聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

一先ずの沈静化

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『私はサンクレアの聖騎士ハルトです。神都にいらっしゃる皆さま、どうか落ち着いてください』


アドルに促され、ハルトが言った先は降臨の儀の前に法王がスピーチしていた会場であった。
ここでハルトが残るサンクレアの希望である聖騎士ハルトがスピーチをすることで、神都に広まった混乱を鎮めろとアドルは言った。
自分の言葉などが混乱する人達の耳に入るのか?とハルトは疑問に思ったが、それでも自分に出来ることがあるのならやろうというのがハルトの性格だった。
ハルトは音響装置の前でアドルの用意した原稿を読み上げる。


『先ほど恐れ知らずにも神聖なる降臨の儀の妨害をした愚かな元聖騎士カイは、既にこちらで居所が掴めております。聖騎士である私自身が討伐に乗り出すため、それほどお待たせすることなくカイを討ち、皆さまの不安を払拭することを約束いたしましょう』


そんなハルトの言葉を聞いて、神都中の人々はざわついた。
皆それぞれに顔を見合わせ、困惑している様子である。ハルトは更に言葉を続けた。


『ちなみに、先ほど聖女アルマも聖騎士クリスが討たれたとカイは言っておりましたが、今現在そのような事実は確認されておりません。彼女達は今、特命で遠方へ出ておりまして、身の安全については保証されておりますので、どうかご安心ください』


城下町の今だ混乱は収まりきってはいないが、当初よりはかなり落ち着いてきた様子を見てアドルは胸を撫でおろす。


『もう一度言いますが、カイは私が必ず討ちます。ですからサンクレアの皆さまの安全と安心が脅かされることはありません。どうかご安心ください。降臨の儀は全ての懸念を取り除いた後、日を改めて行います』


ハルトがスピーチを終えると、神都中から拍手が鳴り響いた。
全ての人間が拍手をしているわけではないが、それでも半数近くはハルトのスピーチに安心し、彼を称え柏手を打った。


(こんなの誤魔化しだ)


スピーチを終えたハルトは、拍手が自分に向けられていることを自覚しながらもその心は晴れなかった。
カイによるテロの脅威は去っていない。ハルトがカイを必ず討つと言っただけだ。クリス達の無事だって何一つ証拠はない。


「誤魔化しでしかない、そう思っているんだろう?だが、この場はこれで良い。後で帳尻を合わせれば良いだけなのだ。今はひとまず人々の混乱を抑え込むことが優先だ」


ハルトの心を見透かしたように、アドルが言った。


「言った以上は、我々でカイを必ず討たねばならんぞ。今すぐに、そして必ずだ。そうしなければ、サンクレアは滅びるぞ」
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