聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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プロローグ

生還と封印

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「おや・・・目を覚ましましたか」


カイが目を覚ましたのは、見たことのない建物の中のベッドの上であった。


「・・・ここは」


自分は確か封魔殿から離れた森の中にいたはずだ。どうしてこんなところにいる?カイは思考を巡らすが、何もわからない。


「・・・!」


頭をかこうとして、自分の手が元の綺麗な状態に戻っていることに気付く。全身が火傷でただれていたはずだったが、体中のどこを触っても火傷痕は影も形も無かった。


「フフッ、ご安心ください。貴方の傷は完全に癒えていますよぉ」


そんなカイの様子を見ていたひとりの男が、まとわりつくような気味の悪い声で語り掛けてくる。
部屋の片隅にある本が山積みになった机の前にいたその男は、ろくに散髪もしていないようなボサボサの髪に伸びきった髭といった姿で、見た目だけでは年齢もわからない。だが声質で何となく自分より少し年上くらいかとカイは思った。
真っ白な白衣とサンダル姿・・・どう見ても不審人物だが、そもそも今置かれている状況が異質なので、カイはそちらは特に気にすることもない。
だから、今自分が一番最初に気にしないといけないことを思い出すのが遅れてしまった。


「そうだ・・・イリスは!?」


自分の手に中にあったはずのイリス。彼女の姿がどこにもないことに、カイは漸く気付いて焦り出す。
ベッドから素早く飛び起きて、イリスを探そうと部屋を飛び出そうとするカイを男が呼び止めた。


「お待ちなさい。貴方が大事そうに抱きしめていた女性は、今は別室でお休み中ですよぉ。ご案内しますからまずは落ち着いてくださいなぁ」


ヘラヘラと笑いながら男がカイのことを宥めると、熱くなっていたはずのカイの頭は毒気を抜かれたように一瞬にして落ち着きを取り戻した。


「休み・・・中?イリスは・・・イリスは死んではいないのか!?」


カイは男の両肩を掴むと、鬼気迫る勢いで詰め寄った。男は動じる様子もなく、淡々と答える。


「死んではいませんねぇ。ただ、けどねぇ」


「・・・は?」


どういうことだ、と聞こうとしたカイにかぶせるように男が言った。


「まずは直接見た方が良いでしょう。その方が早い、ね?」


ニヤリと笑いながらそう言う男の言葉に、カイは一瞬間を開けてから頷いた。


「うんうん、素直で物分かりの良い人は私は好きですよぉ」


男は満足そうに頷くと、カイを隣の部屋へと案内した。
部屋には厳重そうな鍵がかかっており、よほど大事なものが中にあるのだというのがわかる。


「これは・・・!」


カイはそこで予想だにしないものを見て唖然とする。
男に連れられていった部屋には、イリスを閉じ込めた大きな水晶が中央を陣取っていたのであった。

「まさか」

それはカイが少し前に襲撃した封魔殿の封印と同じ水晶だった。


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