聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

文字の大きさ
上 下
44 / 203
反逆

滅茶苦茶な聖騎士

しおりを挟む
「・・・あぁ?」


カイは止まらぬ剣撃によって、クリスを追い詰めたと確信していた。
だが、最後に捉えた!と思った瞬間、カイの剣は何かに阻まれることになった。


「っ!!」


瞬時に、カイは直感的に危険を察知し、後方へ下がる。
僅差でカイの目の前をクリスの大剣の切っ先が通り抜けていった。あと一瞬遅かったら顔面を真一文に切り裂かれていたことだろう。


「あらあらウフフ♪今のは流石にしてやったりと思ったのですけど、ワタクシのカイですわ」


そう言うクリスは妖艶な笑みを浮かべながら大剣を構え直す。


「ありかよ、そういうの」


カイは呆然として呟いた。

クリスの大剣はいつの間にか二本になっていたのだ。右手の大剣は冗談に構え、左手のそれは下段構え。線の細い少女が身の丈以上の大剣を両手に持っている姿は異様である。
だが、大剣を振り回すが常のクリスからするとこれはハッタリでもなんでもない。実際に彼女は持て余すことなく大剣二刀流を扱えるとわかっているからこそ、カイは恐れを抱いていた。


「ウッフフ。我が聖剣は無形にて変幻自在。カイを相手にする場合、これまでのスタイルですと手数で負けてしまうので、二刀にすれば攻守一体で互角に戦えるようになる・・・そう考えて編み出したのですわ♪」


「お前は何を言ってるんだ」


思わず軽口を叩くカイだが、実際のところ冷や汗が止まらなかった。
クリスが言うのは滅茶苦茶な理論だが、クリスはカイにも負けぬ腕力を持っており、大剣を軽々と扱える。体積のでかい大剣を攻撃兼防御に使われるので、先ほどと違い確かに隙がない。


「行きますわ!」


おしゃべりもそこそこに、クリスは回転しながら二刀を振り回し、竜巻のようになってカイに迫る。


(まずいっ!)


たまらずカイは上空で飛び逃げるが、クリスはピタリと回転を止めると、空中で無防備になったカイを追撃するように自身も飛んだ。


「ちっ」


クリスの斬撃をカイが剣で受ける。変幻自在といえどクリスの聖剣の質量は本物だ。大剣は大剣の重さを持っている。剣で受けたとはいえ、巨大な鉄塊に殴られたも同然のカイは、吹き飛ばされ地面に体を叩きつけられた。


「ぐっ・・・」


受け身を取ったがダメージが大きく、剣を受けた手が痺れていた。

(今畳みかけられたらキツイ)

そう警戒するが、クリスは畳みかけてくることはせず、立ち止まってゆっくりとカイに向き直る。


「すぐに終わらせるなんて野暮はしませんわ♪楽しみましょう・・・」


ペロリと唇を舐めるクリスは、カイとの戦いを心から楽しんでいた。


「やっぱ滅茶苦茶だわクリス。ほんと、苦手だなお前だけは」


カイはそう言ってクリスを睨みつける。クリスはその視線を正面から受け止め、嬉しそうに微笑んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

処理中です...