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反逆

クリスの懺悔

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カイに相手にされなかったクリスはよりカイに傾倒するようになったが、それに最大の障害が立ちはだかる。


「人の男に手を出してんじゃねぇよ!」


聖女イリス。
カイのパートナーにして、彼の恋人。
クリスはおちゃらけた態度でその場を濁す。聖騎士達と聖女達は、それぞれが一組でも不仲であるようなことがあってはならない。自由奔放なクリスとて、後々面倒になるのでそこだけは守っていたので、イリスとは致命的な衝突まではしなかった。

だが、クリスの内心はイリスへの憎しみで一杯だった。
カイの意志で自分が袖にされるだけならいい。だが、イリスの妨害で自分の想いが邪魔されるのだけは我慢が出来なかった。


だからクリスはーーー・・・












「はっ!?」


ほんの一瞬、考え事をしていたクリスの頬をカイの太刀がかすめる。


「あら」


大剣の二刀流に最初こそ翻弄されていたはずのカイも、ほんの少しずつ慣れてきたのか攻撃がクリスに届きそうになってきた。
カイが正面からクリスを睨み、隙を突こうと伺っている。


(あぁ、そんな目で見られたら・・・!)


「っ!!」


などと悦に浸ってばかりもいられない。
クリスの剣筋の隙間を結うように、ほんの閃光ほどの機会を伺うように、カイは虎視眈々とクリスの動きを観察しつつ、剣を打ち込んでくるようになってきた。


「っっっ!」


カイの斬撃がクリスの太ももを僅かに切り裂いた。
どんどんカイの太刀がクリスに届くようになっている。

聖騎士カイの強みは、そのタフさと適応力だ。
とにかくタフで、長期戦になってもひたすら粘り続けられるだけのメンタルとスタミナが飛びぬけていた。
膠着状態になっているかと思いきや、その実、少しずつカイにペースを持っていかれる・・・ カイと訓練兵時代に模擬戦をやって、クリスはそれが嫌と言うほど理解できていた。

カイはクリスの大剣二刀流に慣れつつあった。
何度も踏み込み、何度も危険な目に遭いながら、少しずつクリスのスタイルに垣間見える突破口を切り開いていく。
戦いの中で恐ろしい速さで成長するのがカイの強さ、恐ろしさ。焦らず、冷静に相手を分析して、そして最後には勝利する。
最初は防戦主体だったカイが、いつの間にか攻めるようになっていた。


「流石ワタクシのカイ。けど、冷静でいられなくなればどうなのかしら?」


クリスはニヤリと笑って言った。
冷静さと忍耐強さがカイの強み。では、それらを揺さぶってやればどうなるか・・・クリスはカイのそんな一面を見てみたかった。


「なんだ?ストリップでもして俺を喜ばせるのか?」


飄々と言ってのけるカイだが、それでも視線はクリスから外さない。
隙を見せればその瞬間に斬りかかる、そんな顔だ。


「いえ、さらけ出すのはワタクシの裸体ではなく、罪の方です」


「あ?」


訝しむカイを見て、クリスは笑いながら言った。


「イリスに呪いがかけられたのは、ワタクシの手によるもの・・・という罪のことですわ」
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