聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

文字の大きさ
上 下
56 / 203
反逆

決起の時は近い

しおりを挟む
「長官!街中にこのような紙が多数貼られております!!」


部下の報告を聞き、ジーミルは眉を顰める。


「見せてみよ」


部下からひったくるように紙に目を通したジーミルは、怒りのあまり一瞬でその紙をバラバラにしてしまった。

『決起の時は近い。その瞬間を見逃すな』

紙にはそうとだけ書いてあった。



「悪戯にしては度が越しているな。生き残った旧国王の仕業だろうな」


忌々しそうにジーミルは顔を歪める。
ジワジワと追い詰め、あと半月もしないうちに抵抗勢力は潰せるだろう・・・そう考えていたジーミルだったが、まさかの行動に驚きを隠せない。


「今すぐ剥がして回れ!こんなものをここの土人どもに見せれば、奴ら勘違いして面倒なことを起こすに決まっている!」


サンクレアの進駐軍に対し、反旗を翻すーーー
現地民だけがここで反乱を起こしたとて、出来ることはたかが知れている。騎士と平民の力の差は言うまでもなく大きく隔てられている。一日もかからず暴動を鎮圧することができるだろう。だが、それがユーライ国全土に感染すると面倒なことになる。ジーミルの責任問題にも発展するだろう事態に、ジーミルは火消しのためにすぐさま行動に移そうと命令を下す。


「長官、それが・・・現在も次々と紙は街中に貼られていて、全てが処理し切れていません」


部下はジーミルの命令に対し、申し訳なさそうにそう返した。


「何だと!?犯人をすぐに見つけて殺せ!そんなことも言われなければできないのか!」


激昂するジーミルに、部下は更に言う。


「もちろん我々も全力で対応に当たっていますが、何分この都は広い上に、犯人も神出鬼没でしてどれだけ監視を目を広げても見つけられていません・・・」


「神出鬼没・・・だと?そんなバカなことがあるか!必ず見つけ出せ!!」


ジーミルは血管が切れそうなほど怒りながらも、大声で部下を怒鳴りつける。
結局この日、街中で紙は貼られ続け、聖騎士達の首についても噂が広がった。首を晒したのも、紙を貼ったのも結局騎士団は犯人の姿を見る事すら出来なかった。
犯人は、ベルスから貰った透明薬を使って姿を消していたカイだったとは誰も気づけるはずもない。

そしてこの騒動から更に二日後、更に進駐軍を震撼させる出来事があるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...