聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

火消しする騎士達

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ジーミルは走った。
息を切らしながら、全力で走った。
人混みをかき分け、「どけ!」と大声を出しながら進む。何十人もの人間をかき分け、そしてようやくたどり着いた場所にそれはあった。


「なっ・・・まさか・・・」


ジーミルは呆然とそれを見上げる。

そこは街の中心にある断頭台がある広場であった。断頭台は進駐軍が見せしめのために現地の権力者を処刑しようと用意したものだ。見せしめのためなので断頭台は高さがそれなりに設けてあり、広場のどこからでも見ることが出来る。だから、誰もがそこにあるものを目にすることが出来た。


見えやすいように用意された台の上にあったそれは、聖騎士クリスと聖女アルマの首であった。
大きく横断幕が掲げられ、そこには『ユーライに仇成したサンクレアの聖騎士クリスと聖女アルマは、復讐の元聖騎士カイによって討たれた』と書かれている。


「ばっ・・・馬鹿なっ!?」


ジーミルは慌てて断頭台を駆け上がる。
祖国の英雄二人が、まさかこんなところで首を晒されているなどと、そんなことが信じられるはずがなかった。
鬼神のような力を持つ聖騎士、そして絶大なる魔力を持ち、如何なる怪我をも治癒する聖女が殺されるなどということは、サンクレアの沽券に関わることで絶対にあってはならないことだからだ。


「・・・」


ジーミルは実際にクリス達の首を前に、言葉を失った。
クリスとアルマともに面識のあるジーミルにはわかった。間違いなく、本人達の首であると。
そして次の瞬間、今の状況が非常によろしくないことを理解する。

サンクレアは強大な軍事力を示すことで各国へラビス教の信仰を押し付け、実効支配をしている。
だが今、その軍事力の象徴と言える聖騎士と聖女が、二人して殺されたという事実がよりによってまだ支配の完了しきっていないこのユーライで、市井の前に晒されてしまっているのだ。
更にまずいのは、その象徴の一人である聖騎士がサンクレアを裏切り、ユーライの味方をしようという内容のメッセージが添えられていること。

広場のざわめきが大きくなる。
民主の心に反骨心が芽生えようとしているのがジーミルにはわかった。


「くだらない悪戯だ!この首は聖騎士と聖女様の物ではない!」


ジーミルは広場にいる民主に聞こえるように大声で言った。


「この首は全くの別人の物だ!このような悪戯をした者には容赦はしない!覚悟をしておけ!!」


そう叫ぶと、配下の騎士達にクリス達の首を運ばせる。
偽物とは言ったものの、実のところ本物である。本物である以上は、極秘裏にでも本国に丁重に送らねばならなかったので、ジーミルは小声で騎士達にそのように伝える。状況を理解したらしい騎士達は、丁寧に首を運んでいった。横断幕も他の騎士によって剝がされる。

(・・・これでどうだ)

ジーミルはちらりと広場に集まっている民主を流し見る。
皆、訝しんだ様子でジーミル達を見ているが、どうやらこの場で決起することはなさそうだったので、ホッとジーミルは胸を撫でおろした。


だが、そんなジーミルの度肝を抜く出来事は。他にも起きようとしていた。
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