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反逆

ブラフ

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爆発音が耳に入り、一瞬だけ視線を右後方・・・アルマのいる方へ向けるクリス。
爆発したそれはカイが王都をかく乱する際に使った時限性の爆炎魔法の札であった。最初にアルマに斬りかかったとき、こっそりと周辺に札を置いておいたのである。
爆発は障壁を張っているアルマを傷つけることはなかったが、それが意識をカイから逸らすための目晦ましのためのものであることに気付いたときには、既にカイはクリスの目前まで接近を済ませていた。

(まずいっ)

クリスがそう思い、すぐに視線をカイの方へと戻すーーも、そこにカイの姿は無かった。


「!?」


なんてことはない、正面から来るはずだったカイが、爆発音で気を持っていかれた僅かな間に少し場所をクリスから見て左にずらして彼女の視線から逸れただけのこと。
しかしたったそれだけのことで、クリスは一瞬だがカイが消えたものと錯覚した。再びカイをクリスが視線に捉える頃には、カイの剣はクリスに届いていた。


ザンッ


カイが潜り込んだクリスから見て左側は、クリスが聖剣の大剣からの形に持ち替えたほう手があるところだ。
糸ではカイの剣は防げない。猪突猛進のカイを罠にはめるために武器を糸に持ち替えたことは、皮肉にもカイに攻撃を許すことになってしまった。


「あっ・・・!」


カイの剣はクリスの体を糸ごと真一文に切り裂いた。
声にならない悲鳴を上げるクリス。もはや体勢を立て直すことも叶わない。


「!?」


いささか冷静さを欠きながら事態に対処しようとあがくクリスは、自分の目に映ったものに驚愕した。
クリスに追撃しようと剣を振りかぶるカイの顔は、決して怒りに狂っておらず無表情で、その目はただただ彼女を冷静に捉えていた。

(あぁ、ブラフでしたのね)


怒りに身を任せて、自暴自棄に攻撃を繰り出してくるカイの姿はあくまで油断させるためのブラフだったとクリスは気付く。
とっておきの内緒話をぶちまけたことで、カイが平静さを欠いたことを疑いもしなかったことが敗因だ。
カイはクリスが仕掛けた罠すら見破り、逆にそれを利用してみせた。完敗だとクリスは血を流しながらほくそ笑む。


ザンッ


二撃目の袈裟斬りが容赦なくクリスに命中する。
クリスは一撃目で既に体勢を崩していたが、二撃目で激しく血を吹き、完全にクリスは脱力して地面に身を投げ出すことになった。

カイとクリスとの戦いはこれで決着した。
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