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反逆

取り乱す神殿騎士達

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騎士団長アドル、神殿騎士団長ミカエルの死は、法王城に立てこもった者達に激震が走った。


「反逆者カイの仕業だという証言がある!やはり奴はこの城に潜んでいるのだ!!」


「あれだけ探したというのに見つからなかったのだぞ!?我々に見つけることが出来るのか!!?」


「厳重な警備の中で、ミカエル様が屠られたのだぞ・・・私達がどうにか出来るはずがない・・・」


「結界の外にはユーライ国軍・・・中には反逆者カイ・・・我々に逃げ場がないということではないか・・・」


「いや、ユーライ国軍相手ならまだ逃げれば生き延びる可能性がある・・・だが、こうして結界の中にいる状況は、ただ殺されるのを待っているようなものだ」


「結界を解いた方が・・・!」


「正気か!?外には敵国軍が・・・」



法王城を守る神殿騎士達は混乱した。
結界とは外敵から身を守るためのもの。だがその結界内に外敵が入り込んだ場合、それは身を守る鎧ではなく、逃げ出せなくするための柵にしかならないのだ。
自分達には逃げ場がない。その状況で反逆者カイが実力者を二人も屠ってしまった。

神殿騎士達の間には絶望の空気が流れるとともに、結界をすぐにでも解いたほうが良いのではという意見までが出るようになる。
実質ユーライ国軍か反逆者カイか、どちらと戦うかの意見のぶつかり合いである。
これまで統率を取っていたミカエルがいなくなったことで、法王城は混乱の極みに達していた。


「くだらない・・・」


サンクレアの心臓を警備していたハルトは、異変に気付いて城内の様子を見てみたが、混乱して阿鼻叫喚の地獄絵図になっている様を見て呆れ返った。
自分の命が改めて危険に晒されたことで、自身が持っている使命を完全に見失っている。


(我々はいかなる時でも決して自分を見失わず、進むべき道を進み、あるべき姿であり続けるべきじゃないか。そんなことはこの国の騎士ならば誰もが習うことだろうに)


この緊急事態に対し、誰一人としてサンクレアの心臓の警護にやってこない神殿騎士達のことを、ハルトは心の底から軽蔑していた。
自分は恋人を失った今となっても、決して使命を放棄せず務め上げようとしているのに・・・
そんな考えがハルトの頭の中にあった。


ハルトは神殿騎士達のようには取り乱さない。
待っていれば、近いうちにカイが必ず姿を現す。その確信があったからだ。

そして、ハルトのその勘は当たることになるのであった。
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