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反逆
正しき者のメッキは剥げる
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「あぁ、そうだ。私はイリスを刺した。仕方がないことだった」
真偽の見抜く力を持つ息子レイドの前で誤魔化すことは出来ず、アドルは正直に話した。
レイドはそんなアドルに対して驚愕の目を向ける。
「俺がハルトに集中している間に、目を盗んで無防備なイリスを刺した。そうですよね?」
カイがニヤニヤと笑みを浮かべながらアドルに問う。
アドルはそれに対して答えなかったが、レイドは彼の様子を見、そして次にカイを見た後に愕然とした。
カイが嘘を言っていないことがわかったからである。そして黙殺しているアドルの様子からも、それが真実であると裏付けていた。
「父上・・・まさか、そのようなことを・・・」
カイの背後から、今度はアドルの長男のラルフが姿を現した。
姿は無かったが、物陰で会話を聞いていたらしい。
「父上は立派な騎士だと、卑怯な真似などしないと信じていたのに・・・!」
ラルフが体と声を震わせながら、絞り出すように言った。
「そうではない、仕方がなかったのだ」
アドルはラルフにも知られたことで、明らかに動揺していた。
二人の息子に失望されている、その事実が常に冷静なはずをアドルを揺れ動かしていた。
アドルとて考えがあってイリスを刺した。
アドルにとっても脅威であるカイをリスク無く倒すには、イリスを刺してカイの気力を奪うことが最も効率が良いと考えていた。卑怯は十分承知。だが、アドルのそれは「矜持に囚われず効率よく動き生還する術を探る」という彼の戦における行動原理に叶ったものだった。
つまりは生きるために、目的を果たすためにやれることは何でもやれということだ。
カイもこれは理解していたし、実際に踏襲もしている。恥を恐れずに実行してみせるそんなアドルのことを尊敬してさえしていた。
だが、アドルはそんな自分を二人の息子達には知らせずにいた。
二人はまだ純粋だ。純粋にアドルが高貴な騎士だと信じている。そして騎士とは誇り高く正しい存在であると思っている、他でもない、アドルを見てそうありたいと願っていた。
だが、アドルが実はそうではなかったと知り、心がまだ未熟な二人はその現実に打ちのめされていた。
しかも刺したのはアドル達の家族も仲良く付き合いのあったカイの恋人のイリスである。
(けど、まだまだですよアドル団長。絶望するのは)
呆然とするアドルを見て、カイは口角を上げた、
真偽の見抜く力を持つ息子レイドの前で誤魔化すことは出来ず、アドルは正直に話した。
レイドはそんなアドルに対して驚愕の目を向ける。
「俺がハルトに集中している間に、目を盗んで無防備なイリスを刺した。そうですよね?」
カイがニヤニヤと笑みを浮かべながらアドルに問う。
アドルはそれに対して答えなかったが、レイドは彼の様子を見、そして次にカイを見た後に愕然とした。
カイが嘘を言っていないことがわかったからである。そして黙殺しているアドルの様子からも、それが真実であると裏付けていた。
「父上・・・まさか、そのようなことを・・・」
カイの背後から、今度はアドルの長男のラルフが姿を現した。
姿は無かったが、物陰で会話を聞いていたらしい。
「父上は立派な騎士だと、卑怯な真似などしないと信じていたのに・・・!」
ラルフが体と声を震わせながら、絞り出すように言った。
「そうではない、仕方がなかったのだ」
アドルはラルフにも知られたことで、明らかに動揺していた。
二人の息子に失望されている、その事実が常に冷静なはずをアドルを揺れ動かしていた。
アドルとて考えがあってイリスを刺した。
アドルにとっても脅威であるカイをリスク無く倒すには、イリスを刺してカイの気力を奪うことが最も効率が良いと考えていた。卑怯は十分承知。だが、アドルのそれは「矜持に囚われず効率よく動き生還する術を探る」という彼の戦における行動原理に叶ったものだった。
つまりは生きるために、目的を果たすためにやれることは何でもやれということだ。
カイもこれは理解していたし、実際に踏襲もしている。恥を恐れずに実行してみせるそんなアドルのことを尊敬してさえしていた。
だが、アドルはそんな自分を二人の息子達には知らせずにいた。
二人はまだ純粋だ。純粋にアドルが高貴な騎士だと信じている。そして騎士とは誇り高く正しい存在であると思っている、他でもない、アドルを見てそうありたいと願っていた。
だが、アドルが実はそうではなかったと知り、心がまだ未熟な二人はその現実に打ちのめされていた。
しかも刺したのはアドル達の家族も仲良く付き合いのあったカイの恋人のイリスである。
(けど、まだまだですよアドル団長。絶望するのは)
呆然とするアドルを見て、カイは口角を上げた、
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