聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

神都の混乱

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カイによる暴露は、民主の間で大きな混乱を読んでいた。
根も葉もないような話なら誰も相手にしなかったかもしれない。だが、ユーライ国を完全制圧間近と言われてから続報が入らないこと、そして聖女アルマと聖騎士クリスが今日この大事な行事のときにも姿を見た者がいないことが、カイの話が真実であることを裏付けていた。


『サンクレアはじきに滅ぶ。それまでにこの都から離れることを私はオススメします。女神ラビスは救ってはくれませんよ。もしラビスに力があるのであれば私はこうすることも出来ずに、今頃ラビスの神罰が下っているはずですから』


そう言った次の瞬間、ドォォンと爆発音が聞こえ、サンクレアの法王城の一角が爆発した。
それは爆裂魔法の符によって引き起こされた爆発だった。透明になる薬を使い、カイが事前に仕掛けたものだ。
それを見た民主はカイの言葉通りにサンクレアの終わりが象徴されたかのような目の前の出来事に悲鳴を上げた。
空中に浮かび上がったラビスの幻影は、薄く笑みを浮かべたのみで反応を見せない。


『ほらね。ラビスは私に対して何もすることが出来ない。よくお分かりでしょう?神は無力。無力な神を崇めるこのサンクレアは滅ぶと。滅びのそのときまでよくお考えください。それではさようなら』


これによってカイの音声ジャックは止まった。



ーーーーー



「お、音響装置に介入する魔法の符が見つかりました!これで装置は正常に動きます!」


部下の報告に、アドルは溜め息をつきながら言った。


「もう遅い。遅すぎる」


首を横に振ってから重鎮達を見やると、彼らは顔面を蒼白にして「どうしてこんなことに」などと呟きながら震えていた。
今は指示を仰いでもろくな返事が返って来ないだろうと判断したアドルは、自分の判断でこの混乱を治めることを決断した。

女神ラビスは、最後まで空中に無意味に姿を見せたまま、やがて降臨の儀の終わりの予定時間がやってくると姿を消した。


「やれやれ、もう目茶苦茶だな」


アドルは深く溜め息をついて、神都中の混乱を治めるべく騎士団に命令を下すのであった。
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