聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

意味深な手紙

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「神都から人が消えていく・・・!」


法王城から城下を眺めていたハルトが、思わず声を上げる。
かつて世界一の人口を誇る都であったが、遠目からでもはっきりわかるほど人が流出しているのがわかる。長蛇の列をなし、皆神都の北の門から脇目もふらず出て行こうとしている。


「ユーライ国軍のプレッシャーに加え、肝心の法王城が勝手に籠城しているのだからな。民はさぞかし不安であっただろうさ。こうなるのも無理はあるまい」


いつの間にかハルトの横に立っていたアドルが言った。


「降臨の儀の際の、カイの工作が効いているのだろうな。あれが無ければ、あそこまでは取り乱しはしなかったかもしれん」


アドルが忌々しそうに言う。
カイは神都の崩壊を予兆する発言をし、それを全神都民に聞かれてしまっていた。
当時は鼻で笑っていた人間も、実際にユーライ国軍が戦を仕掛け、教会が弱気な姿勢を見せ、そしてあろうことかサンクレアの象徴の一つである聖女が全滅したとなると、もう笑ってなどいられない。
「本当に滅びるのではないか。ここにいたら巻き込まれるのではないか」そのような疑心暗鬼が伝染し、あっと言う間に神都は崩壊した。


「カイ・・・」


ハルトは様々な因縁のあるその男の名を呟く。
恋人を殺し、愛すべき神都を壊し、ひいてはサンクレアを、世界を破滅させんとするカイ。
どのような理由があったとしても、カイのしたことは絶対に許されることではない。何があっても見つけ出して殺す、ハルトは崩れ行く神都を眺めながら、そう決心していた。

その時であった。


「アドル騎士団長」


そこへ突然、一人の神殿騎士がやってきた。


「なんだ?」


神殿騎士がアドルを呼ぶときは、大概ろくな話ではない。上層部の呼び出しくらいしかないからだ。
だが、今回は少し様子が違ったようだ。


「こちらの手紙を預かっております」


「手紙?」


アドルは神殿騎士が手渡してきた手紙を見て、怪訝な顔をする。


「法王様からです。機密文書につき、必ず一人で読んでいただきたいとのことです」


「法王が?」


アドルとハルトは思わずお互いの顔を見合わせた。
一体何の用件なのか、アドルは全く心当たりなどなかった。
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