聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

残り物には福はない

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「納得行きません!どうしてあんな…」


反逆者カイとイリスについて大まかな方向性が決まったからとアドルとハルトは会議室を退室するように言われ部屋を出た。
廊下を歩きながら、ハルトは憤慨してアドルに食ってかかる。


「やめておけ。誰が聞いているかわからんぞ」


涼しい顔をしながらそう言ってのけるアドルに、ハルトは更に憤った。


「聞かれる?それが構うものですか!アドル騎士団長が何故ああも言われなければならないのです!本来封魔殿の警備受け持ちは神殿側でしょう!?どうして宝物が強奪されたことが騎士団の責任になるんですか!どうして騎士団長はそこを言い返さなかったのですか!!」



封魔殿はその名の通り神殿であり、そこの警備は騎士団ではなく神殿に属した神殿騎士と呼ばれる者達であった。
カイに宝物の強奪されたことの責任は神殿側にあるのである。
ちなみに先ほど会議の場にいたのは、アドル達を除いた全員が神殿の人間だ。



「一度にいろいろ聞いてくるな。・・・いいか?これこそが我々の、サンクレアの力関係なのだ。騎士団の上位に神殿がある。神殿には逆らえん。それだけだ」


アドルが苦笑いを浮かべながら言った。
ハルトは「でも・・・」と言いかけたが、次の言葉が浮かんでこないのかそのまま押し黙った。


「プレスケンなどは私を目の敵にしているのが露骨だな。法王様の労いのお言葉もそこそこに、そのあとは私を糾弾する流れに変えていった。だがまぁ、結局はお咎め無しであるなら良いではないか」


「こんなバカなこと・・・」


「馬鹿なことであろうと何だろうと、これがこの国のルールだ。我々秩序を守るべき騎士団がそれを蔑ろにしてどうなる?ハルトは将来がある身なのだから、つまらんことで騒いで立場を悪くするようなことだけはするなよ」


なおも不満そうにするハルトを置き去りにするように、アドルは颯爽と歩いていく。
アドルは少しだけハルトが煩わしいと思った。ハルトに言われなくても理不尽であることくらいはわかっている。

だが、言っていてもどうにもならないのだ。騎士団が神殿側に意見をすることなど許されない。
ハルトが口うるさく不満を垂れ流すことに何の意味もない。理不尽さに対する怒りを思い起こすだけなのだ。


「やつならば、こんなこと説明しなくてもわかっただろうに・・・」


アドルは思わずそう独りごちる。
自身の弟子であり、元聖騎士にして反逆者となったカイ。世の不条理というものを理解し、それに迎合することが出来ていた。反逆者にさえならなければ、きっとそれなりの地位に立っていたことだろう。


「残ったのがよりによってろくでもないものばかりか・・・」


聖騎士としてカイが残っていてくれればどれだけ良かったか。
カイ亡き今、アドルの中では残った聖騎士はろくなものではないと思っていた。それはハルトのことを含めてのことである。
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