聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

ただのカカシ

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(始まったか・・・)


神都のところどころで起こっている爆発の音を聞き、カイは思った。
爆炎符を発動させているのはカイではない。カイが使っていた薬によって、姿を消しているユーライ軍の斥候によって引き起こされているものだ。

だがカイは符によって起こされた爆発の音を聞くことが出来る位置にはいるが、現場にはいない。
表の爆発は騎士団を攪乱する意図もあるが、それは副産物に過ぎない。あくまで主目的は陽動であった。ハルトもアドルも、恐らくはすぐにはこちらには気付かないだろうーー


(さて・・・)


カイはそこに足を踏み入れる。
それは『サンクレアの心臓』へと続く隠し通路。本来ならばカイが知るはずもない、神国サンクレアの秘密。


(なるほど、ベルスの言った通りのようだな)


カイは認識阻害魔法により姿を隠されていた通路を歩きながら感心する。
カイにサンクレアの心臓のことを教えたのは闇医者ベルスであった。このサンクレアの心臓こそが、カイの目的の一つなのである。

カイは通路を進んでいく。
やがて、通路に3人の騎士がいるのを視界に納めた。


(あれは・・・)


カイにはその騎士達に見覚えがあった。
彼らは高位貴族の出身で、親の権力に物を言わせて騎士団で出世していたと記憶していた者達である。


(確か教会に召し上げられていったんだったな)


剣の実力はないが、それでも親の権力を使って不正をし、実績を捏造していった結果「身分も実力も申し分ない者」として教会直属の騎士として引き上げられていったのをカイは思い出した。
教会の、サンクレアの要を守る存在として、3人をここに配置したのかと推測した。


(だが・・・)


教会からすれば適切な人員配置だと思っていたのだろうが、実態は大きくかけ離れているというのがカイの抱いた印象だった。
3人の騎士は通路に立っているだけで、カイの存在に気付いていない。
カイは姿を消す薬を使っているからであるが、アドルやハルトのような手練れであれば恐らく気配で気づくだろう。いや、気配に鋭い聖女だって気付くはずだ。だが、騎士達はカイが目の前にまで来ても全く気付く様子はない。


(こんなものがサンクレアの要を守る砦か・・・カカシだな)


カイは呆れながら騎士達を避け、そのままサンクレアの心臓へと歩みを進めた。


(今日でお前たちの栄華なる人生も終わりだ。もう散々楽しんだろ?)


そう思いながら、カイは口角の上げるのだった。
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