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反逆
歪んだ女の愛しいカイ
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サンクレアにいる4人の聖騎士の一人、絶世の美女と評されるクリス・ラミアスは異色の聖騎士であった。
珍しい女性聖騎士だから、というわけではない。特徴的なのは彼女のその性格にあった。
自由奔放ーー
クリスの性格はその一言に尽きる。最低限の命令は従うが、基本的には訓練も行事も気まぐれでの参加である。聖騎士としての確かな実力さえなければ、聖騎士はおろか騎士団にもいられない。
とりわけクリスが奔放なのは貞操観念に対してである。
彼女は婚約者の有無に関わらず気に入った男を閨に誘い、関係を持つという悪癖があった。
聖騎士ならぬ性騎士、聖女ではないが性女…そのような言われようである彼女は、美男子も醜男も関係なく「気に入った部分」さえあればすぐに誘ってしまい、そして実際に一度関係を持つと飽きてしまう。
誘いに乗ってしまい、身を滅ぼした男は数知れず。実に呆れた困った女であった。
ちなみにハルトのことは生理的に相容れないらしく、誘ってすらいない。
しかしそんなクリスでも唯一誘惑出来なかった男がいた。
それが同じ聖騎士であるカイだった。カイは早くから騎士団では抜きん出た成績を叩き出し、総合力では聖騎士の中でも最強と言われていた。そんなカイに目をつけたクリスはいつものように彼を誘惑するが、押しても引いてもびくともせずに完敗。
以来、クリスはカイこそが運命の人と決め込んで彼を慕うようになった。
それまでにいそしんでいた男漁りはプッツリとやめ、ずっとカイにアプローチを続けてきたクリス。カイと聖女イリスが恋仲であると知っても、構わず彼を誘惑し続けた。そしてそのたびに袖にされ、クリスの情熱は更に強く熱く加速していくーーー
情熱に流され、いろいろと手を尽くしていた矢先に今回の出来事である。
「とても嬉しそうですねクリス様」
聖女アルマが言った。
クリスは元は司教の娘。アルマはクリスの侍女だった。
「それはそうですわ。ワタクシのカイが死んでしまったと聞き、一時は絶望しそうになってしまいましたもの。けど、それは杞憂で終わりそうで何よりですわ」
頬に手を添え、クリスはうっとりとして呟くように言った。
「流石ワタクシのカイ。そこらのつまらない男とはわけが違いますわ・・・」
「お探しになりますか?」
「いいえ」
アルマの問いに、クリスは頭を振る。
「きっと近いうちにあちらから姿を見せますわ。ワタクシ、カイのことなら何でもわかりますの。あぁ、やはり追う恋よりも待つ恋の方がときめきますわ・・・」
そう言って虚空を見つめるクリスの笑みは歪んでいた。
珍しい女性聖騎士だから、というわけではない。特徴的なのは彼女のその性格にあった。
自由奔放ーー
クリスの性格はその一言に尽きる。最低限の命令は従うが、基本的には訓練も行事も気まぐれでの参加である。聖騎士としての確かな実力さえなければ、聖騎士はおろか騎士団にもいられない。
とりわけクリスが奔放なのは貞操観念に対してである。
彼女は婚約者の有無に関わらず気に入った男を閨に誘い、関係を持つという悪癖があった。
聖騎士ならぬ性騎士、聖女ではないが性女…そのような言われようである彼女は、美男子も醜男も関係なく「気に入った部分」さえあればすぐに誘ってしまい、そして実際に一度関係を持つと飽きてしまう。
誘いに乗ってしまい、身を滅ぼした男は数知れず。実に呆れた困った女であった。
ちなみにハルトのことは生理的に相容れないらしく、誘ってすらいない。
しかしそんなクリスでも唯一誘惑出来なかった男がいた。
それが同じ聖騎士であるカイだった。カイは早くから騎士団では抜きん出た成績を叩き出し、総合力では聖騎士の中でも最強と言われていた。そんなカイに目をつけたクリスはいつものように彼を誘惑するが、押しても引いてもびくともせずに完敗。
以来、クリスはカイこそが運命の人と決め込んで彼を慕うようになった。
それまでにいそしんでいた男漁りはプッツリとやめ、ずっとカイにアプローチを続けてきたクリス。カイと聖女イリスが恋仲であると知っても、構わず彼を誘惑し続けた。そしてそのたびに袖にされ、クリスの情熱は更に強く熱く加速していくーーー
情熱に流され、いろいろと手を尽くしていた矢先に今回の出来事である。
「とても嬉しそうですねクリス様」
聖女アルマが言った。
クリスは元は司教の娘。アルマはクリスの侍女だった。
「それはそうですわ。ワタクシのカイが死んでしまったと聞き、一時は絶望しそうになってしまいましたもの。けど、それは杞憂で終わりそうで何よりですわ」
頬に手を添え、クリスはうっとりとして呟くように言った。
「流石ワタクシのカイ。そこらのつまらない男とはわけが違いますわ・・・」
「お探しになりますか?」
「いいえ」
アルマの問いに、クリスは頭を振る。
「きっと近いうちにあちらから姿を見せますわ。ワタクシ、カイのことなら何でもわかりますの。あぁ、やはり追う恋よりも待つ恋の方がときめきますわ・・・」
そう言って虚空を見つめるクリスの笑みは歪んでいた。
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