51 / 203
反逆
ブラフ
しおりを挟む
爆発音が耳に入り、一瞬だけ視線を右後方・・・アルマのいる方へ向けるクリス。
爆発したそれはカイが王都をかく乱する際に使った時限性の爆炎魔法の札であった。最初にアルマに斬りかかったとき、こっそりと周辺に札を置いておいたのである。
爆発は障壁を張っているアルマを傷つけることはなかったが、それが意識をカイから逸らすための目晦ましのためのものであることに気付いたときには、既にカイはクリスの目前まで接近を済ませていた。
(まずいっ)
クリスがそう思い、すぐに視線をカイの方へと戻すーーも、そこにカイの姿は無かった。
「!?」
なんてことはない、正面から来るはずだったカイが、爆発音で気を持っていかれた僅かな間に少し場所をクリスから見て左にずらして彼女の視線から逸れただけのこと。
しかしたったそれだけのことで、クリスは一瞬だがカイが消えたものと錯覚した。再びカイをクリスが視線に捉える頃には、カイの剣はクリスに届いていた。
ザンッ
カイが潜り込んだクリスから見て左側は、クリスが聖剣の大剣から糸の形に持ち替えたほう手があるところだ。
糸ではカイの剣は防げない。猪突猛進のカイを罠にはめるために武器を糸に持ち替えたことは、皮肉にもカイに攻撃を許すことになってしまった。
「あっ・・・!」
カイの剣はクリスの体を糸ごと真一文に切り裂いた。
声にならない悲鳴を上げるクリス。もはや体勢を立て直すことも叶わない。
「!?」
いささか冷静さを欠きながら事態に対処しようとあがくクリスは、自分の目に映ったものに驚愕した。
クリスに追撃しようと剣を振りかぶるカイの顔は、決して怒りに狂っておらず無表情で、その目はただただ彼女を冷静に捉えていた。
(あぁ、ブラフでしたのね)
怒りに身を任せて、自暴自棄に攻撃を繰り出してくるカイの姿はあくまで油断させるためのブラフだったとクリスは気付く。
とっておきの内緒話をぶちまけたことで、カイが平静さを欠いたことを疑いもしなかったことが敗因だ。
カイはクリスが仕掛けた罠すら見破り、逆にそれを利用してみせた。完敗だとクリスは血を流しながらほくそ笑む。
ザンッ
二撃目の袈裟斬りが容赦なくクリスに命中する。
クリスは一撃目で既に体勢を崩していたが、二撃目で激しく血を吹き、完全にクリスは脱力して地面に身を投げ出すことになった。
カイとクリスとの戦いはこれで決着した。
爆発したそれはカイが王都をかく乱する際に使った時限性の爆炎魔法の札であった。最初にアルマに斬りかかったとき、こっそりと周辺に札を置いておいたのである。
爆発は障壁を張っているアルマを傷つけることはなかったが、それが意識をカイから逸らすための目晦ましのためのものであることに気付いたときには、既にカイはクリスの目前まで接近を済ませていた。
(まずいっ)
クリスがそう思い、すぐに視線をカイの方へと戻すーーも、そこにカイの姿は無かった。
「!?」
なんてことはない、正面から来るはずだったカイが、爆発音で気を持っていかれた僅かな間に少し場所をクリスから見て左にずらして彼女の視線から逸れただけのこと。
しかしたったそれだけのことで、クリスは一瞬だがカイが消えたものと錯覚した。再びカイをクリスが視線に捉える頃には、カイの剣はクリスに届いていた。
ザンッ
カイが潜り込んだクリスから見て左側は、クリスが聖剣の大剣から糸の形に持ち替えたほう手があるところだ。
糸ではカイの剣は防げない。猪突猛進のカイを罠にはめるために武器を糸に持ち替えたことは、皮肉にもカイに攻撃を許すことになってしまった。
「あっ・・・!」
カイの剣はクリスの体を糸ごと真一文に切り裂いた。
声にならない悲鳴を上げるクリス。もはや体勢を立て直すことも叶わない。
「!?」
いささか冷静さを欠きながら事態に対処しようとあがくクリスは、自分の目に映ったものに驚愕した。
クリスに追撃しようと剣を振りかぶるカイの顔は、決して怒りに狂っておらず無表情で、その目はただただ彼女を冷静に捉えていた。
(あぁ、ブラフでしたのね)
怒りに身を任せて、自暴自棄に攻撃を繰り出してくるカイの姿はあくまで油断させるためのブラフだったとクリスは気付く。
とっておきの内緒話をぶちまけたことで、カイが平静さを欠いたことを疑いもしなかったことが敗因だ。
カイはクリスが仕掛けた罠すら見破り、逆にそれを利用してみせた。完敗だとクリスは血を流しながらほくそ笑む。
ザンッ
二撃目の袈裟斬りが容赦なくクリスに命中する。
クリスは一撃目で既に体勢を崩していたが、二撃目で激しく血を吹き、完全にクリスは脱力して地面に身を投げ出すことになった。
カイとクリスとの戦いはこれで決着した。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
比べないでください
わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」
「ビクトリアならそんなことは言わない」
前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。
もう、うんざりです。
そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
旅の道連れ、さようなら【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。
いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。
夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる