聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

アドルの予感

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「待て、ハルト」


血気盛んに飛び出そうとするハルトを、アドルは引き留めた。


「一体何ですか?」


冷静なようでいて、それでも出鼻をくじかれたような状況にいくらか憤っているのか、ハルトの声は少しばかり苛立ちを含んでいた。


「いや・・・」


アドルは珍しく言い淀む。

ユーライ国軍が攻めてきたとなると、その場にはカイが来ている可能性が高い。
そしてカイが出るとなると、それに対抗できるのは聖騎士であるハルトだ。ハルトがいなければカイによる『剣撃飛ばし』で多くの兵が犠牲になるだろう。そうなれば総崩れとなり、想像以上の被害が出る可能性がある。
だからこそ、ハルトを前面に送り出し、その流れを作らせないというのが上層部の苦渋の判断だった。
ハルトは既にサンクレアにとって大事な大事な身分である。万が一にも死んでしまってはならないために、本来なら戦になど出したくすらないのが本音だ。

だが、こうして神都の目の前にユーライ国軍が現れたとなると、僅か・・・ほんのごく僅かではあるが神都が陥落する恐れが出てくる。
悩みに悩んだ末、上層部はハルトにサンクレア軍の前面に出て、カイの動きを止めるように命令を下したのだ。だから、何があってもハルトはこれから戦場の最前線に行かなければならない。


しかしーー


「騎士団長・・・?」


様子のおかしいアドルにハルトが訝しむ。
何かを言いかけたが言わない、アドルがそんな態度を取ることはハルトが思うに初めてのことであった。


「・・・何だか予感がするのだ。カイが正面からではない、違うところから何かを仕掛けようとしていると。迂闊に我々が動くべきではないと。そう予感がしてたまらないのだ」


アドルは絞り出すように言う。。
だが、それは上層部の命令に反することであった。
道理に合ったことであれば、アドルは多少無理をしてでも自分の責任ということでハルトに違うことを命じただろう。だが、今のアドルにはそうするだけの根拠が無かった。


「騎士団長。命令ですので、僕はもう行きます」


アドルの態度に疑問はあったが、それでも騎士団長より上のところから命令があった以上はそちらを優先せねばならない。ハルトは迷うことなく、アドルの制止を振り切り、戦場へ駆けていった。
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