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反逆
予想外の聖女の堕落に苦心する
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「まいったな。少し予定と違う」
カイは冷や汗を僅かに流しながら、マーサを睨みつけた。
絶対的優位に、かつ速やかにマーサを葬ることが出来るはずだった。だが、どうやらマーサは想像以上に不真面目な聖女で、隠し玉を持っていたことに驚きを隠せない。
しかもその隠し玉は元よりカイとイリス用に用意していたものだというのだから、カイが驚くことに無理はない。
(こんなはずじゃなかったんだが・・・)
カイは己の読みの甘さを呪う。
今回の襲撃の際、カイは自分と同じく透明になったユーライの斥候と連携し、爆炎符によるサンクレア騎士団の後援部隊の攻撃を計画していた。
その目的はアドルとハルト、そしてマーサを分断するようにするためである。
アドルがサンクレアの心臓を何より優先して動くだろうことは予想がついていた。
カイがサンクレアの心臓部を襲撃することにより、アドルを焦らせ、まずは彼を法王城へ固定する。一度サンクレアの心臓へ襲撃を受けた以上、万が一のことを考え、アドルはそこを離れることはしないだろう。
ハルトはどうなるかカイにも読めなかった。
すぐにアドルと同じようにサンクレアの心臓まで来たかもしれなければ、あくまで自分の持ち場を離れることはせず戦場に居続ける可能性もあり、あるいはマーサの後援部隊の治療に付き添っているかもしれないーー
だが、いずれにせよカイからすればアドル、ハルト、マーサが同じ場所にいる状態を解消出来ればそれが良かったのだ。全員を一度に相手にするのだけは絶対に避けたかった。そのための爆炎符による後援部隊の攻撃だった。
結果としては大成功だった。
アドルは法王城に固定出来、ハルトは戦場へ、マーサは後援部隊の治療に専念した。
まさかハルトとマーサが別行動までしてくれるとはあまり期待していなかったが、実際にそれが起きた。
これは絶好の機会だと思った。
マーサ単体であれば、葬るのに都合が良すぎるからだ。
聖女は基本的に殺傷能力を持たない。その力を攻撃魔法にリソースを割く余裕などないし、あってはならないからだ。
だから、防御一辺しか取り柄の無いマーサと一体一ならば簡単に彼女を殺せる・・・そのはずだった。
「どうやら、向こうもこっちを殺す気まんまんだとはな・・・」
マーサの周囲に攻撃魔法である光の玉が増え続ける。
本来回復魔法の研鑽に向けるべき魔力を、どうやら人知れず殺傷魔法の研鑽に使っていたとは思ってもみなかった。
カイは冷や汗を僅かに流しながら、マーサを睨みつけた。
絶対的優位に、かつ速やかにマーサを葬ることが出来るはずだった。だが、どうやらマーサは想像以上に不真面目な聖女で、隠し玉を持っていたことに驚きを隠せない。
しかもその隠し玉は元よりカイとイリス用に用意していたものだというのだから、カイが驚くことに無理はない。
(こんなはずじゃなかったんだが・・・)
カイは己の読みの甘さを呪う。
今回の襲撃の際、カイは自分と同じく透明になったユーライの斥候と連携し、爆炎符によるサンクレア騎士団の後援部隊の攻撃を計画していた。
その目的はアドルとハルト、そしてマーサを分断するようにするためである。
アドルがサンクレアの心臓を何より優先して動くだろうことは予想がついていた。
カイがサンクレアの心臓部を襲撃することにより、アドルを焦らせ、まずは彼を法王城へ固定する。一度サンクレアの心臓へ襲撃を受けた以上、万が一のことを考え、アドルはそこを離れることはしないだろう。
ハルトはどうなるかカイにも読めなかった。
すぐにアドルと同じようにサンクレアの心臓まで来たかもしれなければ、あくまで自分の持ち場を離れることはせず戦場に居続ける可能性もあり、あるいはマーサの後援部隊の治療に付き添っているかもしれないーー
だが、いずれにせよカイからすればアドル、ハルト、マーサが同じ場所にいる状態を解消出来ればそれが良かったのだ。全員を一度に相手にするのだけは絶対に避けたかった。そのための爆炎符による後援部隊の攻撃だった。
結果としては大成功だった。
アドルは法王城に固定出来、ハルトは戦場へ、マーサは後援部隊の治療に専念した。
まさかハルトとマーサが別行動までしてくれるとはあまり期待していなかったが、実際にそれが起きた。
これは絶好の機会だと思った。
マーサ単体であれば、葬るのに都合が良すぎるからだ。
聖女は基本的に殺傷能力を持たない。その力を攻撃魔法にリソースを割く余裕などないし、あってはならないからだ。
だから、防御一辺しか取り柄の無いマーサと一体一ならば簡単に彼女を殺せる・・・そのはずだった。
「どうやら、向こうもこっちを殺す気まんまんだとはな・・・」
マーサの周囲に攻撃魔法である光の玉が増え続ける。
本来回復魔法の研鑽に向けるべき魔力を、どうやら人知れず殺傷魔法の研鑽に使っていたとは思ってもみなかった。
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