたハルトは、異変に気付いて城内の様子を見てみたが、混乱して阿鼻叫喚の地獄絵図になっている様を見て呆れ返った。
自分の命が改めて危険に晒されたことで、自身が持っている使命を完全に見失っている。


(我々はいかなる時でも決して自分を見失わず、進むべき道を進み、あるべき姿であり続けるべきじゃないか。そんなことはこの国の騎士ならば誰もが習うことだろうに)


この緊急事態に対し、誰一人としてサンクレアの心臓の警護にやってこない神殿騎士達のことを、ハルトは心の底から軽蔑していた。
自分は恋人を失った今となっても、決して使命を放棄せず務め上げようとしているのに・・・
そんな考えがハルトの頭の中にあった。


ハルトは神殿騎士達のようには取り乱さない。
待っていれば、近いうちにカイが必ず姿を現す。その確信があったからだ。

そして、ハルトのその勘は当たることになるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...