9 / 203
プロローグ
生還と封印
しおりを挟む
「おや・・・目を覚ましましたか」
カイが目を覚ましたのは、見たことのない建物の中のベッドの上であった。
「・・・ここは」
自分は確か封魔殿から離れた森の中にいたはずだ。どうしてこんなところにいる?カイは思考を巡らすが、何もわからない。
「・・・!」
頭をかこうとして、自分の手が元の綺麗な状態に戻っていることに気付く。全身が火傷でただれていたはずだったが、体中のどこを触っても火傷痕は影も形も無かった。
「フフッ、ご安心ください。貴方の傷は完全に癒えていますよぉ」
そんなカイの様子を見ていたひとりの男が、まとわりつくような気味の悪い声で語り掛けてくる。
部屋の片隅にある本が山積みになった机の前にいたその男は、ろくに散髪もしていないようなボサボサの髪に伸びきった髭といった姿で、見た目だけでは年齢もわからない。だが声質で何となく自分より少し年上くらいかとカイは思った。
真っ白な白衣とサンダル姿・・・どう見ても不審人物だが、そもそも今置かれている状況が異質なので、カイはそちらは特に気にすることもない。
だから、今自分が一番最初に気にしないといけないことを思い出すのが遅れてしまった。
「そうだ・・・イリスは!?」
自分の手に中にあったはずのイリス。彼女の姿がどこにもないことに、カイは漸く気付いて焦り出す。
ベッドから素早く飛び起きて、イリスを探そうと部屋を飛び出そうとするカイを男が呼び止めた。
「お待ちなさい。貴方が大事そうに抱きしめていた女性は、今は別室でお休み中ですよぉ。ご案内しますからまずは落ち着いてくださいなぁ」
ヘラヘラと笑いながら男がカイのことを宥めると、熱くなっていたはずのカイの頭は毒気を抜かれたように一瞬にして落ち着きを取り戻した。
「休み・・・中?イリスは・・・イリスは死んではいないのか!?」
カイは男の両肩を掴むと、鬼気迫る勢いで詰め寄った。男は動じる様子もなく、淡々と答える。
「死んではいませんねぇ。ただ、生きているというのもまた違いますけどねぇ」
「・・・は?」
どういうことだ、と聞こうとしたカイにかぶせるように男が言った。
「まずは直接見た方が良いでしょう。その方が早い、ね?」
ニヤリと笑いながらそう言う男の言葉に、カイは一瞬間を開けてから頷いた。
「うんうん、素直で物分かりの良い人は私は好きですよぉ」
男は満足そうに頷くと、カイを隣の部屋へと案内した。
部屋には厳重そうな鍵がかかっており、よほど大事なものが中にあるのだというのがわかる。
「これは・・・!」
カイはそこで予想だにしないものを見て唖然とする。
男に連れられていった部屋には、イリスを閉じ込めた大きな水晶が中央を陣取っていたのであった。
「まさか」
それはカイが少し前に襲撃した封魔殿の封印と同じ水晶だった。
カイが目を覚ましたのは、見たことのない建物の中のベッドの上であった。
「・・・ここは」
自分は確か封魔殿から離れた森の中にいたはずだ。どうしてこんなところにいる?カイは思考を巡らすが、何もわからない。
「・・・!」
頭をかこうとして、自分の手が元の綺麗な状態に戻っていることに気付く。全身が火傷でただれていたはずだったが、体中のどこを触っても火傷痕は影も形も無かった。
「フフッ、ご安心ください。貴方の傷は完全に癒えていますよぉ」
そんなカイの様子を見ていたひとりの男が、まとわりつくような気味の悪い声で語り掛けてくる。
部屋の片隅にある本が山積みになった机の前にいたその男は、ろくに散髪もしていないようなボサボサの髪に伸びきった髭といった姿で、見た目だけでは年齢もわからない。だが声質で何となく自分より少し年上くらいかとカイは思った。
真っ白な白衣とサンダル姿・・・どう見ても不審人物だが、そもそも今置かれている状況が異質なので、カイはそちらは特に気にすることもない。
だから、今自分が一番最初に気にしないといけないことを思い出すのが遅れてしまった。
「そうだ・・・イリスは!?」
自分の手に中にあったはずのイリス。彼女の姿がどこにもないことに、カイは漸く気付いて焦り出す。
ベッドから素早く飛び起きて、イリスを探そうと部屋を飛び出そうとするカイを男が呼び止めた。
「お待ちなさい。貴方が大事そうに抱きしめていた女性は、今は別室でお休み中ですよぉ。ご案内しますからまずは落ち着いてくださいなぁ」
ヘラヘラと笑いながら男がカイのことを宥めると、熱くなっていたはずのカイの頭は毒気を抜かれたように一瞬にして落ち着きを取り戻した。
「休み・・・中?イリスは・・・イリスは死んではいないのか!?」
カイは男の両肩を掴むと、鬼気迫る勢いで詰め寄った。男は動じる様子もなく、淡々と答える。
「死んではいませんねぇ。ただ、生きているというのもまた違いますけどねぇ」
「・・・は?」
どういうことだ、と聞こうとしたカイにかぶせるように男が言った。
「まずは直接見た方が良いでしょう。その方が早い、ね?」
ニヤリと笑いながらそう言う男の言葉に、カイは一瞬間を開けてから頷いた。
「うんうん、素直で物分かりの良い人は私は好きですよぉ」
男は満足そうに頷くと、カイを隣の部屋へと案内した。
部屋には厳重そうな鍵がかかっており、よほど大事なものが中にあるのだというのがわかる。
「これは・・・!」
カイはそこで予想だにしないものを見て唖然とする。
男に連れられていった部屋には、イリスを閉じ込めた大きな水晶が中央を陣取っていたのであった。
「まさか」
それはカイが少し前に襲撃した封魔殿の封印と同じ水晶だった。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。


のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる