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反逆

間に合わなかった男

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「何だって・・・マーサが襲撃されているだって!!?」


目前まで来ておきながら、緩慢な動きで中々前衛とも接敵しないユーライ国軍の動向を見守っていたハルトは、伝令兵の言葉を聞いて驚愕した。
自分と離れてから、それほど時間も経過していないのに襲われ、しかも相手は元聖騎士のカイである・・・ハルトが驚愕するのも無理はなかった。


(なんてことだ・・・!だから離れるべきじゃなかったんだ!!)


分離して行動を許容したことをハルトは悔いた。やはり決まりの通りに何があっても離れるわけには行かなかったと憤慨する。後援部隊が爆発による攻撃を受けたのも、全てはこうしてハルトとマーサを分離させようとする企みだったのではないかと気付くも、今となってはどうにもなるものでもない。


「すぐに僕がマーサの元に行く。ここは頼めますか?」


ハルトは副騎士団長にその場をお願いし、すぐにマーサの元に向かおうとするハルトだが、そんな彼の耳に副騎士団長の元にやってきた他の伝令兵の言葉が入る。


「ユーライ国軍、前衛が我が軍と接敵したようです!」


ハルトはまたも驚愕する。
このタイミングで!と。
だが、判断に迷いそうになるハルトを見て副騎士団長が叫んだ。


「この場はお任せください!ハルト様はすぐに聖女様のところへお願いします!!」


副騎士団長の言葉を受け、ハルトは迷いを祓い、すぐにマーサの元へ向かうことを決意する。


「すぐに戻ります」


そう言うが早いか、ハルトは瞬時にその場から走り去った。
並みいる騎士達の間をすり抜けながらも馬よりも早く走り抜け、建物の上まで高く跳躍し、八艘飛びのように建物の上を移動しながらマーサがいるとされている礼拝堂までの最短距離を進む。



「頼む!間に合ってくれ!!」


ハルトは願う。
マーサは聖女である故に優秀な魔法使いである。彼女が結界を張り、守りに徹すれば自分が辿り着くまでの間まで持ちこたえることが出来るだろうーー そう頭の中ではわかっていつつも、ハルトは不安で仕方が無かった。

悪い予感がする・・・ 特にカイが絡んでいる案件では、常に自分を含めサンクレアは後塵を喫している。
それに、聖騎士クリスや聖女アルマもカイによって殺された。

それらの事実が、ハルトを焦らせ足を速めさせていた。


「・・・なっ・・・?」


しかし、そんなハルトが目にしたのは、『絶対に壊れぬ』と言われていた強固たる礼拝堂が瓦礫だらけになっている姿と、そこで体を斬り裂かれて絶命しているマーサの姿だった。
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