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反逆
聖騎士クリス
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「ハルトさん。お話を伺いたいのですが、少し宜しいですわね?」
アドルと別れ、なおも憤慨し続けるハルトは突然声をかけられた。
有無を言わせぬ物言いに、振り向くまでもなく相手が誰であるかハルトにはわかってしまう。
「・・・クリスさん」
ハルトは振り返り、呆然と呟いた。
ハルトの視線の先にはクリス・ラミアスーー サンクレアの聖騎士の一人が立っていた。その後ろには彼女のパートナーである聖女アルマが控え、ぺこりとハルトに頭を下げる。
聖騎士は稀に女性が選ばれることもあり、クリスがそれである。
綺麗な金色の長髪、絶世の美人と言われる顔、艶のある声質。戦に明け暮れ、泥臭いイメージの定着しているはずの聖騎士の中では異色な存在であった。
美の化身とさえ言われる美貌を持つ彼女だが、正騎士に選ばれるだけあって剣の腕は確かである。
「聖騎士カイが亡くなったというのは・・・本当ですの?」
見る者を切り裂くかのような鋭い瞳でハルトを睨みつけながら、クリスは問う。
「本当だよ」
ハルトはその目線に怯むことなく答えた。瞬間ーー
ガシッ
「っ!!」
ハルトは胸倉をクリスに掴まれた。
尋常ならざる力で捕まれ、ハルトは思わず顔を顰める。
「何ですって!?何があったのか全部話しなさいな!!」
強烈な殺気をぶつけられ、ハルトも流石にこれには怯みながらもクリスの手を弾く。
カイの反逆の際はクリスは遠征に出かけており、サンクレアを留守にしていた。サンクレアで起きたことはろくに知らされておらず、帰ってきたのはつい先ほどのことだった。
ーーーーー
「・・・何ということですの・・・そんなことが・・・」
ハルトの話を聞き、クリスはショックに打ちひしがれ、体をよろけさせる。
「信じられないかもしれないけど、それが全てだよ。僕にはどうすることもできなかった」
己の無力を思い出し、ハルトは拳を握り締める。
カイを説得することも、彼の暴挙を止めることも、アドルの大怪我を防ぐことも、何も出来なかった。
自嘲気味になるハルトに追い打ちをかけるように、クリスはまたも彼の胸倉を掴んだ。
「それで!?カイは!カイの遺体はどこにありまして??」
目を見開きながらのド迫力で迫られ、ハルトは自嘲に浸る暇もなく質問に追われることになる。
「遺体はっ、見つかっていない!だがっ、あの爆発では長くは生きられないっ!」
胸倉を掴まれた状態のまま揺さぶられ、どうにか返答をするとハルトは突然解放され、思わずよろけて壁に背をつけてしまう。ハルトは咳き込みながらアドルの言葉を思い出していた。
『私と同じように爆炎を受けたカイは長くは生きられまい。ポーションで自分を治すくらいなら、無駄だとわかっていてもイリスの治療を優先するはずだ。二人して死に、亡骸は森の野獣が食ってしまっているだろう』
アドルはそう予想していた。
実際あれ以降、騎士団総出でカイ達を捜索したが、目撃証言の一つすら手に入れることはなかった。恐らくカイ達は死に、遺体は跡形もなく野獣に食われた・・・そう考えられた。
しかし、ハルトの言葉を聞いたクリスの反応はハルトの思いも寄らぬものだった。
「なんだ、それならカイが死んだという可能性は低いですわね」
それまでの余裕のない態度から一変、クリスはホッと心底安堵した様子でそう言った。
アドルと別れ、なおも憤慨し続けるハルトは突然声をかけられた。
有無を言わせぬ物言いに、振り向くまでもなく相手が誰であるかハルトにはわかってしまう。
「・・・クリスさん」
ハルトは振り返り、呆然と呟いた。
ハルトの視線の先にはクリス・ラミアスーー サンクレアの聖騎士の一人が立っていた。その後ろには彼女のパートナーである聖女アルマが控え、ぺこりとハルトに頭を下げる。
聖騎士は稀に女性が選ばれることもあり、クリスがそれである。
綺麗な金色の長髪、絶世の美人と言われる顔、艶のある声質。戦に明け暮れ、泥臭いイメージの定着しているはずの聖騎士の中では異色な存在であった。
美の化身とさえ言われる美貌を持つ彼女だが、正騎士に選ばれるだけあって剣の腕は確かである。
「聖騎士カイが亡くなったというのは・・・本当ですの?」
見る者を切り裂くかのような鋭い瞳でハルトを睨みつけながら、クリスは問う。
「本当だよ」
ハルトはその目線に怯むことなく答えた。瞬間ーー
ガシッ
「っ!!」
ハルトは胸倉をクリスに掴まれた。
尋常ならざる力で捕まれ、ハルトは思わず顔を顰める。
「何ですって!?何があったのか全部話しなさいな!!」
強烈な殺気をぶつけられ、ハルトも流石にこれには怯みながらもクリスの手を弾く。
カイの反逆の際はクリスは遠征に出かけており、サンクレアを留守にしていた。サンクレアで起きたことはろくに知らされておらず、帰ってきたのはつい先ほどのことだった。
ーーーーー
「・・・何ということですの・・・そんなことが・・・」
ハルトの話を聞き、クリスはショックに打ちひしがれ、体をよろけさせる。
「信じられないかもしれないけど、それが全てだよ。僕にはどうすることもできなかった」
己の無力を思い出し、ハルトは拳を握り締める。
カイを説得することも、彼の暴挙を止めることも、アドルの大怪我を防ぐことも、何も出来なかった。
自嘲気味になるハルトに追い打ちをかけるように、クリスはまたも彼の胸倉を掴んだ。
「それで!?カイは!カイの遺体はどこにありまして??」
目を見開きながらのド迫力で迫られ、ハルトは自嘲に浸る暇もなく質問に追われることになる。
「遺体はっ、見つかっていない!だがっ、あの爆発では長くは生きられないっ!」
胸倉を掴まれた状態のまま揺さぶられ、どうにか返答をするとハルトは突然解放され、思わずよろけて壁に背をつけてしまう。ハルトは咳き込みながらアドルの言葉を思い出していた。
『私と同じように爆炎を受けたカイは長くは生きられまい。ポーションで自分を治すくらいなら、無駄だとわかっていてもイリスの治療を優先するはずだ。二人して死に、亡骸は森の野獣が食ってしまっているだろう』
アドルはそう予想していた。
実際あれ以降、騎士団総出でカイ達を捜索したが、目撃証言の一つすら手に入れることはなかった。恐らくカイ達は死に、遺体は跡形もなく野獣に食われた・・・そう考えられた。
しかし、ハルトの言葉を聞いたクリスの反応はハルトの思いも寄らぬものだった。
「なんだ、それならカイが死んだという可能性は低いですわね」
それまでの余裕のない態度から一変、クリスはホッと心底安堵した様子でそう言った。
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