聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

負けた男の執念

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アドルはミカエルが執心しているカトレアの横からかっさらってやろうと考えていた。
これまで幾度となく令嬢にはアプローチされてきたが、その誰もがアドルの心を射止めることはなかった。しかしカトレアは違う。初めてアドルの方からアプローチを仕掛けても良いかなと思えた女性だった。
アドルからしてみれば、日々自分に苛烈なほどに闘争心を燃やし続ける目ざわりなミカエルに対する良い嫌がらせ程度に考えていたつもりだったが、実際のところはアドルも無心の内にカトレアに対して懸想し始めていたのだ。
ともあれ、アドルはカトレアに対してアプローチを開始する。

一方でミカエルはアドルを実力でねじ伏せ、騎士として最強であることを示してからカトレアに求婚することを決めていた。その一心で鍛錬に明け暮れ、アドルを倒そうと躍起になっていたのだ。

が、ミカエルのその強い思い故に隙があった。


アドルを越えないとカトレアに求婚しないということは、それまでは彼女に対して見ているだけということ。
アドルはミカエルが剣に熱中している間に巧みにカトレアの心に入り込み、なんと先に婚約をもぎ取ってしまった。


「そんな・・・馬鹿な・・・」


その報を聞いたミカエルは、呆然として訓練用の剣を手から落とした。
サンクレアで定期的に行われる剣技大会で、次こそアドルを倒して優勝しようともう訓練している最中だった。
カトレアが婚約したことだけでも衝撃的だったが、その相手がアドルであるということもまた彼の心を深く傷つけた。


「まさか・・・本当に」


何かの間違いではないか、そう思ってカトレアの元に向かったミカエルは、そこで仲睦まじそうに手を取り、馬車に二人で乗ろうとしている場面に出くわした。
カトレアはアドルを慈愛に満ちた目で見つめており、浅からぬ仲であることがすぐにわかった。

(あんな顔、私にも見せたことがない・・・)


打ちひしがれて、ミカエルは張り詰めていた糸が切れたかのように無気力になった。アドルに騎士としてだけでなく、男としても負けてしまったことに心が壊されてしまったかのようだった。
結局、次に行われる剣技大会はミカエルが出場することはなかった。

アドルは幸せだった。
意中の女が自分の物になった。ついでに目ざわりだった男がようやく大人しくなった。


だが、ミカエルは決して大人しくなったわけではなかった。
それどころかドス黒い執念を燃やし、その後のアドルの人生を大きく狂わせたのである。
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