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反逆

サンクレアの混乱

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神国サンクレアの上層部には激震が走った。

まず聖騎士クリス、そして聖女アルマの両名の死の報が上層部連中の頭を激しく打ち付けたが、その衝撃が収まらないうちから、今度はユーライ国の首都が国王軍により奪還されてしまったという報が入る。


「一体どういうことでしょうか」


サンクレアのトップ、法王ランスの威厳ある声が会議室に響いた。
重鎮達は皆、重苦しい空気に気圧され、一言も言葉を発することなく俯いている。


「聖騎士と聖女が討たれたばかりではなく、ユーライ国すら奪還させられそうであるとは・・・」


首都が奪還されてからというものの、ユーライ各地にいるサンクレアの占領軍は国王軍との戦いにおいて連敗に次ぐ連敗であり、現地民の反逆によって占領状態が解かれてしまったところもあるという有様だった。一度は征服したはずのユーライは、今は完全にサンクレアの支配から解かれている状態と言って良い。

今だ市井に情報が出回る段階ではないが、それでも知れ渡ってしまうことは時間の問題と言えた。耳の早い商人何かは既に知っている可能性だってある。
事情があったとはいえ、派手に戦勝祝いを勇み足でやってしまったことに重鎮達は後悔している。戦勝祝いをしたのに、勝ってない。それどころか国の軍事力の象徴である聖騎士と聖女が討たれた。
これは完全にサンクレアの権威の失墜に繋がる大失態と言えた。


「アドル。説明しなさい」


重鎮の一人が、呼び出しておいたアドル騎士団長に説明を求める。


「はい。此度の聖騎士と聖女の損失につきましては、全く私の不行き届きであると言わざるを得ません」


アドルは鎮痛な表情を浮かべ、はっきりとそう言った。


「聖騎士クリスは独断によりユーライ国王を討つべく行動しておりました。今回彼女を自由にさせてしまっていたことが、裏目に出たという他ありません」


クリスはアドルに詳細を話すことなく、自分の考えで行動してユーライ王を討とうとしていた。今回に限らずクリスには独断行動が多い。それは羞恥の事実であったし、これに対してはアドルに責任を問うのも厳しい話であるのだが、アドルは特にそれに対し申し開きをすることはなかった。


「聖騎士と聖女についてもそうだが、反逆者カイが生きているというのが問題だ」


重鎮の一人が言った。
アドルの報告ではカイは死亡したはずだった。だが生きていた。
そのカイがユーライ解放の立役者となり、しかもクリスとアルマを討った可能性が高いと考えられている。
カイが生きていた故に起きたこれらの惨事。
クリスのことはともかく、カイのことについては死んだだろうと報告したアドルに責任があると考えられた。


「これについてはどう説明しますか?アドル」


法王の目が鋭くアドルを貫く。
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