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反逆
悪い相談
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「君、アドル君にどこか適当に部屋をあてがってやりたまえ」
しばしアドルと睨みあっていたミカエルだったが、傍に控えていた神殿騎士にそう言った。
「法王様の期待を背負っている以上、くれぐれもこれ以上の問題は起こさないようにね」
ミカエルはそう言って踵を返す。
アドルはミカエルにとって忌々しい男だが、部下がいる前では必要以上にけん制するわけにはいかなかった。長年権力を得るために、自然と体に身に就いた処世術だ。部下を含め回りの人間からは人格者だと思われなければならないとミカエルは常に自分を律していた。
「私とて法王様の期待を背負う身。心して忠告を受けきれよう」
アドルもアドルで慇懃無礼に恭しく礼を取ってみせる。
ミカエルは特に言葉を返すことは無かった。
ーーーーー
「くっ」
ミカエルは神殿内にある自分の執務室に入り、一人になると苛立たし気に声を洩らした。
「どこまでも気に入らない・・・一体法王様は何故にあの男にそこまで期待をかけるのだ?」
アドルが失脚するどころか、最重要箇所の警備を任されることになるなど、ミカエルにとっては屈辱でしかない。
しかしそれが法王の意向とならば表立って自分が反対するわけにもいかず、ミカエルは歯がゆさによる怒りで我を忘れそうになっていた。
だが、それでも表に出さず律することが出来たのは、長年培ってきた処世術の賜物に他ならない。
「それほど気に入らないのなら、どうでしょう?ここで一つアドルに目に物見せてやるのは」
「っ!?誰だ?」
表に出すことはなかったとはいえ、怒り心頭で冷静さが足りなかったミカエルは自分の他に誰もいないはずの場に何者かがいることに話しかけられて初めて気が付いた。
「お、お前は・・・」
ミカエルは部屋にいた男に見覚えがあった。
そう、それは今サンクレアで誰よりも探されている男・・・カイであった。
「今日はご相談がありまして。なに、ミカエル様には悪い話ではありませんよ」
しばしアドルと睨みあっていたミカエルだったが、傍に控えていた神殿騎士にそう言った。
「法王様の期待を背負っている以上、くれぐれもこれ以上の問題は起こさないようにね」
ミカエルはそう言って踵を返す。
アドルはミカエルにとって忌々しい男だが、部下がいる前では必要以上にけん制するわけにはいかなかった。長年権力を得るために、自然と体に身に就いた処世術だ。部下を含め回りの人間からは人格者だと思われなければならないとミカエルは常に自分を律していた。
「私とて法王様の期待を背負う身。心して忠告を受けきれよう」
アドルもアドルで慇懃無礼に恭しく礼を取ってみせる。
ミカエルは特に言葉を返すことは無かった。
ーーーーー
「くっ」
ミカエルは神殿内にある自分の執務室に入り、一人になると苛立たし気に声を洩らした。
「どこまでも気に入らない・・・一体法王様は何故にあの男にそこまで期待をかけるのだ?」
アドルが失脚するどころか、最重要箇所の警備を任されることになるなど、ミカエルにとっては屈辱でしかない。
しかしそれが法王の意向とならば表立って自分が反対するわけにもいかず、ミカエルは歯がゆさによる怒りで我を忘れそうになっていた。
だが、それでも表に出さず律することが出来たのは、長年培ってきた処世術の賜物に他ならない。
「それほど気に入らないのなら、どうでしょう?ここで一つアドルに目に物見せてやるのは」
「っ!?誰だ?」
表に出すことはなかったとはいえ、怒り心頭で冷静さが足りなかったミカエルは自分の他に誰もいないはずの場に何者かがいることに話しかけられて初めて気が付いた。
「お、お前は・・・」
ミカエルは部屋にいた男に見覚えがあった。
そう、それは今サンクレアで誰よりも探されている男・・・カイであった。
「今日はご相談がありまして。なに、ミカエル様には悪い話ではありませんよ」
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