聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

文字の大きさ
上 下
113 / 203
反逆

神都避難民の絶望

しおりを挟む
副騎士団長の独断によりユーライ国軍の迎撃をやめた騎士団は、全軍が神都の外壁内に退避したのを確認した後、門を閉めて籠城の姿勢を見せた。


「全軍の避難完了しました」


「よろしい」


一先ず全軍の退避が完了したという報を受け、副騎士団長は胸を撫でおろす。
既に軍が混乱状態にあったこと、ユーライ国軍に勢いがあったこと、そして何より法王城が絶対魔法障壁を張り、勝手に外界と隔絶したことが決め手となったのか、特に副騎士団長の決定への反論が起こることはなかった。


「一部とはいえ、いくらかユーライ兵も神都内に入っただろう?その辺はどうなっている?」


「はっ。郊外エリアに侵入したユーライ兵もおりましたが、我々が退避を開始したときから、入れ替わるように外壁の外へ移動したようです。今現在、神都内にユーライ兵がいるという報告は上がっておりません」


「我々が籠城に入るのを察したか?まぁ・・・何にせよ一先ずは退避が完了して良かった。問題はこれからだが」


今日のところはこれ以上ユーライ国軍と剣をぶつけ合うことはなさそうだが、長期的に見ると問題はまだ解決していない。
籠城すると決めたが、とりあえず住民の混乱の沈静化をしつつ、食料管理をしていかなければならない。神都中を漁れば食料はたくさん出てくるだろうが、うまくやらねば民の反感を招く。そうでなくても神都は人口が多いので、そもそもどれだけの期間籠城が可能なのかも不透明だ。


「おのれ・・・本当に余計なことを・・・」


副騎士団長は障壁に囲まれた法王城を恨めしそうに睨みつけながらぼやいた。
法王城には神都中の人間全員を一か月は食わせることが出来るだけの食料が貯蔵されている。
だが絶対魔法障壁に囲まれている今、法王城には誰も踏み込めないので、食料を分けてもらうことができない。障壁に外にいるの自分達だけでなんとかやりくりしなければならないのである。

副騎士団長は既に騎士達に命令して神都にある食料の把握を急がせているが、当然食料を普段から貯蔵している飲食業者、商会、貴族、富豪からは食料の分配に対して反発があるだろう。
それでも最悪は武力に物を言わせて彼らから食料を接収するしかないのだが、このような非情な決断をせねばならない状態にした上層部を副騎士団長は恨まずにはいられなかった。

先のことを考えると副騎士団長の頭は痛くなるが、しかし、翌日に流れが一変することになった。

ユーライ国軍から外壁を越えて書簡が投げ込まれたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

処理中です...