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反逆
嫉妬故の悲劇
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イリスは聖女としての力も、国民からの人望もマーサを上回っていた。
少なくともマーサ自身はそう思っていたし、ずっと心の奥底で嫉妬の炎に身を焦がしていた。
そしてイリスのパートナーであり、恋人となった聖騎士カイ・・・
彼もまたマーサの心を苛つかせた。
マーサのパートナーであるハルトは家柄も悪くなく、性格も実力も申し分なかったが、それでも人望はカイの方が高かった。
それに誰もがカイを人類最強の男と褒めたたえる。
傭兵団だか何かの生き残りという卑しい身分なのだから、戦いに優れているのは当たり前だ、馬鹿馬鹿しいとマーサはずっと言いふらしたくてたまらなかった。
イリスもカイも、マーサにとって忌々しい障害物でしかなかった。
彼らのお陰で自分は十分な日の目を見ることができない・・・そんな被害妄想さえ感じていた。
しかしそれでもマーサは慈悲深いとされている聖女。
表面上はイリス達とも仲良くしなければならないことに、狂おしいほどの屈辱を常に感じながら生きなければならなかった。
いっそのこと死ねば良いのに。
マーサは聖女らしからぬ憎悪を抱き、ながら生きていた。
そんなマーサに転機が訪れた。
それはサンクレアを未曾有の危機に陥れた厄災『最後の抵抗』。
ハルトと共にサンクレアへの魔物の侵攻を食い止めていたマーサだったが、彼らの担当するエリアの魔物がまばらになると、余った兵をどこかに回そうかという話が持ち上がった。
マーサは実のところわかっていた。
イリスとカイの担当するエリアが、最も激戦となっていることを知っていたのだった。
だが、マーサはそこへ救援を出そうと考えたハルトに言った。
「待って。ここも今は良いけど、いつ不意に敵が増えるかわからないわ」
不安を仰ぐように言われ、ハルトは悩んだ。
「イリスやカイならきっと私達より強いから大丈夫かもしれないわ。けど、私達がここで抑えきれなければ、神都が魔物に蹂躙されてしまう・・・」
ハルトは悩んだ末、結果的にカイ達のところに増援を送るのをやめた。
ハルトは慎重派であり、そして自分の力にそこまでの自信を持っていなかった。カイの方が自分を上回る力を持っているというのも十分自覚していた。
それ故の決断だった。
(この戦いで死ねば良いのよ)
マーサは心の中でそのような邪悪なことを考えていた。
そして、彼女の思惑通り・・・激戦の中で身を守り切れなかったイリスは、死の避けられない呪いをかけられることになってしまったのである。
少なくともマーサ自身はそう思っていたし、ずっと心の奥底で嫉妬の炎に身を焦がしていた。
そしてイリスのパートナーであり、恋人となった聖騎士カイ・・・
彼もまたマーサの心を苛つかせた。
マーサのパートナーであるハルトは家柄も悪くなく、性格も実力も申し分なかったが、それでも人望はカイの方が高かった。
それに誰もがカイを人類最強の男と褒めたたえる。
傭兵団だか何かの生き残りという卑しい身分なのだから、戦いに優れているのは当たり前だ、馬鹿馬鹿しいとマーサはずっと言いふらしたくてたまらなかった。
イリスもカイも、マーサにとって忌々しい障害物でしかなかった。
彼らのお陰で自分は十分な日の目を見ることができない・・・そんな被害妄想さえ感じていた。
しかしそれでもマーサは慈悲深いとされている聖女。
表面上はイリス達とも仲良くしなければならないことに、狂おしいほどの屈辱を常に感じながら生きなければならなかった。
いっそのこと死ねば良いのに。
マーサは聖女らしからぬ憎悪を抱き、ながら生きていた。
そんなマーサに転機が訪れた。
それはサンクレアを未曾有の危機に陥れた厄災『最後の抵抗』。
ハルトと共にサンクレアへの魔物の侵攻を食い止めていたマーサだったが、彼らの担当するエリアの魔物がまばらになると、余った兵をどこかに回そうかという話が持ち上がった。
マーサは実のところわかっていた。
イリスとカイの担当するエリアが、最も激戦となっていることを知っていたのだった。
だが、マーサはそこへ救援を出そうと考えたハルトに言った。
「待って。ここも今は良いけど、いつ不意に敵が増えるかわからないわ」
不安を仰ぐように言われ、ハルトは悩んだ。
「イリスやカイならきっと私達より強いから大丈夫かもしれないわ。けど、私達がここで抑えきれなければ、神都が魔物に蹂躙されてしまう・・・」
ハルトは悩んだ末、結果的にカイ達のところに増援を送るのをやめた。
ハルトは慎重派であり、そして自分の力にそこまでの自信を持っていなかった。カイの方が自分を上回る力を持っているというのも十分自覚していた。
それ故の決断だった。
(この戦いで死ねば良いのよ)
マーサは心の中でそのような邪悪なことを考えていた。
そして、彼女の思惑通り・・・激戦の中で身を守り切れなかったイリスは、死の避けられない呪いをかけられることになってしまったのである。
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