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反逆
侵略国サンクレア
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「なんですって!?」
すっかり驚き役が板についた男、ハルトは驚愕した。
「言った通りだ。呪術師を潜り込ませ、聖騎士カイを呪術を使って惑わせた疑いがユーライ国にはある。我が国の調査団受け入れを打診し、断るようなら戦となる」
アドルは騎士団長室にてハルトに上の決定を伝えた。
先日の会議の際、アドル達が退室した後で決まったことだった。
ユーライ国はサンクレアから一国隔てたところにある国であり、ラビス教と違う土地神を信仰しているためか国交がそれほど活発に行われていない国であった。むしろラビス教を絶対神と定め、世界中に信徒を増やし支部を拡大させていくサンクレアとは反りが合わない。
そんなユーライでは魔法よりも昔より国に伝わる呪術の方が盛んに使われており、中には人心を惑わすものまであるという。今回聖騎士であったカイの反逆は、そのユーライの者の手によって心を惑わされたことによって起きたということになっていた。それが上が考えた筋書きである。もちろん、なんの根拠も無い話だった。
「ユーライは我が国に対してしてあまり友好的とは言い難い国です。恐らく調査団の受け入れは拒否すると思います・・・」
「だろうな」
「なら!戦になることは明白ではありませんか!」
「そういうことだ」
「なっ・・・」
あっさりと言ってのけるアドルに、ハルトは絶句して目を見開く。
「カイの反逆による聖騎士のイメージ低下を最小限に留めると同時に、ユーライを攻め込む理由を作り上げた・・・そんなところだろう」
「そんな・・・」
「サンクレアは過去にラビス教を信仰しない邪教国を滅ぼしたことがある。お前とて習ったことはあるだろう?今回それと同じことをする。それだけだ」
「・・・」
「これまでは魔族がいたために二面戦争になることを避けるために動かなかったに過ぎん。だがもはや魔族はいない。だから動くことにした。カイのことはきっかけに過ぎんのだ」
神国サンクレアは世界中をラビス教信仰国にするための覇権主義国である。
これまでは魔族というわかりやすい人類共通の敵との戦いに明け暮れていたためにハルトも見て見ぬふりがしやすかったが、その魔族が滅した今、サンクレアの「侵略常習国」の一面を嫌でも見ることになった。
「戦となればお前には先陣を切ってもらわねばならん。今のうちに体を慣らしておけよ」
ハルトはアドルのその言葉を聞いて愕然としつつも、反論も何もすることができなかった。
世界中にラビス教を教え広めることは、女神ラビスの願いであると教えられてきたからである。そうすることによって、全人類は争いをしなくなり、本当の意味で一つになることができるのだという。
ハルトはその教えこそが正しいのだと、自分に言い聞かせて心に湧いたモヤモヤ感を振り切った。
数日後、ユーライ国はサンクレアの要請を拒否。
アドルの言うように戦争へと突入した。
すっかり驚き役が板についた男、ハルトは驚愕した。
「言った通りだ。呪術師を潜り込ませ、聖騎士カイを呪術を使って惑わせた疑いがユーライ国にはある。我が国の調査団受け入れを打診し、断るようなら戦となる」
アドルは騎士団長室にてハルトに上の決定を伝えた。
先日の会議の際、アドル達が退室した後で決まったことだった。
ユーライ国はサンクレアから一国隔てたところにある国であり、ラビス教と違う土地神を信仰しているためか国交がそれほど活発に行われていない国であった。むしろラビス教を絶対神と定め、世界中に信徒を増やし支部を拡大させていくサンクレアとは反りが合わない。
そんなユーライでは魔法よりも昔より国に伝わる呪術の方が盛んに使われており、中には人心を惑わすものまであるという。今回聖騎士であったカイの反逆は、そのユーライの者の手によって心を惑わされたことによって起きたということになっていた。それが上が考えた筋書きである。もちろん、なんの根拠も無い話だった。
「ユーライは我が国に対してしてあまり友好的とは言い難い国です。恐らく調査団の受け入れは拒否すると思います・・・」
「だろうな」
「なら!戦になることは明白ではありませんか!」
「そういうことだ」
「なっ・・・」
あっさりと言ってのけるアドルに、ハルトは絶句して目を見開く。
「カイの反逆による聖騎士のイメージ低下を最小限に留めると同時に、ユーライを攻め込む理由を作り上げた・・・そんなところだろう」
「そんな・・・」
「サンクレアは過去にラビス教を信仰しない邪教国を滅ぼしたことがある。お前とて習ったことはあるだろう?今回それと同じことをする。それだけだ」
「・・・」
「これまでは魔族がいたために二面戦争になることを避けるために動かなかったに過ぎん。だがもはや魔族はいない。だから動くことにした。カイのことはきっかけに過ぎんのだ」
神国サンクレアは世界中をラビス教信仰国にするための覇権主義国である。
これまでは魔族というわかりやすい人類共通の敵との戦いに明け暮れていたためにハルトも見て見ぬふりがしやすかったが、その魔族が滅した今、サンクレアの「侵略常習国」の一面を嫌でも見ることになった。
「戦となればお前には先陣を切ってもらわねばならん。今のうちに体を慣らしておけよ」
ハルトはアドルのその言葉を聞いて愕然としつつも、反論も何もすることができなかった。
世界中にラビス教を教え広めることは、女神ラビスの願いであると教えられてきたからである。そうすることによって、全人類は争いをしなくなり、本当の意味で一つになることができるのだという。
ハルトはその教えこそが正しいのだと、自分に言い聞かせて心に湧いたモヤモヤ感を振り切った。
数日後、ユーライ国はサンクレアの要請を拒否。
アドルの言うように戦争へと突入した。
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