聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

法王ランスという男

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「運動をしたらお腹がすきましたな。食事を運ばせますが、カイ様もいかがですかな?」


「元気だなぁ・・・まぁ、俺の分も頼むよ」


呆れるカイがそう答えると、法王は部屋の中にある呼び出しの鈴が鳴る紐を引っ張った。
僅かに間を空けて従者がやってきたので、法王が二人分の食事を運ぶように命令をする。従者は恭しく礼をして、すぐにその場を後にした。
当然、従者がいる間はカイは物陰に潜んでいた。

法王は元々大食漢であり、の後に食事を摂ることも珍しいことではなかった。だからカイが潜んでいるこの部屋に二人分の食事を運ぶように頼まれたところで、疑問に思う者はいない。
肉も魚も貪るように平らげ、ワインを呷る目の前の法王を見てカイは呆れた。無欲そうな顔をしていながら、誰よりも欲深そうではないかと思いつつ、そんな普段の法王があったからこそ今の自分は快適に法王の部屋で隠れていることが出来ることに皮肉を感じていた。


「その・・・またしばらく間を置きましたら、その・・・」


食事を終えた法王が何かを言いにくそうにしているのを見て、カイはまたもあきれ顔になった。


「また・・・するのか?」


「まぁ、その、部屋に引き籠っていますと、他にやることもありませんし・・・」


恥ずかしそうにそう言う法王を見て溜め息をつきながら、カイは「好きにしろよ」とだけ言った。


「あぁ、ただし少年じゃないほうな。男との交わりを俺の近くでやられたんじゃたまらないからな」


せめて、とカイは注文をつける。
法王が少年にも手を出していることは知っているが、それを自分の前でやられることだけは嫌だった。もちろん少女であったも良い気がするわけではないのだが、少年よりはマシだ。


「あの、差し出がましいようですが、カイ様も溜まっておられるようでしたら、楽しみますか?私は忘却の魔法が使えますので、それを使えばカイ様のことが口外されることはありません」


「遠慮しとくよ」


自分達が命を賭けて守ってきた組織のトップがこのような好色家の変態だなどと、真面目なハルト辺りが知ればどうなるだろうか?とカイは考えて苦笑いが浮かんだ。

しかし法王も法王で肝が据わっているなと感心している。脅しつけたときもパニックに陥られようなら面倒が増えるが、カイのことを様付けして呼び、共同生活にもあっさり馴染んでみせた法王の適応力にはカイも驚いた。
自分の性癖の秘密さえ漏れなければ、どうでも良いということなのだろうとカイは思った。
実のところ、法王ランスはその変わり身の早さを生かし、結果として今の地位を築くまでにのし上がることができたのである。
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